(男鹿と古市・中学時代)



「……どうしたんだよそれ」

「転んだ」

「うそつけっ!」

その日登校してきた男鹿は右腕を真っ白な三角巾で吊っていた。足に包帯を巻いて、頬に大きなガーゼを付けて。

「ほんとだって。つうか学校で俺に話し掛けてくんなって言ったろ」

わかってるんだ。どうせまた俺のために喧嘩したんだろ。俺の髪色をとやかく言う上級生相手に喧嘩をふっかけたんだろ。全部わかってるっつうの。それで隠してるつもりかよ。何年一緒にいるんだよ。

学校で話し掛けてくんなっていうのも、いろんな不良に目を付けられてる男鹿とつるんでたら俺まで目を付けられるからだろ。おまえのすること全部全部、俺のためなんだろ。わかってるよ。わかってるから余計、苦しいんだ。

「っ、お、おい、何泣いてんだよ」

悔しい悔しい悔しい。弱い自分が悔しい。なんでこんなにも弱いんだろう。俺は喧嘩なんかしたことないし、多分しても負けるし、そもそも軟弱だし、男鹿を守れるわけもない。何もできないんだ、俺は。

せめて。男鹿に迷惑をかけない存在でいたかった。こんな髪色でなければ少しはマシだったろうか。それとも、俺が男鹿と関わりを切ってしまえば?

「っ……むりだって……」

「む、むり?なにが無理なんだ?」

「ばっかやろ……ふ……っ」

男鹿のいない世界で生きられるはずもない俺は、男鹿にすがるしかないのだ。ごめんな、男鹿。でももうすこしだけこうさせていてください。せめて、この暗雲の思春期を過ぎるまでは。





暗雲



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中学時代捏造。強い不良古市もいいけど弱さにもがく古市もいいよねっていう。基本的に当サイトは元ヤン古市推奨なんですが、こういうのもいいなーと。
古市はこのころから自分の恋心に気づいてて、でも言えなくて、中学の間だけは男鹿のそばにいても許してほしい、って思ってる。男鹿は何も考えてないんじゃないかなあ…男鹿さんってよくわからない、案外大人なのかもしれないし、ほんとに馬鹿なのかも。男鹿も実は古市と同じこと考えてるとかわいいなあ
なんかこの辺の話長編で書きたいな



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