04 ドアをノックすると、返事が聞こえた。私はドアノブをゆっくりと開けて、部屋を覗く。私と同じ髪色をした人の後姿が、見えた。 「お兄様、お茶が入りましたので、ご一緒にいかがですか?」 「あぁ、頂こう」 その返事に私は、嬉しくなってティーセットを用意した。紅茶の隣には、さり気無く置いたスコーン。 ケイネスお兄様は私の用意した紅茶を一口飲み、用意したスコーンを見た。心臓が高鳴るのを感じた。スコーンが、あと少しの所でお兄様の口へ運ばれると思った瞬間、それは止まった。代わりに感じるお兄様の視線。 「ナマエ。どうかしたのか?」 「!!、いえ、なにも…」 「それよりも、そのスコーンを食べて下さい」そう、素直に言えれば。きっとこんな風に煩わしい気持ちにならなくてすんだのに、。そうは思っても、それは出来ないので、私はお兄様がその手に持ったスコーンが口に運ばれるまで、何も言わない。 「……、」 「(食べた!)あ、あの、お兄様!」 本当はもう少し待つつもりだった。だって、今話しかけたところで、お兄様の口の中にはスコーンがあって、きっと話し辛いに違いない。でも、それが判っていても私は待つことが出来ずに、話しかけてしまった。勿論、お兄様は驚いた様子で私を見ていらっしゃる。 「あの、あのッ!」 「……、どうしたんだナマエ」 「スコーン、あの、スコーン!」 「落ち着け」 お兄様に嗜まれるまで、自分がどんなか気づくことも出来ない程、私は慌てていた。その所為で、我に返った瞬間、恥ずかしさで、急に顔が熱くなるのを感じた。「すみません」小さく謝れば、お兄様は呆れた様子で溜息を吐かれた(本当に恥ずかしい…!)。 「で、スコーンがどうしたと言うのだ?」 「あの、…お味はいかがですか?」 「味?…悪くないが、」 「本当ですか!?」 お兄様の言葉が終わり切る前に返事を返す私に、お兄様はまた驚いた様子だった。自分がはしたないとを判っていても、お兄様が言って下さった言葉が嬉しくて、じっとしていられなかった。 「実は、そのスコーンは私が作りました」 「ナマエが?」 「はい。料理はあまりしたことが無かったので、お口に合うか心配でした」 そう言うと、お兄様がまじまじとスコーンを見た。出来れば、あまり見ないで欲しい。だって、形はともかく、オーブンで少し焼き過ぎた気がしたので、焦げているかもしれない(勿論、そんなものをお兄様に食べさせる訳にはいかないので、確認はしたけど) 「そうか、ナマエが作ったのか…」 「…お兄様?」 ![]() 「そう言えば、お兄様」 「なんだ?」 「サーヴァントはお食事はなさらないのですか?」 「必要ない。あれは魔力さえ供給していれば死にはせん」 気のせいか、お兄様が少しだけ不機嫌な表情をされた。「何故それを訊く?」お兄様が続け様に私に言った。 「もし良ければ、ランサーにも差し上げようかと。作り過ぎてしまいましたし」 「その必要はない。作り過ぎてしまった分も、私が食べよう」 「え?」 お兄様は元々そんな大食漢な人ではない。むしろ、一般に比べれば少ない方なのに。今だって、普段お茶の時に食べる量を充分超えていると言うのに、これ以上食べてしまわれては身体に悪い。そう思い、私が告げれば、お兄様は「心配無い」と言う。 「自分の身体は自分で判る。とにかく、ランサーにやる必要はない(誰がやるものか)」 「でも、…それに、ランサーにはお兄様のことでお礼もしたいので」 お兄様がランサーのことを、あまり良く思われていないことは判っていた。それでも、これくらいはと思っていたのに。普段のお兄様からは想像がつかない程で、結局私がいくら理由を言っても、お兄様から良いとは言って貰えなかった。 「(仕方ないから、後でこっそり渡すことにしましょ)」 「(ランサーめ、ナマエに何かすれば、ただではおかん…!)」 |