（男鹿と古市）



可愛いデコレーションメールも使わない、淡白で素っ気ないメール。電話も社交辞令は無しで用件だけ。それでいい。それがいい。

「……おまえ、女の子にこんなメール送ってんのか……」

「うっせーよ！あーもう見んな！」

しげしげとディスプレイを見つめる男鹿を蹴飛ばしてメールを削除する。ああ、とか名残惜しそうな声がするが無視である。ちくしょう。まあ元はといえばメールの送り先を間違ったおれが悪いんだけどさ。

「よりによって男鹿に見られるとか……最悪だ」

「おまえ俺には適当なメールしか返さねーくせに、女子には相当マメだな」

「うるせー！悪いか！」

「誰も悪いとか言ってねーしアホ」

「ああああほって言うなバカオガ！」

「いくらモテねーからってメールで点数上げようだなんて古市くんもなかなかワルですなあ」

「黙れ。それか死ね」

そりゃ、モテたいんですよ。だって高校生だぜ、おれたち。モテたくないやつがどこにいんの。女の子はマメにご機嫌取りしなきゃだめなんだっつの、まあやりすぎも駄目だけど。

「おまえどっからそういう情報手に入れてくんの？」

「バカで愚かな男鹿くんには教えません」

「愚かじゃねえ！」

「バカも否定しろよ」

まあそういうところがバカなんだけどなー、と再び携帯をいじる。さっきのメールちゃんと送り直さないと。もうすぐデート誘えそうなんだよなー。

「……おい古市」

「あー？」

「なんで俺にはその、でこめ、を使わねーんだ」

「はあ？」

「電話も一瞬だろ」

「なに、嫉妬してんのかよ？」

「そうだよ」

「あーはいはい嫉妬ね、嫉妬……え、」

顔を上げる。男鹿はおれを見ている。おれも男鹿を見ている。当たり前だ。こりゃまた失礼しやした。……じゃなくて。

「俺以外のやつに俺より時間も手間もかけるなんて許さん」

「っ、え、あ、」

だっておまえ今までそんなこと一言も言わなかったじゃん。メールも電話も内容がわかればいいと思って、てかそれおれ的には特別扱いなんだけど、いやでもそんな、まさかおまえがそんなこと、


「？　古市？」

「っ……絞め殺す！」

「え」

おれはこいつのこういうところが大嫌いです。





先に言っとけ！



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わりと男鹿さんのほうがそういうとこ気にしてたらかわいいな。古市は無頓着。