短編 | ナノ


判ってました。忘れてもなかったし。ちゃんと、一ヶ月前からどうしようか考えてました。
でも、プレゼント全然決まらなくて…。だって探り入れても全然教える気無かったでしょ!?ホント質悪い…あ、いえ。何でもありません。本当に、聞かなかったことにして下さい。はぁ…

「で、結論は?」
「…プレゼント用意出来ませんでした」

沈黙。いや、沈黙は止めて下さい、幸村様。あと、その真っ黒オーラ全開の笑顔も。
ベンチに座る精市の隣には大量のラッピングされたプレゼント。朝からずっと(いつ怒られるかと)様子を見てたけど、さすがの一言だった。朝練から始まったプレゼントラッシュは、放課後の今も勢いが殆ど変わらない。

みんな、何を渡したのかなぁ。形も大きさもそれぞれ違う。そう言えば、レギュラー陣でまとめてプレゼントするみたいなこと言ってたけど、結局何にしたんだろ。

「本当に信じられないよね。これだけプレゼントを渡してくれる人がいる中。肝心の彼女はプレゼントを用意してないなんて」
「本当に申し訳ないです」

けど、私だって精市に訊いて答えてくれなかったからって、すぐ諦めた訳じゃないんだよ。だからコソッと柳に訊いたら「そんなこと、自分で訊いたらどうだ?」だって。いや、言われなくても判ってるし。それが出来ないからアンタに訊いたんだよ。

って言うか、それ判ってて言ったろ。とまぁ、さすがにそこまでは言わなかったけど、見事に失敗。もうお手上げなんですって。

「だって、精市、欲しいの何か訊いても教えてくれないし」
「名前は訊き方がなってないんだよ。ダイレクトに訊き過ぎ」
「どうせ判ってることなんだから、今更隠す必要ないじゃん」

それに、去年は気づかれない様に注意しながら訊いたら「それって、俺の誕生日プレゼントサーチ?」って精市が言うし。こっちからしてみれば、空気読めって話しですよ(勿論、そんなこと本人には口が裂けても言わない)。

「別に訊かなくても良いんじゃない?」
「折角なんだから、ちゃんと精市が喜んでくれるものをあげたいの」

ベタかもしれないけど、欲しかったものをプレゼントされれば、嬉しいかと思った。精市は彼女がいようと人気が高い人だから、こうしてプレゼントを貰う。だから、少しでも差をつけるなら、精市が一番欲しいと思うものを用意するのが一番だと思った。

「―――それで、去年は画集だったってこと?」
「精市欲しいって言ってたじゃない」

まぁ、精市が絵が好きなのは(ファンの間では)有名だったから、正直どうしようかと思ったけど。精市が欲しいと思うものを用意したいから、去年のプレゼントは画集。

「そう言う意味で言うなら、あれはそこまで嬉しくなかったよ?」
「えぇ!?」
「名前は彼女として、他と差をつけたいんだろ?それならもっと良い方法があるじゃない」

恐ろしいほど綺麗な笑顔を浮かべて、精市が立ち上がった。立ったままだった私は、精市の顔を追う為視線を下から上へ。

「俺は別にね、名前からのプレゼントだったら、よっぽどのものでない限り何でも構わないんだ」
「(よっぽどってどんなのを想像してるんだろ)」
「だから、―――そうだね。こういうのでも構わない」

さりげなく私の顎に添えられた手。相変わらずの綺麗な笑顔を浮かべたまま、私の顔へと近づいてくる。

ちょっと、待って!ここって、テニスコートで、すぐそこでみんな練習してるんだけど!―――なんてことに気づいて、精市を止める前に、唇に感触。

「んッ…ぅんん、ぁ……ッはぁ、…ちょ、舌、入れ…!」
「最低でも、これなら俺は構わないよ」

最低でって、ベロチューが最低なら、それ以上は何ですか、幸村様。そんなこと訊いた日には、どうなるか判ったものじゃないから、黙ったまま。
頭の奥が微かに痺れて、顔が熱い。凄い恥ずかしい。

今すぐ逃げ出したい…!って思っても、どうせ無駄だし。もうこうなったら、半分くらい自棄で、私から精市に抱きついた。いきなり自分の胸の中に飛び込んだ私を、精市は驚きながらもちゃんと抱き留めてくれた。

「誕生日、おめでと。あと、…生まれてきてくれて、有り難う」

思いのほか小さい声だったけど、精市には届いていたみたいで、精市は何も言わないで私の頭を撫でてくれた。


誰でもない


その後、真っ赤な顔で真田がやってきたのはまた別の話。



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