私の恋人はヒーローで、日夜この街に住む人たちを助けると言うとっても凄い人。 ヒーローの彼は凄く人気で、子供からお年寄りまで、幅広い人から愛されている。ヒーローの彼は皆から必要とされている。 そんな恋人、キース・グッドマンはヒーローの時以外も、凄くカッコいい。恋人だからそう言うとかじゃなくて、優しく、ハンサム。 「名前。何か飲み物を買ってくるよ」 「ありがとう。じゃあ、コーヒー」 「ミルクと砂糖少しだね」 「うん」 付き合って、既に結構経つ私の好みを彼は把握してくれている。よく、意識的にそれを覚えて、女の人へのアピールとして利用する男の人がいるけど、キースは違う。彼はそう言うのが良い意味で、出来ない人だから。でも、だからこそ、彼のそんな優しさが素敵だと感じる。 ヒーローなんて特殊な職業なのもあるけど、彼は元々優しい。だから、困っている人は基本放っておかないし、頼まれればそれが悪事に繋がるものでない限り、引き受ける。 「あの、すみません」 ほら、また。 「ここへ行くにはどうしたら良いですか?」 「あぁ、それなら―――」 地図か、それとも住所の書かれた紙か。私とキースの分のコーヒーを持って、キースはその女の人に道を教えている。ご丁寧に通る道にある目印を一個一個教えて、それはそれは判りやすい説明をしているのが聞こえる。 「有り難うございます」 「いや、大したことではないよ。気をつけて」 あ、今キース笑った。 ―――ほら、やっぱり。あの女の人顔赤くしている。キースからしてみれば、一連の流れの中で出た、ごく自然の笑顔。 さっきも言った通り、キースはカッコいい。 女の人と言うのは、優しくて、ハンサムな男の人は素敵に見える。キースは、まさにその部類にぴったり当てはまる人。 「あ、あのッ」 「ん?どうしたんだい?」 「…、もし良かったら、案内してもらえませんか?少し不安で…」 きた。 私と、キース達との距離はそんなに遠くなくて、会話は聞き取れてた。 道を尋ねて来た女の人は、顔を赤くして、恥ずかしそうに視線を下げて、もじもじとキースへ訊ねていた。 「すまない、人を待たせていてね。さっき言った通りに行けば大丈夫だ、大丈夫」 「…あ、」 「……」 キースが視線を私の方へ向ければ、女の人も同じように私の方を見て、ばっちり目があった。その瞬間のばつの悪そうな顔。対する私は、怒っているのか、呆れているのか、全く判らない無表情で見ていた。 「キースはさ、」 「ん?」 あの後、女の人は恥ずかしそうにその場を立ち去って行った。キースから貰ったコーヒーを飲みながら呟けば、キースは私の方を見つめる。 「優しいのは、良いと思うよ。でも、少し自覚を持って欲しい」 「自覚?」 「さっきのもだけど。この前、二人組の女の人に写真撮って下さいって頼まれて、あっさり引き受けて」 そこまでは良い。私も、頼まれれば多分引き受けるだろうし。問題はその後、気付いたら二人組の女の人一人ずつと、ツーショット写真を撮っていた時は呆れた。 キースはただ写真を撮っているだけのつもりかもしれないけど、写真を撮った後の女の人達のはしゃぎっぷりは、普通の写真撮影とは違うのが一目で判った。 「名前」 「別に、良いんだよ。だた、…」 話していく内に、これは失敗だったと気付いた。思ったことを溜め込むのは良くない、なんて言うけど、これは言わない方が良かった。だって、これって――― 「名前。誰かに親切したり、優しくすることはあっても、愛するのは、名前だけだ」 「なッ!?」 普段は天然で、見当違いな発言ばっかするキースが、その時ばかりは私の心を完全に読み取って、私をドキリとさせる言葉を言った。顔が一気に熱くなった。 「……、」 「名前?」 ただし、本人が私がこうなることを判って言ったかどうかは、別である。 確かなことはたったひとつ、君が好き君が、好き |