(男鹿と古市)



夢を見ました。幼なじみの夢でした。乱暴で無神経でバカで糞野郎な幼なじみの夢でした。それでもおれはその夢から醒めたくないと願っていました。ずっと眠りの世界にいたいと思っていました。

男鹿というおとこは大変バカなおとこです。そしておれは愚かしいおとこです。なぜなら男鹿はおれが好きだったからです。なぜならおれは男鹿が好きだったからです。おれたちは互いに好き合っていて、それでも何も言いませんでした。好きだというのが怖かったのです。両想いだとわかっていても、その二文字を口にして音に変えることが恐ろしかったのです。この感情が形になることに怯えたのです。だから男鹿はバカで、おれは愚かなのです。

「す、き」

そう言えたら。そう言えれば。出来ないくせにそう願うのです。この声になるのは自分次第だというのに、おれは。


ふと意識が戻る。目が醒めた。醒めたくないと思うほど夢ははやく終わるものだ。

「……ん、あれ、男鹿?」

「……よう」

寝ていたソファの足元に男鹿が立っていた。ひとの寝顔を見るなんてタチ悪いぞ。そう悪態をつくと男鹿は微妙な顔をしておれの髪の毛をぐしゃりと掻き回した。

「をっ、なにすんだよバカ!」

「あーもう、おまえもバカ。おまえがバカ。しね」

「はあ?!」

言い掛かりだ。バカはおまえの方のくせに。最後にばしんと頭を叩いて男鹿は出て行った。なんだよ、おれ叩かれ損じゃねえの。

「……あほらし」

それすら愛しいと思うおれは、いつだってあいつばかりなのだ。





awake or asleep



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お題は 水葬 様からいただきました。
くっついてないおがふる。あれ、最初はもっとべた甘のはずが…あれれ。寝ても醒めてもお互いのことしか考えてないげろあまおがふるのはずが、なんか妙な感じに…まあ寝ても醒めてもお互いのこと、っていうのには変わりないけども!ハハ!
たぶんこの男鹿目線書きます。



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