自分のことを話すとしたら、「特に特徴なんてなにもない」という
言葉がしっくりくるだろう。
言葉を正しく選んで、普通に勉強して、ちょっと都会に出れば
人並みな生活はやっていけるのだ。
(それと普通に恋して結婚できれば尚よしなのだが)
…それを曲げなければ、どんなことだって普通にやりすごせる。
それが、20代後半の男の考え付いた【平凡】な【男】の【人生】である。



そう思いながら目の前にいる白い車掌の服を着ている
男が不思議そうな顔をしてわたしをみた。
ソファーに座らせられて、早数十分は経過しているだろう。
目の前にいる白い車掌は笑っていた。

笑顔のままなのは、ご存知の通り。
「ねぇ そのポケモンきみの?」
といわれ小さく頷いた。
既にモンスターボールからでていた自分のポケモン【ヘルガー】が
大人しくしている姿を見る限り…。
確かに目の前が主人なのだろう…とクダリが確認したのだろうが


「どっかで、みたことあるんだよねぇ…」
「…」

うーん、と考えている白い車掌に正直嫌気がさした。
覚えていないならいいじゃないか、と言葉を紡ぎたくなったが
そこはぐっと言葉を飲み込んだ。
自分の状況下をしっている本人から
すればさっさとこの悪夢を終らせるために一人で暮らしている
ヒウンシティのマンションに帰って寝てしまいたい気分なのだ。
気分は、下がるだけである。

「あの、わたし帰ってもいいでしょうか。」
「ダメ!…そうだ!ノボリだったらきみの事知ってるかも」
ノボリ、その言葉をきいて背中がぞっとなる。
いや、さすがにこれはまずいのではないか。

「いや!結構です。…すいません、失礼します」
立ち上がろうとした時、ヘルガーも気が付いたのだろう
主人の顔をみて、不思議そうだが自分の主だと確認すると
クダリの前を通り過ぎようとした時だ。
扉が、勝手に開いたのだ。


「クダリ、何をして…」
「!?」
「ノボリ!この子捕まえて! 逃げちゃう!」

なんて事を言うんだ!と声には出さなくても顔にはでたらしく
黒い服を着ていて、尚且つ先ほどの白い車掌と同じ顔をしているが
顔が笑顔でないカレの横を通り過ぎようとした時に
事件は起こってしまったのだ。

「これは、優太郎のヘルガーではございませんか?」
なぜ、あなたが。という黒い車掌の言葉にピタリと足が止まり
部屋の中にいた白い車掌は「そうだ!!」と一層嬉しそうに
いうのを聞いてしまった

「そう! ノボリの部下のポケモン! ソコソコ強い子の!」
と笑って車掌は言った。
ターコイズブルー色の髪の毛に黒い瞳。
確かにノボリと呼ばれた黒い車掌の男は覚えていた。
珍しい色の髪の毛、仕事をきっちりして帰る男…

そう、男なのだ。
自分の知っている優太郎という男は…。
目の前にいるのはどうしても…

「失礼ですが、優太郎とはどんな関係で?」
「…しっ親戚です。」
「おかしいですね…彼のヘルガーは性格が気難しいポケモンです。
親戚だからといってそんなに近くにいて警戒しないのはおかしいはずですが…」


と口をヘのまんまノボリはいう。
へ〜と関心をしているのはクダリであり…
その優太郎という男と似ている髪の毛の色や瞳、そして優太郎のポケモンらしき
ヘルガーのこの人に対する懐きの良さ。


「優太郎、なのでしょうか?」
いつの間にか抑えられていた手によって、真実があきらかになった。








ごく【普通】な【人生】をおくろうとしているもうすぐ三十路を
迎えるこの男、バトルサブウェイの駅員の一人である。
バトルサブウェイ、電車の中でポケモンバトルをする…
色んな職種の人たちと出会い、ポケモンバトルをする…負けなんて許されない。

勝利しなければ次の出会いなんてなくバトルもできない。
一からやり直しをしなければいけない。
―――そんな結構過酷なバトルサブウェイを管理する
【サブウェイマスター】が二人いる。

ノボリ、シングルトレイン・スーパーシングル担当
クダリ、ダブルトレイン・スーパーダブルトレイン担当

そんな二人は勝ち進んで行かないと出会えないバトルサブウェイの責任者たち。
彼らに会いたいがために勝つ人も居ればそんな
二人もただのライバルと思っている人もいて・・・。
その障害となるのは、ギアステーションで働く【彼】ら、駅員である。


その障害の【駅員】を、優太郎もやっているのだった。







そんな優太郎という男らしき…性別が違うが
珍しいターコイズブルーの髪の毛に黒い瞳の女性は
困惑した顔をしている。
ヘルガーはそんな主人のことなんて気にしていない様子であり
扉から出て行こうとして立っていたのに、今はまた結局
座らされていた。


正直、面倒なことになってしまった。と思っているのだ。


「それで、どうしてこうなってしまったんですか?」
優太郎。そういって言ってみるものの答える口は閉ざしたままであり
優太郎自体もきっと信じて貰えないんだろうと諦め半分な状況下である。
クダリとしてはノボリに「ヘルガーに触ってもいい?」となぜか
ノボリに聞いていて静かに話せる状態ではないのだった。


「わたしがその優太郎っていう証拠でもあるのでしょうか?」
懸命な言葉だ。悪い夢、それだけでこれは現実ではないと
考えている彼女にとって今はそれしか逃げ道しかない。
黒い服を着た車掌…ノボリに問う。
「わたくしも断言はできませんが…それかトレーナーカードを
拝見してもよろしいですか?」
「…」
だんまりだ。
これが夢ならトレーナーカードは女性であるであろう…。
そう、これは夢だと思うのならだ。
だけれども…もしも自分の身分を証明するそのカードが
男だった場合…必然的に彼女が優太郎という男であるという証拠だ。


お財布の中に確かにあるはずのトレーナーカード。
手にお財布を握った・・・開けるのに躊躇した。
渋る…ただ渋っているとソファーに座っていた青い髪の毛の女性の
後ろからひょいっとお財布を取った白い車掌…クダリは「ゲット!」と
いってにこーっと笑った。
ささっと手際よくそのカードをみたクダリがぴたりと止まった。

「………ねぇ きみって女装が趣味なの?」

うわあとちょっと引いた感じの声と引きつった笑顔。
・・・わたしは 優太郎という男のトレーナーカードをもって居たらしい。








「確かに、わたしが駅員の優太郎で間違いはありません。」
「…しかし、どうしてこの様なことに」
「わたしもわかりません…ですが、別に女装が趣味とか
そういうのではないので」
「えー、そうなの?」

観念した。というよりも嘘をこれ以上つける自信が、彼・・・いや
彼女にはなかった。
どちらにしても選択を間違えれば間違いなくジュンサーさんの
所に連れて行かれるか、もしくは今世間を騒がせている
《プラズマ団》と勘違いされても困るからだ。

服の身なりも、確かに優太郎という男がいつも着ている制服だ。
だけれども彼女(仮として優太郎としよう)・・・優太郎はその男に
沿ったオーダーメイドの制服とは不釣合いな程制服はだぼだぼで
端からみたら「どうしてこの服を女性が着てるんだ!」状態だ。

身長も縮んでいれば体系も違う。変わっていないのは
ターコイズブルーの髪の毛と黒い瞳。

「わたしが覚えているのは普通にバトルサブウェイに乗車して
お客様の相手をし、それから・・・・それから・・・」

それから、の後の言葉が出てこない。
その前の出来事を完璧に覚えているはずなのにその後は
まるで霧が掛かったかのように曖昧で、確信がない。

「(その後、えーっと・・・・)」
「つまり、起きていたら女性になっていた・・と?」
「えぇ、それで合ってると思います。」
「?でもぼく ダブルトレインのってた!
でも列車止まって《あ〜結局またここまでこなかったんだなー》
って思って 列車の点検してたら優太郎が倒れてるのを見つけたんだよ?」
というクダリの言葉を言われて、はっとした。

そうだ、珍しく白い車掌の方で人が足りないと言うので
仮にということだったのを、なぜ忘れていたのだろう。

「・・・クダリ、申しておきますが欠員がいたらわたくしに一度相談
をしてくださいまし」
「だって つい目の前にいたんだもん」


いや、いたんだもんってなんだよ。と毒づきたかったが
仮にも上司である為に、また我慢を一つ飲み込んだ。
それに長居をしすぎた。今日のダブルバトルの挑戦者が
中々強く、それでいて自分の手持ちのポケモン達もくたくただ。
余計な仕事なんてするのも、自分の中では論外である。

「とりあえず、明日戻っていたら万事解決、ですので
帰らせてくださいませんか?」




もう色々と投げ出したい優太郎の提案にとりあえずと
言った風に帰された・・・よかった。
意識が曖昧なまま、彼、彼女は自分のポケモンを使い
ヒウンシティまで空を飛んで帰って行った。




ヒウンシティのとあるマンションの一室。ちなみに6階の部屋。
綺麗な部屋は一人で住むにはでかいすぎると思うが
そうもない。ポケモン達を出せば結構場所をとられるのだ。
だけれども自分と一緒にいるポケモン達ほど心地いいものはない。

部屋に帰ってとりあえず出せるポケモン達を出した。


トロピウス以外のポケモン・ヘルガー・ブルンゲルを出し
ポケモンフードを与える為台所へとやってきた。
「(身長が・・・)」
届かない。高い所に置いてあったため背伸びをし
やっと届いて彼らに食事をやった。
嬉しそうに食べるポケモンをみてほっとし、とりあえず
シャワーでも浴びるか、と浴室に行き・・・・


そこから奇声が上がったのはいうまでもない。





2012.08.25

男夢で女の子にナッチャッタ!しかも年齢も
▲▽よりも高かったらウメーからはじまった。


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