会いたいな。
みつきは小さく呟いた、黒い髪の毛を揺らしながらも身をじっと固め
ターゲットを木の上から見続けて2日間くらいは過ぎている。
ある城からの依頼で監視役として雇われてからは殆ど忍者食しか手にしておらず
少々頭を悩ませていた。
フリーのくノ一としては格段にレベルが上がっていて仕事の量もあのフリーの
売れっ子忍者の利吉とは比べ物にならないがそこそこの評判と仕事を頂いている。
また帰れば商家の下女としての密偵の仕事が残っている。
さっさと早く終ればいいのに・・・なんて舐め腐っている考え方をした瞬間
下にいるターゲットが動き出した。





会いたい、早く、お前に会いたい。
頭の中ではそう思いつつも身体はきっちりと任務遂行を遂げようと
足が勝手に動いていた。
黒い忍び装束で暗闇の中、ターゲットの後ろを追いかけた。





スーパー・ガール






忍術学園の上級生と言えば、朝から鍛錬をするものも少なくはなかった。
夏の暑い日には朝早くの鍛錬は爽やかではあるが冬ともなれば寒いだけだ。

だが忍びたるもの鍛錬は欠かさず、というのは当たり前なことだろう。
そんな鍛錬バカ(笑)でもある潮江文次郎が夜も開けていない朝方に
目が覚めて部屋をでて廊下を出てみた瞬間、ふと何かの視線が
文次郎を見ている事に気が付いた。
振り向こうとした瞬間、視線にふと写ったのは黒い忍び装束を
纏っている女性だった。
それが、誰だかわかった瞬間、文次郎の顔が驚きを隠せていなかった。

「文次郎。」
「みつき・・・先輩。」

ふわりと笑ったみつきの顔にどきりとする。

前にあったのは確か数ヶ月前だったはずだ。みつきが学園に少し滞在してから
数日後にはすぐに依頼があって彼女は淋しがりながらも学園を後にした。
一つ上の先輩でありながらも、既にフリーのくノ一でも信頼される
地位まで上り詰めている・・・。
委員会も違う、しかも同学年ではない自分達が出会うきっかけ。
彼女、赤坂みつきが学級に属すものであり、自分が会計委員会という
委員会が出会いだった。
最初はあまり好きにはなれないでいたのに、いまは好き合い同士になっている・・・
不思議なものである。

みつきの纏っている匂いは、いつもと違う事を感じさせた。
「あ、みつきちゃん!」
「!(小松田さん)」
朝早いというのに、門から入らなかったみつきを見つけたのはあの事務員の小松田であり
事務員の制服を着ていないながらも入門票だけは片手にしっかりと握られていた。
眠たそうにしていた小松田だったがみつきが来たと判ると嬉しそうな顔をしながらも
こちらへとやったきた。
「小松田さん。・・・あ、入門票ですね。」
「はい、って・・・お仕事だったの?」
「うん、今朝終ったの。あと入門票ね」
「ありがとうございます。じゃあ帰る時にはまたね。」
そういうと彼は何も言わずに自分の役目を果たしたのに満足して来た方向へと足を伸ばした。
文次郎のことを目にも留めていず・・・・。


彼が行った瞬間さてと、彼女は笑って自分のほうからあるいてきた。
肩に手を置こうとした文次郎だったが、彼女は笑ってそれを拒否するかのように手を払った。
・・いや、確実に拒否をしたのだ。
少し驚いた文次郎にみつきはにやりと笑ってこう呟いた。
「ちょっと風呂に入ってくる。・・・覗くなよ?」
「!誰が!」
んっふっふ、と笑ってみつきはルンルン気分なままに軽い足取りで
風呂へといってしまった。



しょうがないな、と文次郎は小さくため息をこぼしながらも
庭に出て、とりあえず一通りのメニューをこなそうと一番最初にやる予定だった
物をはじめようとかがんだ時だ。
シュッ、と空気を切る音が文次郎の耳に届いてすぐさま顔を振り向いたトキには
後ろには何かが刺さった音がする。
それを投げた者は一体誰だと思った瞬間、その投げた物は小さく先ほどの文次郎のように
ため息をこぼしていて・・・
「お前、普通に鍛錬するなんて・・・馬鹿か?馬鹿なのか?」
「・・・仙蔵。」
廊下にいるのは寝着を着ている同じ同室の立花仙蔵であった。
明らか不満気な顔をしていてわかりやすいなと感じる。
文次郎があっけに取られていると後ろに抱き付いてきたのは土の匂いがする男が一人。
しかも近いのにも関わらず大声を張り上げてきた。

「私もいるぞ文次郎!」
「!小平太!」
「・・・・もそ。」
「なんだ、さっき小松田さんが大騒ぎしたからきてみたら。」
「みつき先輩。文次郎に会いに来たんだよ。」
後ろから抱き付いてきた小平太をみて驚いたが、仙蔵の元に集まってきた
六年生の友人たちが全員そろっているのはかなり不思議だ。
長次、留三郎、伊作である。

「というか、危ないだろうが仙蔵!俺に向かって手裏剣を打つなバカタレ!」
「?・・・私が打ったんじゃない。」
「私だぞ文次郎!」
はいはーい!と嬉しそうな顔をする小平太にもはやゲンコツだけでは
すまされそうになさそうだ。
何度こいつに注意したのか、覚えているはずがない。


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