むっくりと起きた少女の瞳はまるで寝ていなかった、という
ように瞳が紅い。
その瞳が天上を見て不思議と妙な焦りが胸を高鳴らせた。
朝の6時、 みつき の身体が朝のヒカリを待っていたかのように
身体を伸ばし広いリビングへと足を運ばせ
目をこすりながらも冷蔵庫にある冷えてあった牛乳と小さい小さい卵と
昨日使って残っていたベーコンに手を出した。





Herr dependence syndrome





「早いな みつき 。」
「あ、」
扉の前でまだ制服姿じゃない同居人の姿があった。
いつもみたいに無表情な顔をしているが みつき がテーブルに
盛っている美味しそうな目玉焼きやバターロールに
目を置きながらも彼女を見た。
「レニ。おはよう。」
「・・・また今日も凝ってるな。」
まだ寝ててもいいのに。と言ってはくれるものの みつき と
呼ばれる少女は笑いながらも大丈夫大丈夫!と片手に持っている
フライパンを見せた。
「レニはシャワーでも浴びてきなって!」
「そうさせてもらう。」
いつも悪いな。と扉を閉じたと同時に聞こえた感謝の言葉を
耳で確認しながらも彼女は朝食の他にももう一つ、太陽色の2段になっている
お弁当箱を手にし、昨日の残り物を詰め綺麗に盛り付けていく。
タコさんウィンナーにベーコンアスパラガス。
それに砂糖をいれた甘い匂いを漂わせる卵焼き。
ほかにもサンドウィッチを入れたりとかわいい女の子の弁当が
完成をしようとしたとき、彼女が最後に作ったアボガド入りのサンドウィッチが
お弁当箱につめられようとした・・・が。
「・・・!」
手に納め、お弁当箱にいれようとしたサンドウィッチは後ろにいた人物の
手によって食されてしまったよう。
彼女は小さな溜息をしながらも呆れた声を出そうとしつつも
驚きが先に反応したようだ。



「セイジュ!」
「・・・今日のアボガドサンドは中々だね。」
悪気もない笑顔が後ろから覗かせていながらも
彼はあと一口となったサンドを全部食べてしまった。
「僕にでも作ってくれてたの?」
「・・・違う。」
知っている癖に、と頬を赤くさせつつも
まだ目の前にあるアボガドのサンドの中身にほっとしながらも
作業を進めようとしたとき後ろから伸ばされた手が邪魔で
パチンッと軽く叩いた。彼のエメラルドグリーンの瞳が細くなった。
「邪魔!」
「・・・ほんとに、つれないねぇ。」
と笑い声が聞こえ彼はテーブルへと足を進めフォークを
使う音が聞こえた。
今シャワーを浴びている少年:レニと
さっきの少年と比べて、笑顔がある少年:セイジュとは
一緒に暮らしているのがこの黒い艶のある少女: みつき である。
レニもセイジュともほとんど同時に住んでいるためか彼女が家事をするのが
日課となりつつある。しかし夕方は3人で当番制でもあり中々上手く行っている。
・・・気がするだけ?









「 みつき 様、おはようございます。」
「レニ様!」
「セイジュ様!」
学校の門に来るや否や、早速と言っていいほどの
女の子達に囲まれてさっさと教室に行く事すらままならない。
しかし、 みつき は笑っておはよう。と来てくれた女子生徒を咎める事もなく
挨拶をしていた。
「あぁ、 みつき 様・・・。」
また、ここにも堕ちた女性が一人。
みつき の容姿は見事と言っていいほどに美少年だ。
「本当に凄いね・・・ みつき の人気ぶりって。」
「セイジュ、お前だけにはいわれたくないよ。」
小さく関心しているようなセイジュの声に彼も小さく反応した。
その声は先ほどの女子生徒と話す声よりも1トーンも低く、面倒だと
思わせる声。
みつき の制服はレニ・セイジュと、男子生徒の制服で
髪は朝の時のようなセミロングで長い髪の毛ではなく短髪である。
「俺も、少しはレニのように遠ざけた方がいいのかな・・・。」
小さく呟く みつき の視線は女性にすら目を向けないレニの背中だった。
まるで恋焦がれるような熱い視線にセイジュも気が付いている。
しかし隣にいるセイジュはもう みつき とは話もしていなくかわいい女子生徒と
話をしていた。
すると、 みつき の前に綺麗な女性が目に入る。
「 みつき 様。」
「・・・おはよう。」
まるで置いていかないで。と悲願の瞳が映し出されたのを一瞬だが
みつき は目を見開いたがふっと綺麗にその見開いた顔を消させようと笑う。
あぁ、なんて簡単に落ちてしまうのだろうか・・・と胸の奥で疼いていた
快感を隠しながらも。







学校の授業は魔界で勉強するよりも
なにより楽しみだ。
みつき は教科書を見開きながらもノートの隅っこで
あるヤツと手紙の交換っこをしているよう。
金髪の髪の毛に子供のように笑う少年と。
『今日持ってきてくれた?』
そう一言だけかかれている小さな手紙に みつき の心がくすぐられる
感覚がした。まるでこの学校での小さな楽しみというように。
気付かれないように手紙を書くというのも中々のスリルである。
最初はあの少年からの提案で書き始めている。
『持ってきた。昼に渡すよ。』と小さく書かれた みつき の手紙は
四角く見えないようにして、先生が黒板へと向かれた瞬間
少年に投げつける。
見事キャッチした金髪の少年は嬉しそうにこちらをみると
先生に気付かれたのか「なにしてるんだ?」と金髪の少年につめよっていて
金髪の少年は何にもないです!と元気に声を発していた。








「 みつき ー!」
授業が終った後 みつき の机に一直線にきたのは
さっきの手紙交換の相手:天宮瀬名だった。
その陽気とした顔と笑顔にまだイスに座ってちょっと黒板で
見えなかった場所を映していた みつき の手を止めた。
その瀬名が来たという事で みつき はカバンの中から巾着を出し
ぽんっと瀬名の手の中に収まった。
「ありがとな みつき !」
「じゃなくて、俺の妹に言ってくれよ。」
中々美味いぜ?と弁当をこつんっと叩くともっと嬉しそうな顔をしている
瀬名がいた。
「 みつき の妹かー、で?いつ会わせてくれるの?」
明日?それとも今度のお休み?
ピーチクパーチクと次々とお誘いの言葉をかけてくれているが
みつき は苦笑いしながらも「あいつは人見知りなんだよ。」と
言いノートがとり終わったのか閉じて席を外した。
「悪いな。今日もカフェテラスに呼ばれてんだ。」
「・・・じゃぁ、妹ちゃんのお弁当は貰った!」
「はいはい。妹も喜ぶよ。」
そう言い残し、自分を待っている少女達を見に行くか。と瀬名との
別れを惜しみながらもそんなそぶりは見せずに下の階段へと足が伸びた。




みつき 、魔界にはもう貴女と同じ同属はいない。
『そんな・・・』

絶望的なその言葉に彼女: みつき は幼い時に明かされた真実を
鮮明に思い出していた。
自分がいかに無力だったかと思い知らせるように。












「様・・・ みつき 様!」
「・・・ぁ、」
カタン、小さな音が みつき の耳にやっと届いた。
「 みつき 様ったら、どうなされたのですか?」
甘い声に急に意識がはっきりしだした みつき は最初に音がやってきて
次にやってきたのは甘い紅茶の匂い。
それは みつき が好きなローズティーでそのローズティーが
零れてしまったのだ。
カフェテラスの1つのテーブルに今日 みつき とお昼を食べる者達は4人。
何かチャンスかというように みつき に詰め寄り
ハンカチで対応してきた。
「お怪我はありませんか?!」
「直ぐに みつき 様のローズティーを持ってこさせますから!」
女子生徒が一人出て行ったりと妙にパタパタしている。
「俺は大丈夫。それよりも今日は面白い話を聞きたいな。」
気にしないという みつき の言葉と微笑んでいる顔にばたばたしていた
3人の手が止まった。
「あ、そっそうですわね・・・とりあえず みつき 様の紅茶が届き次第
いつものお話を致しましょう。」
その提案に賛同した3人は残りの1人がやっときたのを初め
ある少女を中心にそのテーブルでは話が始められた。








学校が終った みつき はゆっくりとした足乗りでマンションへと
足を運んでいた。
今日も疲れたなーというまるで大仕事を終らせたかのようないい具合な
みつき は鍵を開けて自分の部屋へと入った瞬間
短い髪の毛が伸びて身長が縮み、男子の制服の胸辺りがぺったんこだったのが
胸が大きくなってなんだか女の子が男子の服で遊んでいるような格好具合。
「・・・つっかれたー。」
声も学校の時よりも高くなり学校の みつき とは全然感じさせないようである。
「うーん、今日は舞子ちゃんと高井さん・大貫さんに由香里ちゃんだったから。」
どうやらお昼に食べた女の子達の名前なのだろうか。
みつき は胸ポケットに入れてあったケータイに手を伸ばし考えるような顔つきで
何やら何かを打ち始めたようだ。
「・・・・・・・・・・よし。」
これでいいだろう。 みつき はケータイを閉じ男子の制服から私服へと着替える。
今日はこの服がいいだろう、とカジュアルな服に手をかけて
家を飛び出した。



「レニー!」
「! みつき 。」
港方面に足を運ばせた みつき は大声で相手を呼んで見せた。
呼んだ相手は同居人の一人で青い瞳を持ち合わせている
少年:レニでレニの手に握られているのは美味しそうなアイスクリーム。
「うわー、今日はジェラート!」
まるで紫陽花のような色をしているアイスが目に飛び込んで
次に2段目の下には真っ赤な色のしたアイスが。
「なんだ?お前も食うか?」
「ほんと!?」
ここのアイス屋さんは絶品!ありがとうレニ!と笑顔で答える
彼女にほんのわずかだがレニも笑っている気がした。
この港の前にあるアイスクリーム屋さんはレニがたまに一人で食べに来る場所で
みつき はそれを知っていた。まぁ、大の男の子が一人でアイスを食べに来ると言うのは
はっきりいって学校の女子生徒達には想像もできないであろうが・・・。
「イチゴアイス。」
「!」
「本当にレニはイチゴ好きだね。」
美味しいのは認めるけどね。とワゴン車に乗っている店員さんから
アイスを受け取るとピンク色のスプーンを貰ってアイスをすくう。
「うーん、葡萄味はやっぱりいいなー。」
レニが食べていた紫陽花色のジェラートは葡萄だったのか。と
確かめつつもマシュマロとチョコのアイスを次は口の中に入れる。
これも中々美味しくておもわず顔がほころんでしまう。


「お持ち帰りできるかな。」
「・・・は?」
「ほら、また今夜のデザートにでもいいかなって。」
みつき の言葉に一瞬驚くが今に始まったことでもないか、とレニは思っている。
別に みつき とは血縁上関係などなく偶然にも部屋を借りる場所が被ってしまったのだ。
結構長く みつき もレニ・セイジュもこの同居人関係が長くなったからか
少しだけ みつき に心を開かせているのかもしれない・・・とレニは思った。
あの、少女を代用しているようで少し胸がいたむようだが・・・勘違いだと
頭からあの少女のことを隠そうとした。
「よし!早速アイスを3人分買ってくるよ!」
まるで今日の夜が楽しみというような笑顔を見せるからレニは呆れ顔だ。











「あれ?レニも一緒だったんだ。」
マンションの最上階にたどり着き みつき とレニは港の他にも
スーパーマーケットにいっていたのか袋を抱えていてきた。
リビングのソファーには本を読んでいるセイジュがいて
一旦足が止まり みつき は笑って「ただいま」と言ってみせる。
「こっちに置いとくな。」
「あっありがとう!」
レニがテーブルに2つの袋を置きさっさと自分の部屋へと帰っていった。
みつき はテーブルに置いてある袋に目を向けているとねぇ、とセイジュの
声が聞こえた。
「 みつき 、今日はなににするの?」
「うーん、今日は和食かな。珍しく魚が安かったし・・・」
「へぇ・・・」
「なに?セイジュも手伝ってくれる?」
「うーん・・・そうだね。 みつき の手伝いをするのも悪くないかな。」
読書していたセイジュは手を止めソファーに身体を預けるのをやめた。
立ち上がり買って来たものを みつき とセイジュが袋から出して冷蔵庫へと閉まっていく。
ふとセイジュは みつき の手と重なり合わせたが「あ!ごめんね!」と
彼女はいつものように交わして手が離れる。
「(料理とかになるといつも眼中にないね・・君は。)」
そう、興味があることになると相手を忘れてしまう・・・ みつき 。
面白そうに・・いや、いつもの微笑みを絶やさないセイジュは近くへと寄って
みつき の手伝いをしてみせた。




見てしまった・・・彼女がなぜこんなにも料理に熱を込めているのかも。
その子供のような淡い恋心がどこへ矢印を迎え入れているのかも。
全てを知ってしまって少し後悔をしているんだよ?
そう考えていたセイジュの思考が一瞬だが止まった。
カシャッと床に何かが落ちる音がしたのと同時に・・・
みつき も嬉しそうな顔から不安の色を隠せない表情が浮かび上がった。
それは、何かわからないが背中に冷たい何かが這っているような感覚で
背中だけじゃなく体全体が凍るような勢いだ。
「 みつき !」
床に落としたのは卵パックでほとんどの卵が殻からでてしまい
使い物になくなってしまった・・・。
セイジュが近寄ってきて初めて、 みつき は何かを割ったのだと知った。
「・・・!」
やっちゃった・・・。
みつき の表情もセイジュの表情も曇っていたがセイジュは唇からなにやら
言葉を紡いだ・・・。
すると卵パックが宙に浮かび上がり割れてしまった卵と元に戻した。
このときだけは、本当に自分が魔界人だというのに特をした気分になる。
人間界ではそんな事はできないのだから・・・。
「セイジュ。」
「・・・何か、魔界で起きたみたいだね。」
「・・・うん。」
自分達がいた魔界で何かが起きた・・・それは魔界で生きてきた自分達にも
しっかりとそれはわかった・・・。



悪い予感は的中した。
アーシェ・・・魔王の娘がやってきたところから
ちょっとだけ楽しくやっていた自分の未来さえも変わってしまうのだから。
応援したい気持ちと、恋と始めての失恋と・・・
手放したくない人と・・・自分の運命と。
さぁ、決断の時は迫られる。



背中を、押して・・・決断を。


Suzuno Asaka
Dream Novel 2006,0930


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