(佐藤と鈴木)



身体が焼かれたような気がした。熱い、あつい、火がもうここまで回ってきている。この前振り返ったときはまだ遠くの方にいたのに。

「顔色悪いよ?」

「……気のせいだ」

「そんなはずない」

焼ける、焼き尽くされる。喉の奥が焼けて、指先から灰になる。声が出ない。動くことができない。俺は目を伏せて、瞼を閉じた。

(焼ける、また)

いつからか、焔が俺を追ってくるようになった。赤い焔がいつだって俺の後ろにあったのだ。逃げても逃げても、それはずっと追いかけてくる。片時も離れようとせず。そして少しずつ迫ってきて、今ではもうすぐそばまで。

「鈴木、」

「さわんな」

その焔がなんなのか、俺にはわかっていた。俺の身体を侵食する熱が一体なんなのか。それはもう、いやというほどにわかっていた。それでもやめられないことがある。追わずにはいられない。たとえイカロスの様に羽が焼かれようとも。

振り返ることは恐ろしい。立ち止まることも。焔がどこまで俺の世界を侵食しているのかを確認することができない。こわい。怖いんだ。俺は臆病で、狡猾であるから。

「おれはおまえのそばにいるよ」

「うるせえ」

「うるさいのがおれの担当だもの」

「……おまえ、ほんとアホだな」

「アホでいいよ、おれはずっとこのままでいいんだ」

「……うん」

げほり、ひとつ、咳をする。喉がびりりと痛んだ。焔が熱い。


(愛おしい、なんて感情は忘れてしまった)(いまあるのは、苦しみと痛みとそれから、)(ああ、そんなことよりもこの腕の温もりは甘受してしまっていいのだろうか)(焔が熱くて泣きそうなんだ)





燃ゆる



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何かよくわからないはなし
平←鈴←佐は通常運転です



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