底抜けマンと海


「ロイは海好き?」
「海?好きだな。すっげー広くて、どこまでも行けそうでワクワクする」
「私は苦手だな。溺れるから」
「アンタ…泳げないのか!?」
「いや、それは知らないけど、海といえば溺れちゃうでしょ。怖いじゃん」
「それは知らない、ってなんで他人事なんだよ。そしてなんで後ろ向きな発言から始まるんだよ…! 海って言ったらこの、解・放・感! …だろっ?」
「…そう? 海って言ったら暗〜くて、深〜くて、冷た〜くて、溺れちゃえば息が出来な〜くて、ほぅら、怖いでしょう?」
「今は真っ昼間で明るくて、広〜くて、水面がキラキラ〜で、陽気が温か〜くて、ほーら、海ってこんなにいいトコじゃん」
「潮風が…冷たいです…」
「なんでわかんないかな〜」
「…海は、泳いだこと、ないなぁ」
「そっか。泳ぐ?」
「無理。寒いし、やだ。」
「そりゃそうだよな。俺だってもう冬に差し掛かるこの時期に海に入るのは嫌だよ。まあ、足付けるくらいならやりたいなって思うけど」
「それはいいかも」
「だろ? あっでも、ここは防波堤だから無理だな。砂浜は…ずっと向こうだ。フィオ、見えるか?」
「見えない…あ、…やっぱ見えないな。私からは見えない」
「ここらなら釣りとかやると楽しいのかな」
「…道具は買い揃えませんからね? ロイが釣りやっても全然釣れなさそうだし」
「いいや!俺なら一本釣りで超大物釣り上げられるって!」
「だってまずこんな海辺で大物なんていないでしょ…沖まで出ないとダメじゃない?」
「…俺だって釣りくらい出来るし…」
「…今度やってみる?釣り」
「ちょっとやってみたい」
「釣具屋さんに初心者釣りセットとかあるんじゃないかな」
「そうだな。今度見てみようか」
「うん」
「……、浮き輪がさ、」
「ん?」
「浮き輪。すっぽり、こうやって、がっしりと、」
「なに? ちょっと、くすぐったい」
「浮き輪があれば、海で溺れることはないよ」
「浮き輪、ねぇ…」
「なんだよ…文句あるのか?」
「あったかい…」
「…だろ?」
「私は結構重いですけど、それでも溺れないですか? 浮き輪さん」
「最近になって太ってきたもんな」
「う、うるさい浮き輪ですね…」
「まあ大丈夫でしょ。溺れる時は一緒さ」
「ああ駄目だぁーこの浮き輪底抜けだー」
「底抜け?」
「底抜けにポジティブだー」
「へへっ、そうだろ?」
「浮き輪の役目果たしてませんよロイさん… 溺れてしまう…」
「…?」
「ロイ…好きです、かっこいいです。ホントだいすきです…」
「……、なんでそんな、小声…」
「…寒いから…」
「まだ寒いの」
「…ウソです。ロイがすっぽり浮き輪になってくれてるから、もうほとんど、寒くない」
「寒くない、か」
「ロイ……、っぎゃ!!」
「はい、浮き輪終わり」
「さささ、さむい…!!」
「だからもっと厚着してこいって言ったんだ。風邪ひいたら大変だし、帰ろう」
「…私、私が、浮き輪だったんだ」
「は? どうしたんだ、いきなり」
「…浮かされてる…」
「はぁ?」
「……」
「……、ふっ。帰ろう、フィオ」
「私もう風邪ひいたかも」
「そうかもな、お馬鹿でも風邪ひくんだな」
「あんまり、ロイには言われたくない言葉かな…」
「…んん?」
「ウソですウソです、私が馬鹿です私だけがバカだったんです」
「ばーか。フィオったらホント、バカだな」
「はい、私は馬鹿です」
「…ばかフィオ」
「…ううう、かっこいい…」
「…本当に風邪ひいたか?」

- - -
底抜け元気マン って言いたかっただけ
…なのに長くなってしまった!!!?

ロイにとっての海は『太陽のある海』
フィオさんにとっての海は『夜の海』
楽しい、楽しくない。怖くない、怖い。同じ言葉でもお互い真逆な事思ってるんですね。それが伝わってない感じ。
フィオさんは海とか湖とか川とか、潜れるだけ深さのある水は苦手意識を持っています。お風呂は大丈夫。温泉とかはむしろ好き。でも一人きりで入りたいと思っている。

141109
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