リミットオーバー | ナノ


彼女にお礼を言おうと思ってから一週間が経った。
ファーストと知り合い、会わなくなってから一週間が経った。

出会ったきっかけがいけなかったのか、その後の行為がいけなかったのか、ファーストを忘れることは出来なかった。部屋に置かれたメモを見れば、もう会うことが無いと語っているようだった。本来そうなのだろう。しかし、今もこうしてファーストのことを覚えている。
この一週間、毎日例の彼女に会う為に向かっていた筈の公園で私が待っているのは本当に彼女か、それとも―――

「…はぁ、」
「スカイハイ、また溜息ついているよ」
「どうしたの?先週は絶好調だったのに」
「もしかして、例の彼女にフられたとか!?」
「い、いや…」

いつの間にいたのだろうか。ファイヤーエンブレム君、ブルーローズ君、ドラゴンキッド君の三人が私の前にいた。公園で彼女に出会い、恋をした時もそうだった。どうもこの三人に囲まれると威圧感が凄い。
結局押し負けてしまい、公園の彼女には会えなかったことを話した。そして今だに会えていないことも。彼女達に話したのは、あくまで公園の女性についてだけ。ファーストと会ったことは話さなかった。出会って、その後の話をするのも恥ずかしい(何より未成年の前でそんな話は絶対出来ない、出来ない絶対)。
それに、何故だかファーストとの出会いを私だけの大切なものにしたいと思ったからだ。

「そっか。残念だったね、スカイハイ」
「また次があるから諦めちゃいけないわ!」

皆私のことを心配してくれているようで、私は彼女たちに感謝の言葉を述べた。そして私は気を紛らわすつもりで、トレーニングルームでいつもの様に過ごしていると、突然本社へ来るようにと連絡がかかった。







「それでは、失礼します」

CEO室の扉が閉まる。呼び出された割には大した事ではなかった。
まだ時間はある。出動要請も出ていない様だしとりあえず、トレーニングルームへ戻るとしよう。エレベーターでエントランスまで降りると、入り口付近にある集まりがあるのが見えた。

「では、今後ともよろしくお願いします」
「えぇ、こちらこそ。御社にご協力頂き本当に感謝しております。デザインに関しましては、―――」

立ち聞きするつもりなどなかった。ただ、聞こえてきた声がファーストに似ている気がして立ち止まって振り返った。数人の社員に囲まれてた中心、周りに比べて少し低い身長。顔は見えない。でもあの声は間違いない。

「では、失礼します」

集団から抜けて姿が完全に見えた。
胸が高鳴ったのが判った。ファーストがエントランスから出て行くのが見えて、私は駆け出した。人の出入りが多いエントランスで、何人かにぶつかりそうになるのを避けながら、走る。

エントランスを出て、ファーストを探した。どうしてこんなにも必死なのだろう。判らない。ただ、もう一度ファーストに会って、声が聞きたい。例え、彼女が、ファーストがそれを望んでいなかったとしても。

「ファースト!」

振り返った彼女は、あの時とは違いきっちりとしたスーツ姿だった。初めて会った時の服装も素敵だった。でも今の姿も魅力的だった。
ファーストは私に声を掛けられて驚いたまま、その場から動かない。


望むモノがそこにあって

(どうして…?)

(会いたかった!そして、会いたかった…!)




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