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先日掏りに合いそうになった。“合いそうになった”だけであって、実際は合っていない。僕が被害に合いそうになったのを、たまたま通りかかった一人の女の子に助けてもらった。少し癖のあるブルネットの髪に、見た目僕と同じくらいの年齢。 「はぁー…」 「どうしたんだい?折紙君」 「スカイハイさん、」 いつの間にか傍にいたスカイハイさんに溜息が聞こえたらしい。話すのも恥ずかしいし、何より自分の中でまともに整理も出来ていないことだから、適当にはぐらかそうとしたら、周りにも聞こえていたのか徐々に人が集まりだしていた(いつの間に!?)。 「どうした?折紙がどうかしたのか?」 「先輩、何かあったんですか?」 「なになに?折紙に何かあったの?」 「あ、…いえ、その…、」 気づけば皆トレーニングを止めて集まっていて、その中心には僕。もう、何て誤魔化して良いかも判らなくて、諦めて僕は先日出会ったブルネットの少女について話すことにした。内容はだいぶ割愛はしたけど…(さすがに掏りに合いそうになったのを助けてもらったとは言えない…!)。 「なるほどねぇ…。で、アンタはどうしたい訳?」 「どう、って?」 「だから、その女の子のことよ!」 「(なんか、ファイヤーエンブレムさん怖い…!)、えっと、その、出来ればまた会いたいなって…」 「へぇ…」 何だろう…。女子三人(?)組の様子がおかしい。急にコソコソ話しているし、他の人達も何か納得したような様子で「うんうん」って言ってばっかりだし、どうしたって言うんだろう。(あぁ、そんなことより早くこの話し終わらないかな…)(恥ずかし過ぎて嫌だ) 「折紙、それってその子に恋したんじゃない?」 「………えぇ!?」 ☆★☆★ 「ただいま」 「あ、おかえりー」 今日も一日の勤めを終え、帰宅するとまず最初に私を出迎えてくれたのは、愛犬のジョンだった。その後廊下を走る音と共にやって来たのは妹のクロエ。 「今日、早いね。ごめんなさい、まだ夕飯の準備出来てないの。先、シャワーする?」 「いや、トレーニングルームで汗は流して来たから後で構わないよ。夕飯もそんなに時間はかからないだろう?」 「そうねぇ…じゃあ、すぐに準備するから待ってて」 「おいで、ジョン。ご飯用意するよー」クロエがそう告げれば、ジョンは尻尾を振って彼女の後をついて行った。 十数分後、夕飯の準備が出来あがり、私は妹のクロエと夕飯を共にした。いつもながらクロエの作る料理は美味しい!そして美味しい! 「兄さん、どうかした?」 「ん?何がだ?」 「何か、悩んでいるって顔している」 クロエには昔から隠し事が全く出来ないことは判っていたが、こうも簡単に判るとは本当に驚く(彼女曰く私は凄く顔に出易いらしい)。私は昼間あった折紙君の事について話した(もちろん、折紙君の名前は伏せてだ!)。 「――それで、彼はその女性にもう一度会いたいそうなんだが、その女性の名前も連絡先も聞いていないらしい」 「なるほどねぇ。だったら、試しにその女の人と会った場所に行ってみたら?」 「会った場所にかい?」 「もし、その人が地元の人ならまた通るかもしれないでしょ?下手にあちこち捜すくらいなら、そこが一番可能性高いんじゃないかな?」 「なるほど。さすが、クロエ!ありがとう!そして、ありがとう!明日、彼に伝えてみるよ!」 「うん!その人、また会えると良いね」 よし!これで、仲間の力に少しはなれただろうか? クロエは満面の笑みで「私も応援するよ!」と答える姿に、自然と彼女のブルネットの頭を撫でた。 |