「どんな子?」 「何ですか?急に」 「アカデミー時代に好きになった女の子」 「これ」と差し出してきたのを見て、ようやく理解をした。ナマエが見せたのは、先日取材を受けた雑誌の記事。いくつか質問された中に、僕の恋愛歴について聞かれた部分があったのを、思い出した。 「その記事に書いてある通りですよ」 「それじゃ判らないから聞いているの」 「どうしてそんなに気にするんですか?」 「それは、……」 視線を斜め下にして、黙ったままのナマエ。何を言いたいのかは、ある程度判っていた。彼女は良い意味で単純で、判り易い人だから。それがナマエの個性でもあり、僕が彼女を好きな理由の一つでもある。 「男の人ってね、初恋の相手のことをいつまでも忘れないんだって。だから、その…。例えばね、」 「僕は、あなたが好きですよ。これから先ずっと」 僕の言葉に驚いたのか、今度は目を丸くしてこちらを見ている。白い肌な所為か、赤くなるとすぐ判る。ナマエが持っていた雑誌を奪い、自分の記事が載っているページ見た。「返してよ!」と手を必死に伸ばすから、つい彼女が届かない位置まで持ち上げる。嫌がらせをしている訳じゃなくて、単に彼女が愛しくて仕方の無い、一種の愛情表現として。 「確かに、あの時はその人が好きでした。でも、今はそれ以上に大切に思う人が目の前にいるんです。僕の気持は絶対に変わりませんよ」 「ッ!?、ズルいよ、そのセリフ」 「何とでも言って構いませんよ。事実ですから」 そう言って隙だらけのナマエに不意打ちでキスをするのも、僕なりの一種の愛情表現だ。 (今度は、そちらの番ですよ) (何のこと?) (初恋。いつ、誰に?) (話によっては僕は嫉妬するんで覚悟して下さいね) |