やさしいロイさまをうたがう


「…ぇ、え?」
「おっす」
「ロイ? なんで、ここに…?」
「さて、どうしてでしょう?」
「…家に食べるものがなかったから、買い出しのついでに寄ってみた…とか?」
「買い出しは余計。家に食べるものはある。寄ってみたんじゃなくて、フィオを迎えにきたんだ」
「え、ええっ? なんで…」
「なんでって、理由がなきゃダメなのかよ」
「なかったら来ようと思わないでしょ。…何か欲しいものでもあったの? 今お金あんまり持ってないから、どこかで下ろさないとな…」
「俺の話聞いてた? そういう私的な理由はないってば。…今回は」
「うーん…? じゃあなに、私また何かやらかしてたっけ…」
「…だああああ!! なにウジウジしてるんだよ!そういうのじゃないって言ってるだろ。ほら、さっさと帰るぞ!」
「うーん? うん…」
「…俺が来ちゃ都合の悪い事でもあったわけ? それなら俺、一人で帰るけど…」
「いや……」
「…なんだ、そっか。じゃあ俺は帰るよ」
「ちょ、ちょっと、え、ロイ?」
「なんだよ」
「い、いっしょに、かえりましょ…」
「…用事はいいのか?」
「用事なんてないってば」
「だってアンタ、なんか言いづらそうに口ごもってたろ」
「…理由もなしに近付くひとなんて、今までいなかったからさ」
「ふーん…?」
「ロイも、分からないけどね…」
「…へへっ、そう簡単に人の事理解されてたまるかって」
「…… …そっか。とりあえず、ロイのその笑った顔が素敵だっていうのは分かったよ」
「ん?そうか? フィオもやってみれば?」
「そう簡単に理解されたらたまらないんでしょ? 私の方は、おいおいね」
「出し惜しまなくてもいいだろー」
「せっかちな男は嫌われるよ?」
「…なんだ、笑えるんじゃん」

- - -
ひとの好意というものからは縁遠かった人生だったので、フィオさんはなかなか疑心暗鬼から抜け出せません。という感じの初期めなお二人です。
140416
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