みつき姉がこの家に来たのは兄貴ともっと会う前からだった。
だからか、結構俺は みつき 姉に甘えてしまう。
俺が姉貴を護りたい、護らなきゃいけないのに。




先の見えないカルボナード





「うわっ!なにやってんだよ みつき 姉!」
「は?いや、ちょっと料理でもしようかな〜ってさ。」

朝からいい匂いがするかと思ったら既に遅し。
呉でも武士でも強い みつき 将軍ともあろう
お方でもある: みつき という女性は
(無理矢理だが)凌統と義兄弟の誓いをしていて、姉でもある。

どこかの国からかきた みつき を置いたのは亡き父:凌操将軍であり凌操は
みつき を本当の子のように接してきていた。
その みつき も数ヶ月後には凌操並にえらくなっていて・・・

凌統もその父も驚きを隠せなかった。
みつき ・凌統は出会ってまだ数年。
その数年は走馬灯のように早く感じられる。



「ダメだって!俺がやるよ!」
「なんで!いいじゃない。」

厨房に響く2人の声が響き渡る。
お玉を持っていて割烹着を着てむっと膨れている みつき はにぱっと笑って
凌統の頭を撫でた。

「いいから・・・お姉ちゃんに任せなさい。」
「・・・」

みつき は凌統の頭を優しく撫でると大人しくなった凌統から背を向け
朝食の用意をした。





「うんめぇ!なっ兄貴!」
「そうだな。」
「そりゃよかった。」

テーブルの席について朝食を食べる凌統と みつき ・そして新しく呉に来た
陸遜という青年。
陸遜も来て3人は食事を楽しんだ。
みつき はまだ割烹着のままで凌統がおかわりするのをただずっと見ていた。

「ん? みつき 姉食べてないじゃん。」
「あたしは食べたから。凌統はたっくさん食べるんだよ。」
「あ?・・・まぁ、食べるけど。」

変な みつき 姉。凌統は不思議がっていたが
目の前に出された朝食によってそんな疑問は消えてしまっていた。





楽しい時間を過ごしながら凌統はご飯・陸遜は食べ終えた為か目の前にいる
みつき と楽しくしゃべっている。
凌統は食べていながらも みつき と陸遜の話を静かに聞いていた。
内容は単純で「最近は軍では陸遜はよくしてもらっているか?」とか

「凌統が悪い事をしてないか。」とか(失礼だぜ みつき姉)

幸せな・・・どこの家にでもありそうなひと時。
そのときガタリと音がして「失礼!」と大声が響く・・・
みつき も、陸遜も驚いていた瞬間目の前には呉の兵がいた。

「 みつき しょうぐ・・・!?」
「!?こら!勝手に入ってくるなよ!」

突然の訪問者に3人は驚いたがその来た兵もかなり驚いた顔をしていた。
みつき が凌統の邸にいるのはわかってはいた・・・だが、その将軍でもあろうお方が
割烹着を着ているなんて・・・。
人の邸に突然入ってきて黙っちゃいないのが当たり前で凌統の怒り声があがった。







「しっ失礼しました。」
「?何かあったのか?」
「はっ、ついさっきですが戦のことで諸葛亮孔明様がお話しがしたいとの申し出で
御座いまして・・・」
「我が師と!?」

その兵の報告に みつき も同様が隠せなかった。
勿論、自分の師が関連している以上陸遜も黙っちゃいないが、
孔明が来ているのは陸遜もわかっていた、昨日陸遜は孔明と会い
会って自分が知らなかった世界の一部を見せてもらったのだから。

「今回、陸遜殿ではございませんでして・・・その・・・ みつき 将軍だけを連れてくるようにと。」
「!・・・わかった。服を着替えてくるから待っていろ。」
「!・・・はっ!!!」

みつき の言葉がさっきとは変わっていた。
人を突き動かす言葉・・・陸遜もその みつき は見たことあるが毎回驚かされる。

「凌統、ちょっと着替えてくるからお皿洗っといてくれる?」
「あ・・・別にいいけど。」
「サンキュ、凌統。」






「ここまででいい。ご苦労。」

みつき が凌統邸を出て城へと入り呼びに来てくれた兵から離れ一人で
探そうと考えた。
「一体、ここで何を話そうというのかな?孔明殿?」
ぽつりと みつき は独り言が口から出てしってはいるが誰もいない為

別に聞かれてもどうでも良かった。
ふと、呼んだ相手を探そうとした時にふと花が目に入った。
この城にはなぜかこんなにも綺麗は花を咲かせる、
みつき はゆっくりと屈み
一番目に入った、一輪の真っ赤な花を手の中で眺めた。

「貴女が花を愛でるなんて・・・何年ぶりですか?」
優しい顔をしていた みつき の顔が武将の顔に戻っていた、そう・・



「呼んだ身分なのに随分と遅いではありませぬか?孔明殿。」
赤い花から手を離し みつき は後ろで絶対笑っている声を
している男を瞳に迎え入れた。

「そんなに待たせてしまいましたか?」
はて、と自分が悪くないように取る男:諸葛亮孔明に みつき は
かぁっと顔を赤くして「そうだ!!」と声を荒げた。
その みつき の顔をみて微笑んでいた孔明の顔がもっと
微笑みを深くしているのを みつき は感じ、逆効果だという事が頭に入ってくる。

「すみませんでした、 みつき 。」

孔明の謝った声に みつき は孔明を見ない。でも解る、
苦笑いしている顔が・・・思いつく。

「・・・なんのお話しをしようというのですか・・・」
「私と、会いたくはなかったのですか。」

残念、と苦笑いする孔明に みつき は未だ目を合わせ様とはしない。
「まさか、貴女が陸遜・・・孫呉にいるとは、思いもしませんでしたよ。」
「・・・私も、」







孔明殿がいるだなんて、思いもしませんでしたよ。

会いたくないと思っていた貴方に。










「 みつき 姉!ここにいたんだ!」
城内に戻った みつき に近づいてきたのはにっこりと笑いながら走ってくる凌統で
その後ろで凌統を追っている陸遜に目がやっと認識し始めて
みつき はにっこりと笑った。
その隣には陸遜の師:孔明がいて陸遜は孔明の所へと出向いてしまう。

「なっ兄貴!」
「いいんだよ。陸遜のお師匠だ・・・」

みつき は凌統の腕を掴んで陸遜と孔明の後を追わすのを止めさせた。
凌統はむっとした顔をしていて みつき は笑ってぎゅっと
みつき に背を向けてブツブツと言っている凌統を抱きしめた。

急に背中が温かくなったのに驚きを隠せなかったが流石、というべきか
みつき は一応女性でも武将。ビクともしませんでしたのだ(笑)
しかも此処は城内だ。兵達が みつき が抱きついた瞬間一気に
この2人に視線が集中してしまう。



「ちょっ・・・!恥ずかしいだろ みつき 姉!」
「〜〜!!凌統大好きー!凌統!!」
「どうしたのです? みつき 、凌統も。」
「!孫権・・・いや我が君、それに周瑜!」

目の前には孫呉の主君:孫権といつも眉間に皺を寄せている周瑜が隣にいた。
きょとんとした孫権とちょっと驚いた顔が出ている周瑜・・・。
みつき もその2人が目に入った瞬間、遅かったのである。
「孫権殿!周瑜ー!お前達もあたしは大好きだー!」
ぎゅぎゅっと みつき は男3人を抱きしめようとしたがそれは無茶なことだが
みつき の超好意的な行動にふっと笑った孫権はそっと みつき の肩に手を置く。
ふわりと孫権の香りが みつき と凌統の鼻にかすむ。







「私も・・・ みつき のことが大好きですよ。」

その言葉を聞いた瞬間 みつき の笑い声が消え、凌統の背中が急に重くなるのを
凌統は感じた。
・・・一瞬、何が起こったのか解らなかった。

「!? みつき 姉! みつき 姉!!!」

異変に気が付いた凌統はイヤな予感がした。それは自分の親父の時と
同じで背中・顔・・・身体中から血液というものがなくなる感じだ。
すると「平気だ、」と平然に答える周瑜にわからない凌統は怒りを感じた。
なにが平気だ、・・・と。

「凌統。 みつき は寝てしまったのですよ。」
「・・・・は?」







****


気が付けば夜で みつき が瞳を開けた時には天上を見て
すぐ凌統の邸だとわかった。
ゆっくりと起きてみると「みつき姉。」とずっと自分が起きてくるのを
待っていたのか、イスに座っていた凌統が言葉を漏らした。

みつき は自分が城内で「大好きだー!」とか叫んでいる記憶はあったが
その後がさっぱりだった、するとはぁっとため息を漏らしたのが凌統・・・。
「みつき 姉。酔っ払いすぎだぜ?孔明様から酒飲んだだろ。」

「・・・は?孔明殿から?」
みつき は凌統の言葉に?マークで返してしまいその言葉がよくわからなかった。
「(飲んだっけ・・・?)」
よく、覚えていなく みつき は額をぎゅっと手で押えて
考え込んでは見るもののまったくもって記憶がぶっ飛んでいて
よくわからないが正直なところだ。

みつき は立ってもう夜になってしまったのか、ごめんね凌統・・・そう言おうとした時
とんっと みつき をベットの前で座らせて凌統は みつき の目の前に来てぎゅっと みつき を抱きしめていた。
目の前が暗い・・・でも安心できていた。
みつき は凌統よりも5・6CMほど背が高い、こうしないと みつき よりも大きく見えないのだ。

そんな凌統な考えに みつき はふっと笑った。

「あのな、 みつき 姉!俺ら兄弟なんだぜ?!」
「そうだね。」







いつも言ってるじゃない、『俺達は固い絆で結ばれた兄弟だ』と――――



「もう他人じゃないんだぜ!・・・もっと みつき 姉の事知ってもいいと思うんだよ!」
「・・・そう・・・」









そうだね、そうだね。
言おうとした言葉の続きが みつき の言葉にならず唇だけが動く。
パクパクと・・・そんなこと、凌統はわからない。
みつき は凌統の背中に手を回してぎゅっと力強く握った。

「・・・くっ、」
「 みつき 姉、俺は姉貴の味方だから――――」

泣いていいから。
といわれた気がした・・・しかし、 みつき は凌統の背中に回していた手を離し
みつき は笑って「大丈夫」だと・・・
今にでも泣き出しそうな顔で凌統に答えた。





今の自分じゃ みつき 姉を救えない。
助けられない―――――
力があれば、もし・・・今のままでいたなら・・・
一生大切な人を護れない。
取り戻せなくなってしまうー――――――――



「(待ってろよ、 みつき 姉。)」




庭にある真っ二つに割れた石の前で凌統は剣を握る。

カァァ・・・ーン竹を割ったような音が夜に一つ、泣いて消えた。


Suzuno Asaka
Dream Novel 2007,0524


prev next
bookmark back


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -