はっきり言って、自分のサーヴァントがあまり好きじゃない。 戦いの面では、問題はない。ステータスもそこまで悪い訳じゃないし、騎士団にいただけあって戦い慣れもしている。 問題は、それ以外の時。 「名前、荷物は俺が持とう」 「いいえ。大して重くないし。それに、これは後で魔術に使うものもいくつか入っているの。手荒に扱われては困るから結構よ」 このディルムッドと言うサーヴァントは必要以上に私を女性扱いする。言葉だけ聞けば、素敵な響きかもしれないけど、私はこれでも魔術師。況して、マスターよ?敬われることはあっても、女性扱いはいらない。 「そんなことより、その顔を少しは隠したら?さっきから鬱陶しい」 所用で出かければ、ディルムッドはその魔貌の所為で一般人から注目の的。私よりも遥かに綺麗な女性達が突然駆けつけてナンパまでしてくる始末。腹立たしいことこの上ない。 「…申し訳ない」 「本当よ。大体、戦闘でもないのだから、霊体化していれば良いじゃない」 「それでは、名前の荷物を持つことが出来ない!」 「だから、必要ないって言ってるでしょ!?それとも、見せつけたいの?自分が大層モテますとでも言いたい訳?」 イライラする。この男は、私のサーヴァントなのよ?なのに何なのこれは?(ほら、またナンパされてる!) 「その様なつもりはない。俺は名前のことを第一に考えている」 「あっそ」 漸く、人通りの多い道から抜けることが出来た。全く、毎度のことながら本当に困る。ディルムッドは相変わらず、私に「誤解だ」とか「信じてくれ」とか言っている。私も相変わらずで、ディルムッドの言葉に適当に相槌を打っていた。 「しかし、この魔貌も困ったものだな」 「(こいつ、やっぱり嫌味か…)全くね。困ったどころの騒ぎじゃない」 「確かに、一番魅了したい相手に対し効果が無いのなら意味がない」 「…は?」 何を言っているのかと思って、ディルムッドの方を向いたら、思いのほか顔がすぐ近くにあって、不覚にも驚いた。 「…いや、真に慕う相手には魔貌などではなく、俺本来の姿を見せて恋わせるべきか」 「なに、言って、」 「聡明なマスター殿ならば、俺が言いたいことの意味くらいお判りだろう。俺は、」 「うるさい!うるさい!うるさい!」 あれ以上言われたら、私の方が歩が悪くなる気がして、つい大きな声を出してしまった。勿論、目的は果たせていて、それまで話していたディルムッドは黙ったけど、今度は黙ったまま私を見つめている。 なによ、今度は何なのよ! あぁ!もう本当にイライラする!どうして私がこんな思いしなきゃいけないのよ。馬鹿サーヴァント! 「…名前」 「な、なによ…」 「随分顔が赤いが具合でも悪いのか?」 「〜ッ!!」 言われた途端、それまで全く感じていなかった顔の熱を感じた。 絶対確信犯で言ったディルムッドになんて言って良いか判らなくて、相変わらず顔は熱いし、アイツは仕舞にはニヤニヤし始めるし――― 「こ、これは夕陽の所為!間違っても言葉にドキドキしたとかそう言うのじゃないんだから!」 この馬鹿サーヴァント!阿呆!黒子!アンタなんて知らないッ! だから、いちいちニヤニヤするな! 好きより嫌い (嫌いよ!嫌い、嫌い、だーいっ嫌い!) |