(カシムとアリババ・現代転生パロディ)
九月の海は静かだった。海水浴に来る家族はどこにもおらず、カップルがちらほらと夕日を見つめていた。おれは砂浜にしゃがみ込んで、海に向かって砂を投げた。
「アリババ」
後ろを振り返るとカシムがいかにもガラの悪そうな歩き方でこっちに近づいて来ている。ドレッドヘアをやめたらいいのに、とは思うが口にはしない。
「海なんか見て楽しいかよ」
「楽しいよ、ってまたおまえ煙草!」
「細かいことはいいんだよバカアリババ」
隣に座って、ふうっ、と煙を吹き掛けられる。噎せるおれを笑うカシム。まだ未成年のくせに。
「あのさー」
「あ?」
「おれ、カシムのこと超すき」
「知ってら」
「知ってんの?」
「うるせえ」
「たぶん、カシムの思ってる百倍ぐらいはすき」
「そーかよ」
「うん」
「へえ」
「ね、カシム」
「なんだよ」
「しあわせだね」
「おー」
眩しい眩しい、だからおれはまぶたを下ろした。夕日に透けて赤く染まった視界が恐ろしい。目を開けたら、カシムはもうそこにいないんじゃないかって思う。だから、手を繋いだ。指を絡めた。どこにもいかないで。今度こそ、おれが守るから。
「おまえ、また余計なこと考えてるだろ」
「わかんの?」
「黙れ」
乱暴に唇を重ねる。カシムの体温。少しだけ塩の味がした。
(おまえは、しらなくていいの)
塩分濃度
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現代転生ぽいのかな、転生はあまり好きではないのですが、なんとなくカシアリはしたくなる…しあわせにしてあげたいんです
ちなみに補足:現代ババはマギババの記憶はありますが現代カシムはまったくないです。ただ現代ババがなんか隠してんのはわかってる。カシムが転校してきて完全に思い出してないババと邂逅するカシアリがよみたい