リミットオーバー | ナノ


「はぁー」
「ちょっと、人の横で溜息は好い加減止めて」
「ごめん、でも…はぁ」
「まだ、引きずってるの?」
「違う。元彼のことはもう良いの。それじゃなくて、…」
「隠し事は無し」

企画は順調に進んでいた。おかげでこうして、休日もちゃんと休みが取れている。
隣で、今日私の何回目かの溜息を聞いたのは親友のミラ。高校からの付き合いで、お互いに相手の良いところも悪いところも理解している。ちなみに、来月に結婚する。

あの日の夜、キースとは結局振り払う形で別れた。私がポセイドンラインへ行くこともなかったから再会することもしなかった。連絡先は教えてなかったから連絡も来ない。これで良い。なのに、何だろう…凄くモヤモヤした感じ。
私は悪くない。全然、これっぽっちも…と言ったら違うかもしれないけど。

「…行きずりで、ある人と知り合ったんだけど、この間その人に偶然会って。私はその日限りで終わるつもりだったの!なのに、むこうは私のこと…」
「なに、微妙なの?男」
「いいえ、凄くハンサム」
「なら!」
「ただ、…ただ、彼凄く良い人なの。だから、悪いことしてるみたいで」

あの日のアレも、たぶん傷心してたから。私にどうこうって言うのではない。判りきっていることなのに、何でこんなに落ち込んでいるんだろう…。
やっぱり、彼の望み通り…ああ!ダメダメ!また悪い考えが!ホント最低。結局私もまだ、引きずっているのかしら。はぁ…あ、また溜息が出ちゃった。

「はぁ、私まで溜息出ちゃったじゃない」
「そこまで責任持てない」
「もう…私、このまま結婚して良いのか何だか心配だわ」
「駄目よ、ミラは来月結婚する。で、私はダッサいドレス着てブライズメイドをやるの」

自分がこんな状態だから、せめて親友に位は幸せになって欲しい。でないと、今の私は何を信じて頑張れば良いのか判らない。







「……どう言うこと?」
「ここへ行けば、君に会えると思って」

もし、タイムマシーンがあるなら私は十五分前の自分に会いに行きたい。そしてこう言いうの、「今日は素直に帰りなさい。バーには絶対行っては駄目」って。でも、現実はそんな風には出来ていない。あぁ、こんなことなら彼にこの店を教えなければ良かった。

「この間はすまない、本当にすまない」
「だから、それは」
「違う!違うんだ!」

突然、声を張り上げるから驚いた。出した本人も驚いたようで「すまない」って謝られた。
本当はすぐに帰るつもりだった。このままここにいて、彼と話したところで良いことなんて絶対起きない。むしろ、またあの後味の悪い結果になるに決まっている。なのに、またも私の身体は動かないし、彼の会話を止めさせようともしない。それは、キースがあまりにも真剣に私を見つめるからか、それとも―――

「あの日、君をがっかりさせてしまった」
「がっかりも何も、言ったでしょ?ああ言う気持ちになる時はあるわ」
「そうじゃないんだ。私は…」


「まだ、私の中でもはっきりとはしていない。しかし、あの日君がここを出て行って確かに感じたんだ」


「他の女性では駄目なんだ。ファースト、君が良いんだ、と」


I hope for that
それは希望

(どうしてこんなに心臓が鳴るの?)(その理由を私はまだ知らない)




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