チョコレートを渡す日というのが存在する。
それが女子が一番盛り上がる一大イベントの一つであろう。
そんなバレンタインに悩んでいるやつが俺の家にやってきた。
そう、
「またか・・・今日はどうしたんだよ≪太一もどき≫」
「だから・・・俺は太一先輩≪もどき≫じゃないッスよ!」
2月10日、なぜか学校が終わるたびにやってくる。
BAD-BOYS
「・・・で?」
「お願いします!チョコレートケーキの作り方を教えてください!」
玄関前にいたのはチビモンを抱いている少年で≪太一もどき≫・・・大輔であった。
チビモンは「どうしたんだよだいすけー」と驚いていて優太郎も
なぜこいつが此処に来るのかが分らなくてしょうがない。
「・・・かえれ。」
「いやです!」
今回は譲れません!という顔をしている大輔であり
優太郎の家のドアで立ちどまりっぱなしであった。
「だったらヤマトにでも聞きゃいいじゃ・・・」
「ヤマトさんはバンドの練習とかで蹴られたんス。」
・・・たぶん予想だとヤマトが・・・
「優太郎さん、お菓子作りがすっごく上手いって・・・」
ほらキタ。ヤマトによく小さい頃からお菓子を教えていただけに
そう言うと思っていたのだ、居留守を使えばよかった・・・・今考えてもそれは
遅いだけなのかもしれないのだが・・・。
大輔はまるで飼い主に見捨てられそうな犬のような顔になっていて
うっ、と内心 優太郎の心が揺れる。
「優太郎ー、だいすけがしんけんなんだー、だからおねがいだよ。」
ついにチビモンまでもぺこりとお辞儀をしてしまい圧倒的に優太郎が不利になってしまった。
結果。
「ありがとうございます!優太郎さん!」
「・・・(こいつ・・・・いつか殺す。)」
という言葉を優太郎は心の中で呟くとリビングにあるテーブルに
大輔は沢山の材料をスーパーの袋から出した。
その量は結構なモノである。
「・・・で、何を作りたいんだっけ?」
確かさっきチョコレートケーキという言葉を聞いた気がしてみるが一応たずねてみる。
すると嬉しそうな顔で
「ウェディングケーキです!」
「・・・・・」
さっき言っている事と違うんですがどういうことじゃ≪太一もどき≫。
「嘘っすよ!・・・一応チョコレートケーキなんですけど。」
「とりあえず作ってみろよ。」
「・・・えぇ!?教えてくれないんスか!?」
わくわくとしている大輔をよそに優太郎はあっけなく言った一言に大輔の笑顔が剥がれる。
「・・・一応自分で作れるようになる為なんだからさ。」
「・・・・」
ぁ、黙った。優太郎の一言が悪かったのだろうか・・・
ちょっとむすくれている大輔に一言。
「マスターしたら太一すっごく喜んでくれるしいいんじゃ・・・」
「やる気出てきました!チビモンみてろよ!」
「がんばれ!だいすけ!」
・・・・この犬め。
「・・・・」
「どっどうでしょうか。」
ドキドキと大輔の顔から心臓の音が出るくらい緊張しているのが
顔をみただけですぐわかってしまう。
大輔が誰の手も借りずに作ったチョコレートケーキ。
見た目も中々、 優太郎はイスに座っていてエプロン姿の大輔は
優太郎の試食をしてもらおうとフォークとケーキを持ってきた。
「・・・・」
「たべないのー?」
「・・・」
チビモンの一言で優太郎は一欠けらチビモンに大輔が焼いたケーキを口の中に
放り込んでやった。
するとチビモンの様子がおかしくなり優太郎はそれをじっとみて
そして持っていたペットボトルのミネラルウォーターをチビモンに飲ませてあげる。
その様子を見た大輔は「チビモンー!」と驚いてチビモンを抱き寄せた。
「・・・お前、何作ったんだよ。」
美味しそうに見えてこの中に何が入っているというのだろうか・・・。
綺麗なモノにはトゲがあるというが、それを凌駕するのかもしれない。
「だっ・・・・だいすけ、このケーキ甘くないしまずい・・・。」
「・・・へ?」
心配がっていた大輔の顔が一気に阿呆っぽくなって大輔は自分が作ったケーキを一口。
「・・・・」
「・・・・・」
「・・・水!」
「・・・(だめだこいつ。)」
結果:まずい。
・
・
・
「とりあえず、一通り俺が造って見せるから。」
「はい!・・・って何で俺がフリルのエプロンなんスか?」
優太郎と大輔、大の男がキッチンに立って 三月はめんどうがこれ以上
この家のキッチンを汚くさせられたくない為か(相当大輔の扱いが酷くなっている気が・・・)
優太郎が実技演技をすることに。
さっき大輔が付けていたエプロンは青いチェックが入っているエプロンだが
今来ている大輔のエプロンはアニメのキャラクターが真中に入っている女の子向けの
エプロン、その大輔の質問にあっさりと
「俺はこれがいいの。」と俺様発言をした。
「お前、そのアニメエプロンのキャラのOPとか歌ってるのを想像してみろよ。きもいだろ。」
そのアニメのキャラのOPが大輔の頭の中に
流れる・・・そのOPを歌っているのが今いる優太郎だったら・・・
「っぷ・・・・」
「・・・お前帰れ。」
「ちょっ!!嘘です!嘘ですってば!」
想像していたら中々のクリーンヒットだったのか大輔の顔が緩み
大笑いしたいのをこらえていた。
笑ったのを謝った大輔に一つため息を零しながらも
「最初は薄力粉からな。」
ちなみにこれは菓子用だから、と付け足しボールに薄力粉を入れ次に
ココアを一緒に混ぜこんでいく。
*
「・・・うっうまい。」
「優太郎ってうまいなー!だいすけとぜんぜん違うー!」
数時間して優太郎のチョコレートケーキがオーブンから焼きあがり
大輔・そしてチビモンに試食をさせることになった。
優太郎のチョコレートケーキに一口、大輔がケーキを入れ込んだ瞬間
ケーキの甘さとチョコレートの苦さが絶妙な味を出していて「美味しい」と
一言で尽きるような感じだった。
優太郎が本当にお菓子作りが上手かったのを今改めてすごいとおもった。
「優太郎さん!次も・・・!」
「・・・・」
「優太郎さん?」
ゆさゆさと大輔は優太郎の服の袖を揺らすとはっとした顔で大輔をみた。
大輔にはなぜ優太郎がそんな顔をしているのか、わからなかった。
「・・・・・・大輔の今のケーキじゃ・・・まずい。」
はっきりとした口調で言う優太郎の声が響き渡っていて
大輔は最初はしょんぼりしていた。
しかし優太郎ははぁっとまたため息をつきながらもぽんっと大輔の頭に手を乗せて
照れているのか頬をぽりぽりっと掻きながら
「まぁ・・・スポンジが潰れなかっただけでも上出来だよ。」
「!はい!じゃぁまた明日材料持って来ます!」
「(・・・また味見をするのか・・・)」
いつになったら大輔のチョコレートケーキが美味しくなるのだろうか!
以下!次号に続く!(笑)
Suzuno Asaka
Dream Novel 2007,0209