潜水はもう嫌だと、船長にペンギンとシャチが申し立てて浮上した。夏島の気候らしいこの海域は、酷く晴れている。
結局蒸し焼き。いや、今は焼かれてるのか。


「あっ、ちぃ…」


中も外も信じられないくらいの暑さ。ブーツを脱いで、裾を捲って上半身もさらけ出した。
男所帯だから裸でも気にしない。


(バンダナも外してしまえ)


ぱさ。

…やっぱ、暑い。











大量の濡れたつなぎはかなり重さがあって、筋トレしてるクルーでも結構な力仕事になる。
甲板まで持ってくるのに、息が上がるのは必須。例に漏れず今回もそうだった。


「はぁ、はぁ。…あ、」


甲板の端に、真っ白な奴が横たわっていた。


(うわ、珍し。無防備すぎんだろ)


真っ赤な入れ墨を晒して、トレードマークも取っ払った、この船のドSが寝ていた。俺にも気付いていないみたいだ。

洗濯したばかりの桶を扉の横に置く。とりあえず、紐を張った。適当につなぎを干していく。

…ちらっ。


「まじで起きねェ…あいつ大丈夫か?」


物音とかにかなり敏感なバンダナが、此処まで起きないなんて、相当暑さにやられてる。


(これは、普段の仕返しのチャンス…!)


と微かに企んでみたが、後が怖いと思い出して止めた。考えながら黙々と干していても、一向に起きる気配は無い。
全部終わって、バンダナに近寄ってみる。


(わー汗だく。暑がりだったりして)


浮上してくれと頼んだのは俺とペンギンだけど、真っ先に甲板に出たのはバンダナだった。近くで見たバンダナは案の定無防備。興味本位で頬をつついた。


「ん、…ぅ……」
「…」
「…」
「起きない」


身を捩っただけ。図っているとは思い難い。こいつは素で寝てる。

これは、いける。


「これならどうだ」


もちもち。

両の頬を摘んでみた。案外柔らかい。思えばバンダナの肌なんて滅多に触れない。結構もちもちしてみたが、


「…」
「…」
「起きねー…!」


無防備にも程がある。必死に笑いを堪えて、ちらりとバンダナの顔を見やった。


「わ!!?」


どさっ




おかしいな、なんで空見上げてんだ。


「かわいい事してくれんじゃん」


何故だろうバンダナに敷かれている。あぁ引っ張られて倒されてたんだ。


「起きてた!?」
「つつかれて起きたかな」
「気付かなかった…っ」
「だろうな、バレないようにしたし」


ぐいと引き上げられ、壁に押し付けられた。明らかにバンダナの方が背が高いから、爪先立ちになってしまう。

やばい、空気だ。


「きっ、今日は暑いなバンダナ!こんな時に、外で、何して、たんだ?」
「中より外の方が涼しいからさ。でも水分は補給出来ないんだよ」
「はぁ、水分…」


何が言いたいんだこいつ。なら中に行って水飲めばいいじゃん。え、だめなの。

間近で見るバンダナは、何だろ珍しいのもあるけどやけに男らしい。ちょっとどきっとする。

…つかなんで顔近いの。


「っあーぁ。喉からから。シャチの分けろ」
「あ?何言っ」


がぶり。







(…遅い)


まだ洗濯残ってるのに。まさか放り出したんじゃないだろうな。
とりあえず今洗い終えたつなぎを甲板に運んだ。


(干してあるのに居ないって事は…あいつ本当に、)



がたん、がたっ。


「?」


左の方か、何か音がした。微かではあるが、見に行くに越したことはない。桶を置き覗き込んだ。


「誰かいるの、か、…」


「っはぁ、何だペンギンか」


呆然。
開いた口が塞がらない。なんだこれ。


「っ、ぁ…うあ、ペンギン…!」


壁に背を預けて地べたに座り込んだシャチに、上素っ裸のバンダナが覆い被さっている。しかも互いに若干息が上がっていた。

…暑さの所為じゃないらしい。


「お前ら仕事放り出して何いちゃついてる…!」
「いちゃついてる?ばーか、キスしただけだし。もう一回いっとく?」
「だ、わ!やめっ、むぅ」
「仕事しろ!!」





fin.



相互記念文として、もちおさんよりいただきました!
むむむバンさんのもちもちほっぺ…! わ、私も触りたい。←
一回つついたら即行、ダッシュで逃げますけどね。(笑)
水分補給でいちゃこらするなんて流石ですバンさん! ちょっとその場所変わってくださ…げふんげふん。すみません調子に乗りました、もう黙ります。
素敵なバンシャチ、改めて本当にありがとうございました…! 大切にいたしますね。(^^)
そして改めて相互リンク、本当にありがとうございました…!
ソウ
120302

 
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