リミットオーバー | ナノ


「はぁ、」
「ちょっと、折角の日に溜息ってどういうこと?」
「判ってるわよ。でも、一番の親友がカラ元気で奮闘している姿を見ると」
「訳の判らないことは言わないの」

ウェディング姿のミラは本当に綺麗だった。いよいよ挙式。支度は殆ど終わっている。
暫くして挙式が始まった。ミラは直前まで、自分の式よりも私のことばかりを話していた。心配してくれるのは嬉しいけど、今日くらいは自分を一番に考えて欲しい。

挙式は順調に進み、次はブーケブルズ。事前に用意したリボンを出席者に持ってもらい、後は引くだけ。
ところが、合図をする前にミラがそれを止めてしまった。こんなの予定にない。

「ごめんなさい!本当はこういう方法じゃないってことは充分判っているの!でも、私は自分の大親友が落ち込んだまま何も出来ないのは嫌」

何を謝ったのかと思っていると、ミラはリボンの繋がったブーケを持ち、そのまま私の許へ。何が起きるのか判らないまま見つめていれば、そのブーケを私に差し出してきた。

「え?な、…えぇ!?」

突然のことで判らなかった。勿論、出席者も。ミラの突然の行動に驚いているし、おまけに大勢の人の注目を浴びて恥ずかしい。「冗談はやめて」小さな声でミラに伝えるけど、彼女は真剣な表情でブーケを差しだし、無理やり私に持たせた。ユーチャスリリーとバラで作ったキャスケードブーケは、ミラのドレス同様私が選んだもの。

「お守りだと思ってこれ持って行きなさい」
「ミラ、何言って…」
「まぁ、最終ゴールまでは先かもしれないけど」

徐々にミラの言いたいことが判ってきた。けど、そんなこと今すぐ行けと言われて行ける筈もない。それでもミラはお構いなしに「早く」と私を急かす。
それに、行ったところでどうしろと言うのだろう。私はどうすることも出来ない。

「いい加減、自分の気持ちをはっきりさせなさい!」

ミラとは高校からの付き合いで、喧嘩もしたことがあった。でも、その時よりも真剣で声を張り上げた姿だった。散々「判ったから」とか、「冗談は良いよ」とか、「その話はまた今度」って受け流していた私の言葉を一瞬で止めさせた。

「本当に私をお祝いしてくれるなら、私に素敵な報告の一つでも持って来なさいって言ってるの!」
「ミラ…」
「私は結婚してもファーストの親友。親友の幸せを願うのが本当の親友」

自分が主役の舞台だと言うのに、最後の最後まで親友の心配をするミラは、本当にお人好しで、最高の親友だと思う。いつだって私を後押ししてくれて、私がそれを受けても動かないでいてたとしも、彼女だけは諦めないで押し続けていてくれた。こんなに強く後ろから長いこと押されているのだから、私も好い加減前に動かないといけないのかもしれない。

「有り難う」
「それ言うの逆ね、普通」
「ホント」

気持ちにはずっと気づいていた。手も差し出されていた。後は私がその手を受け取るだけ。
まだ式の真っ最中で、ブライズメイドの仕事は残っている。でも、今のタイミングを逃したらきっといけない気がした。ミラもそれを判っているようで「ブライズメイドはたくさんいる。ここは良いから」と促した。

「ミラ!結婚おめでとう!」

ブーケを受け取って私は式場を駆け出した。式場を出てすぐにタクシーを止める。運転手に行き先を告げるとタクシーは走り出した。暫くして、携帯を取り出してある番号に電話をかける。数コール後、相手の声が聞こえた。

「もしもし?突然ごめんなさい、これから会えないかしら?大事な話があるの。場所は―――」


それしか考えていない事に気付いた

(もう迷わない)



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