「本当に、サッカーボールどこいっちまったんだ!」
ゴーグルが目立つ少年はコンビニの外に置いておいた学校専用の
サッカーボールがどこに忘れたのか、と頭を悩ませていた。
今日一応クラブの練習であり、明日は子供会のサマーキャンプなのだ。

行事という行事が少年をわくわくさせる。
夏祭り、海、サッカー、楽しいことが今年の夏休みにはたくさんあるのだと
この少年、八神太一はおもっていたのである。
8月1日の今日頃にはデジタルワールドに行くなんて知らずに。
そんな予定なんて、太一にだって入っていなかったのだから――――――


Story Without Title
7月31日の出来事・・・その2







お台場小学校、みつきは近所の人達に聞きながら小学校に近づいていっていた。
キャップ帽を一旦外してまた被って、今日は天気が良すぎるから帽子の中がむせるのである。
「・・・あちー。」
手で風を起そうとするがあまりいい風というわけではなくぬるい風。
こうぴゅうっと吹けばいいのに、とみつきは思っていると小学校らしき建物を見つけた。
「お台場小学校。」・・・ここだ。
みつきはうきうきっと身体はうづいているのがわかった。
2学期からあたしが通う小学校、「お台場小学校」の姿だった・・・
ピィィ・・・とホイッスルの音が鳴り響いていてその鳴り場所はこの小学校の校庭だと知り
みつきはひっそりと壁を乗り越えて学校へと足を踏み入れた(不法侵入(笑))




「八神はどうしたんだ武之内。」
「ちょっ、ちょっと遅れるそうです。」
校庭にはクラブ活動なのだろうか男の子が沢山いる中でみつきは
びっくりしていた・・・女の子もいる。
顧問の先生なのだろうとても怒っている様だった。
その時とんとんっとみつきの後ろから誰かがみつきの背中を叩いた。
「お前入部希望者か?」
「・・・へ?」
「先生!熱心な生徒が見学に来てるぜ〜!」
男の子は笑った顔をしつつみつきの手を引いて
サッカークラブの練習場所まで来させられてしまった。
みつきはえ?っと顔をしかめてしまったがキャップ帽を深く被っていた為、
表情はみられなかったがざわっと声があがったのは周りが見えなくてもわかってしまった。
「ちょっ!あの!」
「大丈夫だって!俺ケンジ、≪お台場の秋田≫って呼ばれてんだ!
ちょっと先生が機嫌悪いからちょっとばかしよろしくな!」
よろしくって何するんだよ、とみつきは訴えの目をするがそのケンジという少年は

もう勝手に先生に紹介されてしまった。
「・・・う〜ん、しょうがない。お前ポジションは?」
先生はちらりとみつきを見てポジションを聞いてきた。
「フォッ・・・FWですけど・・・。」
「へぇ、それだったら八神がいなくてもちょっとは練習になるかもな。
武之内!こいつにゼッケンを貸してやってくれ。」
「はっはい。」
「それと5分後にミニゲームをやるぞ!わかったな!」
先生の声に反応するように「はい!」との声が重なる。
・・・・あたし、最初からやばいんじゃないでしょうか?










「FWなんでしょ?あなた。」
「そっそうだけど。」
「あたし武之内空、よろしくね。」
ゼッケンを借りたみつきに声を掛けてくれたのは自分と同じ女の子だった。
にこっと笑っている空という少女にちょっと安心したのか肩の力が抜けた。
「ごめんね、太一がまだ来てなくて・・・ケンジがあなたを見て「時間稼ぎになる」とか
思ったらしくて・・・」
「(あたしは時間稼ぎか。まっ別にいいんだけど。)」と
もう諦め半分にも似た思いが通り過ぎた。
「何年生?」
「あたし5年生。あなたは?」
「あっ!」
みつきが言おうとした時ホイッスルの音がなった。
試合の始まりである。
「行きましょう!あたしもFWなの!」
「うっうん!」
座っていたみつきの手を引いてフィールドへと足を踏み入れる。





今回のミニゲームは30分。
前半後半15分で行う事となった。






「遅くなっちまった!」
太一という少年は走りながら顧問の先生がもう激怒している時間だと
冷や汗をかきながらも校門を通った。
空だってさんざん電話くれたのに遅れてしまった自分が悪い、という気持ちが
やっぱりあるようだった。
校門からはもう校庭のホイッスルの音が煩いくらいに聞こえる。
もう始まって30分以上も経っているのだ、エースと呼ばれている自分が遅れてどうするのだろうか!
校庭へと走っていく太一はもう終盤となっているゲームをみた。






空の隣にいて走っているヤツ・・・空がそいつにパスした瞬間
ヤツはゴール前までノンストップで誰も盗られなくゴールキーパーに不敵な笑みを零し
右足を降るとゴールシュートを上手く決めた。
面白いくらいの動きとシュート。
ピッピッピッピー・・・ホイッスルの音が終わった瞬間「わぁぁ!」と声があちこちから上がった。






「ぁ!太一!遅いぜ。」
とんとんっと太一の隣でにかっと笑っているケンジは
「今までなにしてたんだ?」と聞こうとした瞬間
太一の声で止められてしまった。
「あいつ!空の隣にいたツートップだれだ!?」
「はっ?あっあいつ?」
あぁ、とケンジは太一が来る前までの事情をはなしたのだ。





「すごいわ、あなた本当にこの学校の生徒?」
空はミニゲームが終わって自分と同じポジションのみつきに話を掛けてきた。
サッカーでは太一とのツートップだったためここまで来れたコが初めてだったのだろう
思い通りなサッカーを出来た事自体驚きなのだ。
太一とはまた一味違った楽しさだった・・・
「うん、楽しかった。」
みつきもその言葉と久々のわくわくが身体を動かしたのだろうか、汗をかきながらも
にっと笑った笑顔がだせた。
その時、「おーい!」と声があがった。
「太一遅い!」
空の視点が変わった、みつきはその呼んだ少年を目でおった。
空はその少年のもとに来て「一体なにしてたのよ!」と怒られていたのである。
「・・・ぁ、そういえばあいつは!?」


空に「あいつは!?」というと
「あぁ、あのコ・・・あれ?」
紹介しようと思っていたのに、空が振り向いた瞬間 みつきはいなくなっていたのだった。











お台場小学校を出たみつきはゆっくりと道を歩いていた。
2学期も始まっていないのに今日いました。といえるわけでもないし
なにかと騒動(?)になると困るからである。
・・・でも。
「サッカーボールを届けるんじゃなかったの自分。」
ちゃっかりとサッカーボールを手に持ってしまっていた。
返すつもりだったのにただ遊びに行ってしまっただけとなっていたみつきに
一つため息が零れる。
夢中になっちゃうと本当に目がないのは自分の欠点で・・・実際、前の小学校でもよく先生に怒られたものだ。
もう午後4時。みつきは帰ろうとした時にふと今日のご飯のことを考えた。
一人だからコンビニ弁当でも済ませよう。
そう思い自宅へと急いだ。






自宅へと帰ると1件のメッセージが留守番センターというモジが点滅していた。
ボタンを押すと声が再生する。
「子供会のサマーキャンプに参加できるようにしておいたぞ。
子供の頃の友達とも会えるといいな。楽しんできなさい、」
父からの伝言だった。子供会でサマーキャンプがあると聞いたのは引っ越す前。
ちゃんと学年主任の先生ともちゃんと連絡をとってくれたようだ。
ご丁寧に学校から後でファックスで内容が送られてくるらしい・・・
たしか、ヤマトも子供会に在籍していたはずだとみつきは強く思っていた。

やっぱり昔からの幼馴染もいると気が軽くなるのだ。
ふと時間をみてみつきはそろそろお隣さんとかに挨拶に行かなくちゃ。と
みつきは気づきお母さんが買っていたクッキーがつまっている箱に手をのばした。






1306 YAGAMI


お隣さんといえば、このお宅だった。
うちは1305号室だからまぁ、お隣さんは大事にしなくちゃ。
とまたちょっと大人ぶってみたり。
ピンポーン。
呼び出し音が鳴り「はぁい!」と女の人の声が聞こえた。
「・・・。」
「・・・・」
互いに顔を見合わせてしまった。
ショートカットでパジャマ姿の女の子が扉から出てきたのだった。
首から何かを下げている・・・・ホイッスル?
流石のみつきでも一瞬驚きを隠せなかった。
「あ・・・あの。隣に越してきた者なんですけど・・・その、お母さんいらっしゃいますか?」
「・・・お母さん!」

パジャマを着ている女の子はお母さんを呼んだ、するとたたたっと足音が大きくなっていく。
「あら、お隣に越してきた?」
「はい!赤坂 みつきっていいます。」
「あらま。よろしくね、・・・・ご両親さんは?」
きょろきょろっと女性は見るが隣には誰もいなく扉の前にいるのは
みつきの子供と同じくらいの女の子だけ。
ぁ、とみつきは付け足すように、
「両親は外国なので」と言うと「大変ね。」と困ったような顔をしていた。
「ぁ、よかったらご飯食べていかない?太一が友達の家でご飯食べるとか言うから残ってるのよ。」
「ぇ。」
「多めに作ったから食べましょう?・・・ね?」
「・・・ね?」
そのお母さんの隣にいるパジャマの女の子も笑って母親の真似をし「ね?」と
言い頭を軽く右に傾ける。

「じゃぁ、お邪魔します。」
顔が一気に赤くなりみつきはそのYAGAMIさん宅をあがる事になった。




Suzuno Asaka
Dream Novel 2006,1203




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