(男鹿と古市とベル坊)



「……あの、男鹿さん」

「なんだね古市くん」

「暑いんですけど」

「知らねーよ」

「真夏なんですけど」

「関係ねえ」

「ベル坊見てるんですけど」

「だからなんだ」

「アダッ」

「……もーやだ……」

夏、真夏、八月。汗も滴るこんなある日、なんだっておれは男鹿にぎゅうぎゅうと抱きしめられてないといけないんだ。

正確に言うと、後ろから羽交い締めにされてるっつーか、抱き着かれてる状態だ。男鹿の両腕は首、両足は腹に巻き付きがっちり締まって、身動きが取れない。しかもお互いに半袖短パンだからじっとり汗の滲んだ肌が密着して、気持ち悪い。なにより、暑い。

「ちょ、男鹿っ、まじあちーっつーの!離れろボケッ」

「うるせー、黙って抱かれてろ」

「その言い方誤解されるからやめてくんない?!」

「アダーッ」

「わっ、ベル坊まで!暑いってだから!」

おれに男鹿を盗られたと思ったのか、ベル坊がよじ登っておれと男鹿の間に挟まってくる。いや、もう、暑いって!まじで!盗らねーから安心しろベル坊!

「ベル坊も古市にくっつきたいんだな」

「ダッ」

「ダッじゃねーよ!おれ悲惨だろーが!つか暑くねーのかおまえらはー!」

「暑くねーよなベル坊」

「ダッ」

「ダッじゃねー!」

「叫ぶから暑いんじゃね?」

「てめーが叫ばせてんだろーが!」

おれたちが喧嘩を始めると案の定ベル坊は嬉しそうにきゃっきゃと笑って、いや別にベル坊のために喧嘩してるわけじゃねーし。男鹿がむかつくだけだし!バカオーガバーカバーカ!三回も言ってやったぜ!心の中でだけどな!

「あ、」「アダ、」

「……なんだよ、親子揃ってアホみたいな声出しやがって」


辛うじて首を動かして振り向くと、男鹿とベル坊が同じようにおれを見ていた。なんだよ、何も出ませんよ。

「ん、なんか、しあわせだなーと」

「……はっ?!」

「うるせーよアホ市」

聞き返す間もなく男鹿はぐりぐりと頭を押し付けて来る。なに、なに突然言っちゃってんの。バカじゃねーのバーカバーカバカオーガバカ!五回も言ってやった!心の中でだけど!

「あーもー……なんで言った本人が照れてんだよ……」

「照れてねえ」

「じゃあ顔あげろよ」

「うるせーアホ」

「……ばかおーが」

「ダッ」

「バカなパパで大変だな、ベル坊」

「黙れママ」

「ママじゃねー!」

二人して顔真っ赤にして、おれたちほんと、ばっかじゃねーの、ほんと。

「……あー、あっちい」

触れてるところはもう熱くなんかないのに心臓だけが全速力で駆け出していて、内側から沸騰しそうでめまいがした。





体温が心地よいならそ



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タイトルは Largo 様より。
恋っていうより愛っていう感じを目指して玉砕。でもこのふたりは恋人より夫婦って言葉が似合いますよね。うふふふ



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