(男鹿と古市)



それからのはなし。


ヒルダさんたちのお陰でなんなく元の定位置に戻ったおれは、いつもどおりの生活に満足していた。ただひとつ変わったのは、もう男鹿とまえみたいなことはしなくなったってこと。

「古市、そこの漫画」

「おまえこのまえこの巻読んでたぞ」

「あー……そうだったか?」

「ん、次の巻」

「おう、サンキュ」

「アダッ」

「なんだ、ベル坊も読むか?」

まあ、お互いに好きだと言い合ったにしろ関係は大して変わらない。どうせいっつも二人一緒にいたし、うん、変わらない。ささやかな幸せでおれは充分だ。

「なーにがささやかな幸せだ」

「なっ、男鹿ぁ?!勝手にひとの心読むなバカっ」

「古市くん、おれはとても溜まっているんだが」

「ばっ……ばか言うな!ベル坊いるだろーが!」

「いやべつにヒルダに頼んでドアの前で待っててもらえればギリギリ。」

「そーいう問題じゃねーっ!」

「あー、俺の記憶が戻った日はまだベル坊とのリンク切れてたからなー、思いっきりアンアン啼く古市を……」

「わーわーわーっ!ベル坊聞いてるからっ!」

「ダ?」

「いーんだよどーせ喋らねえし」

「おまっ……この鬼ーっ!」

まあ、当たり前のようにベル坊がくっついているので、堂々とイチャイチャとかは出来ないが、それは大した問題ではない。男鹿にとっては違うようだが。

「なー、ヤラせろって。この青少年の性欲をどうしろと」

「しっ、知らねーよバカオーガ!つーかてめえ童貞のくせにがっつきすぎなんだよ!こないだは獣みたいに襲って来やがって、よすぎて頭おかしくなるかとおもっ……」

しまった、と思ったときには遅かった。

にやーと嫌な笑みを浮かべた男鹿が近づいて来る。必死で防御するが手を搦め捕られた。足で蹴ってみるもきかない。あああああ。

「だっ、だからうしろにベル坊乗せてんだろーが!」

「んなもん知るか」

「知れーっ!」

完全にデーモンの顔になってる。まずい、貴之、貞操の危機……!いやまあすでに若干いまさらって感じだけども!

「っ……お、がっ……!」

「やべ、ムラッときた」

「黙れっしねこのくそやろー!」

しかしいくら言っても引く様子はない。だからと言ってベル坊の前でいただかれちゃうわけにはいかない。まじそれはない。

仕方ない。

「っ……あーっあんなところに超でかくて超ワルくて超カッコイイ幻のスーパーミラクルウルトラカブトムシがあああああ!」

「ダッ?!」

「なにっ?」

バカ、男鹿まで向こう向いてどうすんだよ!ぐいと髪の毛を掴んでこっちを向かせ、唇を押し付けた。がちんと当たったから、キスっていうよりぶつけた感じになった。まあ、こんなエロ魔神にはこれくらいが丁度いいだろ。よくやった古市、さすが智将。

「ダッ?ダッ?ダッ?」

「あー悪いベル坊、おれの見間違いだったみたいだ……」

「ダーブ……」

ベル坊には悪いことしたが、これで男鹿の気も多少は収まるだろ。ベル坊に謝りながら、男鹿の顔を見る、と。

「……えっ」

「……見んな、アホ」

真っ赤になって唇を押さえていた。

きゅん。

えっ何だ今の音。ていうかなんか、男鹿、めちゃくちゃかわいい。

「っ……」

「だァもう!見んなつってんだろアホ!」

「おが、」

「あ?!」


「今夜あたり、いかがっすか……」


「……、……?!」

いかん、これ、一生忘れられない記憶だ。











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