「みつきさん!今日は何か予定ありますか?」
みつきの目の前にやってきたのは専門学生で仲間の男の子で
みつきはいつものように授業が終わったら直行であの電車に
寄ろうとして片付けをしていようとしたときに声を掛けてきたのだ。
「あの、今日一緒に就職リストを見ない?折角リスト今日配られたん出し。」
「・・・・あー、今日じゃなくて・・・また今度!」
じゃね!みつきはすり抜けていくと少年の手が空を切った。
みつきを誘ったのが今日が初めてじゃない、少年はうーん・・・と
考え込んだ。自分で言うのもなんだがモテ組なはずが
この人だけは中々釣れない。入学式から今日まで惨敗。
「でも、諦めないよみつきさん。」


学校を出ると青空が広がっていて学校の近くにあるコンビニに
寄り11:11 11秒、 三月 は近くの扉を開いた瞬間
扉の・・・目の前に電車が止まっていた。




魔法の腕前






「はい、カルピスの原料買って来たよ。」
とんっと置いてナオミがいつもいるカウンターにそれは置かれた。
みつきが片方の腕で抱いていた瓶が袋から出されたと同時にみつきが
食堂車にきたのを知った4体のイマジンとハナ、そしてナオミの瞳が
みつきを見ていた。
「あー!みつき買ってきてくれたの!?」
床で絵描きしていた紫少年はがばりと起き上がってカウンターの前にいる
みつきにダイブしつつもカルピスの瓶とその中身に興味深々だ。
「ほら、リュウちゃんが飲んでみたいって言ってたし、どうせならみんなで
飲もうかと思って。」
ココ最近暑いからね。みつきはナオミにグラスを7人分だしてもらい
氷とミネラルウォーターを出しカウンターにはモモタロス・
ウラタロス・キンタロス・リュウタロスにハナ・ナオミとみつきが揃った。
「なんやこれ。」
「みつきさんが言うにこの液体を水と氷で溶かして飲むものらしいよ。」
「面倒くさいな・・・それ。」
キンタロスの言葉に説明的文章を言れわかりやすくするウラタロスだが
わざわざその作り方をするのは面倒、という声で訴えているのは
モモタロスだ。



「でも結構分量とかで濃さが違うから飲み比べしても美味しいし
種類も今日は4種類買ってきてあるから。」
確かに、カウンターに4種類(計5種類)のカルピスがおいてある。
すると僕が先にやるー!と嬉しそうに言うと紫の瓶を手に取って
グラスに液体を注ぎそれから水で薄めて一口。
「〜〜〜・・・薄い!」
「あーあ。リュウタロスいれ過ぎたのね。」
とハナは隣でみていて呆れモードだったがハナも何か飲みたいと思い
オレンジ色の瓶を手に取り氷と水と原料をいれて飲んでみたハナの瞳が
妙に見開いた。


「・・・おいしい。」
「あ、ハナさんが飲んでるのはマンゴーでリュウちゃんのは
ブドウ・・・モモタロスもやってみなよ、キンちゃんもウラタロスも。」
にっとみつきは笑ってグラスを差し出した。
「それじゃ・・・僕はこれね。」
とグラスを持たされた3体は別々の瓶を手に取り作ってみるが・・・?

「うーん、美味しいんだけど。」
「足りんな・・・泣けるで!」
「前に良太郎が飲んでたペットボトルみたいな味にならねぇな。」
とモモタロスの愚痴が入る。
ウラタロスが手にとったのはレモン味、キンタロスはもも味、
そしてモモタロスはノーマルのを飲んでみるものの、分量が多いのか
少ないのか、妙に自分が理想としている味にはならないらしく顔をしかまらせる。
するとリュウタロスの嬉しそうな歓喜の声にくるりとモモタロス達が振り向くと
みつきが次は作っていてみつきが作ったと思われるカルピスが入っている
グラスを持っていた。



「ねぇねぇ!みつきなんでこの味だせるの!?」
「上手いねみつき。」
「そんなことないけどね・・・でも丁度いいならよかった。」
どうやらカウンターでみつきがカルピスの味の出し方に絶賛しているハナと
リュウタロスを見て。





「皆遅くなってごめん・・・ね・・・・。」
数時間後、良太郎はデンライナーにやってきていて
食堂車にきた瞬間カウンターには沢山のカルピスの空瓶に
他のイマジンもキンタロスの様に寝ていてみつきもカウンターのイスにねていた。
「・・・(どうしたんだろう。)」
不思議なことに、ナオミもいないしハナもソファーでねていて・・・
みつきの顔を覗き込んだ良太郎の目の前に飲みかけの
グラスに目がいって一口飲んでみると懐かしい味がした。
「(カルピス・・・)」
そういえば、前にリュウタロスに「のみたい!」と言われたのを思い出した。
そのためなのだろうが・・・
「ぁ・・・良太郎。」
みつきがむくりと起き上がって眠たげな瞳で目の前の良太郎に視点を落とした。
「どうして皆ねて・・・・」
「あ・・・それね。」
みつきが指をさしたのはナオミがいるはずのカウンターの中。
中には目の前に出されていないがコップの山であり、あと
いつもイマジン達に出すコーヒーの上にのっけるアレ(クリーム)を
出す缶がゴロゴロ落ちていて想像だが良太郎の身体に寒さが通った。
「ナオミちゃんのオリジナルカルピス試食会になってました。」



なるほど、だからだ。
たぶんイマジン達は飲んで寝たのであるがハナさんの場合は
気持ち悪くなってしまったのだろう。
証拠にハナの表情がよくない。
みつきが苦笑いしているとぁ、そうだ。とみつきは良太郎を座らせると
自分がカウンターに行って新しいグラスをだして残しておいたカルピス
の原料をいれた。
「みつき?」
「はい。良太郎暑かったでしょ。」
にっと笑ってグラスをカウンターテーブル、良太郎の目の前に置いた。



「みつきって昔からカルピス作るの上手いよね。」
まるで姉さんみたい。と微笑んでいる良太郎に微笑み返した。
幼馴染でもあるみつきと良太郎はやっぱり遊ぶ事も多くて、
よく夏にはみつきは良太郎と遊ぶたびにカルピスの瓶を持って
良太郎と一緒に作って飲んでいた。
「良太郎が作るのは薄いのと濃いのとか色々作れて面白かったよ?」
「そこは不器用なんだとおもう。」
そうかな?と不思議そうな顔で傾いていると優しい良太郎の顔が・・・
「えっと・・・・また、作ってくれる?」
「・・・え?」
「カルピス。」







「えー!もう帰るの!?」
数時間後、イマジン4体とハナは眠気から覚めたのかカウンターで
話していた良太郎とみつきに目を置いた。
みつきはもう時間がないのか帰り支度をしていてリュウタロスは
残念がっている声とほんとうに行っちゃうの!?とダダをこねていた。
「うん、夜はちょっと用事があるから。」
「・・・わかった。」
「へぇ、リュウタが珍しいね。」
本当に、ウラタロスの言葉にハナも頷いていると
だったら、とリュウタロスが近づいてみつきの腕を掴んで・・・
「だったら、次もみつきのカルピス作ってよ。」
約束だからね。答えは聞いてないから!と置いてあったカルピスを手にして
踊ってみつきに言った。
「じゃぁ僕もまた作って貰おうかな。」
「なんや?また作って貰えるなら作ってもらおうか。」
「なんだてめぇら!?」




「みつきちゃんは魔法の腕前だね。」
ほんの昔に言われた良太郎の言葉があった。
だからか、夏一番に良太郎に作ってあげようと思った。
「また、作ってあげて貰える?」
食堂車の出口で話しているのは良太郎とみつきだ。
ぼそっと良太郎が小さい声でいうとみつきは笑ってわかった!と
嬉しそうで・・・
でも、ちょっとだけ・・・良太郎は悲しかった。
昔は自分のために作って貰っていたモノが今はイマジンやハナにも
作ってあげてしまうのだから。
「でも良太郎一番に作ってあげるからね。」



それだけで、僕は幸せなのかもしれない。
幸せを呼ぶ君はこんなにも人に好かれる。
「じゃぁ、楽しみにしてるね。」
「了解!」



幸せの腕前までも君は一級品。



Suzuno Asaka
Dream Novel 2007,0909


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