「先輩は先輩が好きなのですか」
「……はっ?」
いきなり問われたところで、というか俺はそもそもその後輩とは面識はあれど会話を交わしたことはほぼ皆無であり。彼女はどことなく平介に似た目をまっすぐにこちらに向けていた。ここは平介とは似てないな。
「ちょっと待て、えーと、長谷さん、だっけか」
「はい」
「それは、誰先輩が誰先輩を好きなんだ?固有名詞じゃねえとわかんねえよ」
「……それは、すみません配慮が足らず。鈴木先輩は平介先輩のことを好いておられるのですか、と聞いています」
まあ、聞き返さずともわかっていたことではあるが。なぜなら平介はさっきまでここにいたからだ。教室にクッキー忘れたとかなんかで俺を玄関に放置し、それを見ていたらしい長谷という彼女が声をかけてきた。面倒臭い、と思ったのはなかったことにする。
「なんでそんなこと聞く?」
彼女の目を見返すが、少しも揺らぐことはなかった。彼女も平介を好きだとかなんとか言ってなかったっけか?それなのによくもまあ。
「先輩が、わたしと同じ目をしていたように見えて」
「……はあ」
平介に恋してる自分と同じ目をしているように見えたから、俺が平介に恋してるのかと思ったってか。ほうほう。それは随分と自己中心的な考えだな。
「悪いけど、俺は平介のこと好きじゃないよ」
「……そうですか」
「なんか納得してない?」
「いえ。先輩がそう言うならそうなんですね。失礼なことを言いました、すみません」
「あ、いや」
「それでは、失礼します」
「平介はいいのか?」
「ええ、先輩はわたしのことを覚えていませんから」
それじゃ、と言って帰っていく彼女に好感を持てた。たぶん俺が嘘をついたことに気づいていただろうけど、それでも聞き出さないその姿勢が。
(…………いや、嘘はついてない、嘘は)
ロッカーにもたれ掛かる。そうだ嘘なんかついていない。俺はあいつなんか好きじゃないのだ。
(あいしてるんだよ、くそ)
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長谷さんはなぜかさん付けしてしまう。長谷さんと鈴木ってそんながっつり接触なかった…よね?うん、たぶん
長谷さんは長谷さんで鈴木を気にしてると思う。鈴木は気にしていない。なぜなら自分は報われないのだと自覚してるから。
ここに佐藤が絡むとものすごくアレな感じになるんだけどね^ω^むほっ