[sonic]シルバーに導かれる"影"


顔を撫ぜる冷たい風に気付いて、私の頭は覚醒した。
ひらけた視界はまだぼやけていた。ゆっくりと瞬きをして、次に目の前に現れたのは…白。

「お、い、…大丈夫、か?」

白いものは目を見開いてしきりに瞬きしている。
輪郭を型取り始めた白いものは、よくよく形を見てみるとハリネズミの形をしていた。
夢の中で幾度も見てきた、慣れ親しんだソレによく似てる。
"ソレ"?

「…か、はっ……」
「おいっ!」
「だい、じょう、ぶ…です。よくねていたみたいだから、のどの、ちょうしが……」
「寝てたって?……まあいいや。…な、あんた。ここは危ない。俺が安全な場所まで連れていくから」
「あん、ぜん?」

白いハリネズミさんが差し伸べてきた右手を掴むと力強く握られ、全身ごと引っ張られた。勢いが良すぎて立ち上がるのを通し越し前のめりになったけど、白いハリネズミさんがしっかりと体を支えてくれていた。

「…この建物、外観が少し脆そうだったんだ。出来るなら早く脱出した方がいい」

抱かれながら白い彼と至近距離で視線がかち合っている。
金の瞳。自ら光を放っているような琥珀色を見ていると私の全てを見抜かれ、正体を暴かれてしまう。…そんな錯覚を覚えた。
"暴かれる正体"…?

「……」
「そうだ。あんた、名前はなんて言うんだ?」
「わたしの、なまえ」

問われて一瞬困惑してしまった。なまえ、ああ、名前。
そうだ。夢でも呼ばれ続けたじゃないか。誰かの声がずっと、その名を。

「私は、シャドウ」



――シャドウ!!



「シャドウ・ザ・ヘッジホッグ」
「……シャドウ、か。オレはシルバー。お前と同じハリネズミさ」
「ハリネズミ? ああ、そう…か」
「おいおい、自分の名前だろ? シャドウって変なヤツだな…」

でもシャドウってハリネズミっぽくない姿してるよなー……
白いハリネズミさん――シルバーはそう言って笑っていた。
…確かにおかしな話だ。親しんできた自分の名前に、今更疑念を持つなんて……
繋がれたシルバーの右手が、左手に替えられる。
シルバーは白い歯を見せてこちらに微笑む。すると彼の体はうっすらと水色に発光し、同時に私の全身は急激な浮遊感に襲われた。
突然のことに体のバランスを崩し、床に顔面から激突しそうになる。

「うわ、っ!」
「おっと。ゴメンなシャドウ」

咄嗟にシルバーの左手が私の手を掴んでくれたおかげで、床との衝突は避けられたけれど、

「し、シルバー、…これ、一体何なんです…?」
「これ?…ああ、サイコキネシス。超能力だよ」
「サイコキネシス…? シルバーは、エスパーなんですね……」
「…な、何か文句でもあるのか?」
「いえ、純粋にすごいなって思ったので」
「す、すごいとか、…別にそんなもんじゃないぜ……?」

シルバーの頬がほんのり赤く染まっている。
少年らしい、可愛らしく思えるその姿。
…何かのデジャヴを感じたような気がして、ふと気になった後ろを振り向く。



――シャドウったら、もしかして照れてるの?
――……
――私、嬉しいです。…シャドウでもそんな顔するんですね。あなたのそんな顔見れて、ちょっと得しちゃいました。



「…シャドウ?」
「ん?」
「後ろが…どうかしたか?」
「いえ、なんでもない…です」
「そうか。…とにかくここから出よう。置いてかれないように俺の右手、しっかり掴んでてくれよな!」
「お願いします、シルバー」

部屋の扉の前までシルバーが導いてくれる。
廊下の様子をきょろきょろ確認しているシルバーの後ろで、もう一度だけ私は後ろを振り向いた。
この部屋は広い研究ラボ…のような施設らしい。大きなモニターがいくつもあり、部屋の床や壁には埋め尽くすほどの配線が敷かれている。
その中心、カプセルのような、揺りかごのような入れ物がある。私はそこで、眠っていたのだろう。
割れたカプセルのガラスの破片が周囲に散らばっている。シルバーがやったんだろうか?私の体には傷が見当たらないけれど…
ふと、カプセルの下部に薄汚れたラベルがあるのを確認した。割と小さめなそれには、何やら文字が刻まれているようだ。
黒ずんだそれを読み取るのは不可能に近いものだったけど、比較的汚れが少なかった所で辛うじて見てとれる文字列がある。



...HE CHIMERA
......者......れし過ち...器



「モンスターの気配がする」
「えっ」
「…シャドウ、音を立てるなよ」
「は、はい。わかりました」

シルバーの目付きが先程までとは異なる、鋭いものになっている。
闇に続く廊下の先を見つめ、シルバーと私の纏うサイコキネシスは色を強め輝いた。





炎に朽ちていく世界
“影”は 放たれる。



- - -
新ソニ、シルバーたちがいる荒廃未来まで眠り続けたフィオさんは、眠りに就く前まで一緒にいたシャドウの記憶だけが強く残り、そしてなぜか成り変わろうとしてそう名乗り始めます。…っていうお話など。

でもこれで進めていくとシルバーは後々大変なことになりますね。

・(新ソニストーリー通りに)カオスコントロールで現代へ。
シルバー「えっ!?…お、おいシャドウ!シャドウじゃないか!」
アスラ「(シャドウ?)あの、私はシャドウじゃなくて……」
シルバー「は?、いや、あんたはシャドウだろ!!」
アスラ「???」

・シャドウとエンカウント
シャドウ「僕はシャドウ。シャドウ・ザ・ヘッジホッグだ」
シルバー「はぁ?い、いや、シャドウはあいつで、…で、こいつもシャドウで、んであいつもシャドウで………… はあ!!?ワケ分かんねえええええ!!!」
シャドウ「何だこいつは……」

140418
(090925)
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