告白された。つまらないよと言った。女生徒は泣いた。
「さすが佐藤さん」
隣の隣のクラスの彼女(うーん、曖昧)が泣きながら走って行くのをぼんやり見ていると、うしろからいつものすこし刺々しさを含んだ声が刺さった。振り返ると案の定、だ。
「あれ、鈴木、掃除は?」
「つーか追い掛けろよ、かわいそうに」
「えーなんでー?別に良くない?」
「……おまえ絶対いつか女に刺されるな」
鈴木の手を見ると大きなごみ袋をふたつ抱えていた。持とうか、と聞くとふたつとも渡してきた。さすが鈴木様。
「さっきの子、おまえのこと好きだったんだろ」
「あー、みたいだね」
「みたいだね、って、おまえな、勇気出して告白してきた子につまらない、って、そりゃねえよ」
「だって本当のことだもん」
ゴミ捨て場までの近道は案外狭い。鈴木と肩が当たって睨まれた。おれは苦笑しながら道を譲る。
「告白することはつまらないよ。好きです、って言われたところで、こっちはああそうですかって感じじゃない。それなのに気を使うのはこっちばかり。傷つけないように断るなんか面倒だし無意味だよ。好きならただ好きでいればいい。告白をして、勝手に傷ついて、傷つけられたと嘆いて、こっちにばかりを責める。それって不毛だし、理不尽じゃない?くだらないよ、告白、なんか」
想いを伝えたところで相手と通じ合えるとは限らない。それをわからないまま告白するのは愚かだ。つまらない行為だ。そして自分の願いが叶わなければ、それをすべて相手になすりつける。それこそ相手を恨むほど。そう、その程度。その程度で嫌いになれるのだ。
そんな軽い気持ちで、よくもまあ告白なんかする気になったね。
「……俺は、」
ゴミ捨て場のある広場に出る。鈴木の横に立つと、彼はぽつりと言葉を落とした。視線はまっすぐ、前を見たまま。
「俺は、たとえ告白することがつまらないことだとしても、その勇気がすごいと思う」
あ、そう、か。
「……うん、そうだね」
おまえはそれができないものね。
「……ほら、はやくゴミ捨ててこい」
「ちぇー、手伝ってあげてるのに」
「うっせ」
鈴木はもういつも通りだった。すこし、失言だったかもしれない。
(うーん、まあいっか)
おれがそう思うようになったのは鈴木の責任なんだからね。
不毛
(おまえに告白したところで、ねえ)
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うちの♭は佐藤→鈴木→平介が通常運転です。詳しくはブログの方に長々とあります(笑)
佐藤も鈴木もお互いあきらめてる感じ。割り切ってんだけど、佐藤のまえじゃ割り切りきれない鈴木。あーこのふたりまじすき。