名字名前
初日/05:09:59
大字粗戸/眞魚川岸辺



























おっそいなぁ牧野さん…早く来ないと、折角全滅させた屍人がみーんな起きちゃうぢゃん。
ゴルゴ戦の時ちょっと危なかったケド、ちゃぁーんと倒したのに…ヘタレ牧野な上にKY牧野かこの野郎。
まぁ村が昔とごった煮になってるからわからないでもないんだけど…
だってベール見つけてやったのにさぁ…あ、手拭いはしないよ!あの不思議な牧野のさんの行動を見たいからさ!
一斗缶はどうしたのかって?いらないよそんなの家の中から普通に行ったに決まってるじゃないか。


「ふぅ…っ!?」


『!』


このヘタレな呻き声は!


『あ…、』


「あな、たは…、?」


『私は名字名前って言います。
村の者じゃありません…村に観光に来ていたらこんな状況になっちゃって…
…その、あの何だか大丈夫ですか?顔色すごく、悪いですよ…?』


大丈夫です…と私に向き直る牧野さん、おぉふ…本当に羽生蛇ヘアーにそぐわぬ宮田先生フェイス…
いや、双子なんだから仕方がないか…いやでも羽生蛇ヘアーはないだろう、だって見事なまでにセンター分けだぜ?


「私は牧野慶…この村の求導師をやっています。
私もいつの間にかこんな状況になっていて…取り敢えず村の人を探そうと思っているんですが…」


村の人じゃなくて八尾だろうが八尾コンめ。


『あの、じゃあ私も途中までご一緒してもいいですか?』


「勿論です。
その、一人だと心細かったですし…」


おま、ちょ…本当に27歳なのか?27歳にもなって心細かった?ちょ、おま吹くぞ、俺吹くぞ!
まぁ吹かないけどね…兎に角一緒に行動できる事になった私と牧野さんは階段を上り岸辺から退散する。
当然屍人はみんなおねんねしてるので視界ジャックしていた牧野さんは驚いていた、そりゃあ全部真っ暗だったらビクるよね。


「どうしてみんな倒れて…」


『さ、さぁー…睡眠時間だったり?』


道の真ん中で?とかいうツッコミは無しね。
うん、だって牧野さんも納得してるんだし…いいじゃん、うんいいよ。
だって…私がみーんな倒しちゃった!てへっ☆なんて言えないもん!!無理!!!


「そういえば名前さんは何故猟銃を背負ってるんですか?
それにバールまで持って…まさかそんな若い年から猟師でも…」


『えぇっとぉ…まぁそんなトコです?』


屍人専門でやってます☆……洒落にならねぇええぇぇええ!!
冷や汗をだらだら流す私を気遣う牧野さんを後目に食堂の裏に向かう。


「あ……」


出た!出たよ牧野さんの奇行その1!何故に冷凍庫に電気入れようとしたのかわからん。
まぁ私はその間にアーカイブを見ておく、本当に昭和53年だなぁ…生まれてねぇよ俺。


『水、出ますね。
真っ赤なのが気になるけど…』


「……名前さんは不思議な人ですね。
まるで、この状況に慣れて…いや、知り尽くしているみたいに」


『……え、』


ほんの一瞬、まるで宮田先生かのような雰囲気が醸し出されたような…?気のせい?
蛇口から目を離して牧野さんに振り返ればいつの間にか私の目の前に…おぉふ…これはやばい、かも?


『まきのさ
「これ、どこで見つけたんですか?」


『あの、それは偶然拾って…』


「偶然私に出会って、偶然私の知っている人の物を拾って。
しかも偶然奴らは眠っていた…いや、一回殺されていた…しかも貴方の手には猟銃やバール。
本当、よく偶然が重なりますね?」


こ、わい…宮田先生並みにこぇえ…え何こんなに牧野さんって洞察力あったっけ?無かったよね?
しかもしかも!屍人を奴ら呼ばわりしてんよ!あぁもうヘタレで八尾コンでヘタレな牧野さんカムバック!!
ちょ、待ってよ何でこんなに双子ばっかり雰囲気悪くなんだよ!!話が(いや話なんて無いんだども)ちっがぁーう!!!





双子アンチテーゼ。
(牧野さん、笑顔なのが怖いです)










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