はぐれ町の大通り、桜が綺麗に咲き誇っていて上を見れば
御天等さんが上から照らし、上を見上げれば同時に綺麗な青空が
とある2人を心を浮き動かせていた。



大江戸鼠考 その壱




「ゴエモンさんいるかしら・・・」
「大丈夫でござるよ、ヤエどの。」
そう言って二人が向かう先がとある男の家へと尋ねるためにここにきたのだ。
しかし、まだまだ人通りが多いこの道に黄緑色の髪をなびかせながらも
歩いている女性と、ちょんまげが一番に目立つカラクリのサスケが
ふと目の前にあるおみつが働いている茶店に目が留まった。
「・・・ゴエモンさんにお土産でも買っていく?サスケさん。」
「いいでござるな!そうするとおみっちゃんどのはいるんでござるか?」
「うーん・・・今日はお休みみたいだよ。二人とも。」

そういって聞こえてきた声の主に二人がえ?と互いに見て
何が聞こえたんだ?と不思議な顔を互いにみせてしまっていた。
「・・・あれ?」
「・・・優太郎・・・どの?」
「ヤエちゃんもサスケも元気だな。」
よっと、軽い感じの返事でいう目の前の男は二人とは反対に笑顔であった。
紫の髪の毛にアメジストの瞳、今日も少し長い髪の毛を束ねていた。
いつもの・・・
「優太郎さんびっくりしたわ。」


まだ朝四ツよ?と変な心配をされていて少々不安なヤエの答えに
苦笑いしかこみ上げてこない。
「俺はいつも寝ているだけじゃないんだよヤエちゃん。」
「ほぉ!では優太郎どのは何をしていたでござるか?」
「朝飯くって、・・・とりあえずぼけっと散歩したりとか・・・かな。
で、小腹がすいたからこっちにきたんだよ。」

と説明的に答える優太郎は苦笑いをしながらも二人の質問に答えていた。
「―――そういうお二人さんはどうしたんだ?」
「ゴエモンさんの所にちょっと訪ねる用事があってね。」
「ついでにと思ってお店で茶菓子でもと思ったんでござるよ。」
そういって嬉しそうにいうサスケ(のちょんまげしか見れないが)が
ぷくく、と優太郎の笑いをこみ上げた。
目線をヤエに戻すとそうか、と笑って答えた。
「ならいってご覧さ。俺はまだ用事があるからさ。」
「そうなの?」
「それは残念でござる。」
「まあ、ゴエモンがいたらよろしく頼むよ。」


そういって去っていった優太郎が二人にはなぜか青空のようなまぶしいものに見えていた。









「ヤ、ヤエどのどうしたでござるか?」
「うーん・・・なんか・・・優太郎さんが一日何をしているのかとか・・・私考えたことがないのよ。」
「・・優太郎どのの・・・でござるか?」

そういえば、とヤエにふと頭に残ったのは先ほどであった優太郎だった。
彼は何を一日する人なのだろう、とか・・・たまに会えば笑って楽しい人とか
しか考えたことがないからだ。
「(仲間だと思ってから、・・・いえ、その前から考えたことがなかったのかもしれない)」


一応秘密特捜忍者として、一番情報が早いと思ったのに、とかちょっぴり情報が疎いのかもしれない
と思ってしまっていた。
「ゴエモンさんのところに行くのは後にしましょう。」
「!」
「ちょっと気になることがあるの。」
「きっ気になること・・・でござるか?」
ごくりと、まるで重大な秘密を明かすようなヤエの言葉と表情に圧巻されているサスケに
ヤエはちょっと言い過ぎたかしら・・・とか思いつつも屋根の上からサスケを抱いたままはぐれ町を
歩く優太郎をじっと見ていた。













昼九ッ(11:49ごろ)優太郎を追跡?してから数時間がたとうとしていた。
はぐれ町をとたとたと歩いていると子供たちがワラワラと集まって、優太郎といっしょに
なにやら面白いことをやってのけたりしていて、サスケは面白そうでござるとポツリと
呟いたりしていたが、ヤエ本人からしてみれば、彼はまたまた不思議なことをする・・・と
仕事モードの目に映っていた。


「優太郎はんじゃおりまへんか?」
「お、エビス丸。」

更に彼を追跡してから数時間後、誰かと接触を図ったようだ。
接触を図ったというよりも偶然に出会ったという感じではあるのだが・・・
自分の仲間でもあるエビス丸に出会ったようでホニ!とびっくりしていたエビス丸に優太郎本人は
面白そうな顔つきでエビス丸をみていた。

「ここで何してはるんでっか?」
「ちょっと散歩がてら。お前は?」
「わてはお昼でもとおもったんですわ。どうです?優太郎はんも。」
「あー・・・俺はさっき食っちまったから・・・。」
「さいでっか!そりゃ残念ですわぁ・・・。」

悪いな。と眉間に皺を寄せて本当に残念そうにしている優太郎がなんともいつもの
優太郎であることになぜだかほっとしていた。

「そういえば、ヤエちゃんとサスケがゴエモンの家に行ってるみたいだから
行って見ればいいんじゃないか?」
「そうでっか!ならいってみまひょ。」
「俺も後でゴエモンの所に行くし・・・その時にまたな。」
「ほな、気ぃつけてな優太郎はん!」










次に来た場所が、なにやらはぐれ町のとある家。
それはヤエもサスケも不思議な感じを漂わせる感じの家で
戸を叩いた瞬間に出てきたのは若い女性であった。
しかも行き良いよく4・5歳の子供が出てきて優太郎をみて嬉しそうな表情を浮かべている。
「遅くなったな坊主。」
悪かったな、とくしゃくしゃと少年の黒い髪の毛を乱暴に、だがその撫で方には
優しさが含んでいたのか、少年はにこりと笑っていた。
「優太郎さん、よくいらっしゃいました。」
ささ、こちらへ・・・と微笑んだ女性に笑顔に答えるように入っていくが子供たちが優太郎の後ろを
押してすぐ家へとはいっていってしまった。

それを屋根からみていたヤエとサスケだったが、サスケからすればその女性は
見たこともない人でもある。
対して、ヤエからすれば一つ、浮かんだ答えが口からこぼれている。

「まさか・・・、優太郎さん・・・子持ち?」
「・・・・!ヤ!ヤエどの!?」
「あ、いやサスケさん?」
「ああああああ、優太郎どのが!・・・優太郎どのが!?」
「あ・・・サスケさん!声が大きい。」

混乱を起こしているサスケを黙って貰おうと必死になっているヤエたちが
いる場所が・・上だというのを半分忘れているようなきがするのだが・・・。
やっとサスケが平常心(というか暴走ストップ)を取り戻せたみたいで
その家の屋根裏に進入すると覗けるように小さな穴を開けて
サスケの分の小さな穴と自分が覗けるようにした小さな穴を作ると目を近づけた。







部屋には、先ほどの子供とその母親らしき女性が優太郎をよんで嬉しそうにしていて
優太郎も優太郎で初めてこの家に訪れた、というよりかは、もう何回もここに来ていることが
雰囲気だけでサスケとヤエはわかったようだ。

「ごめんなさいね優太郎さん。」
「いいんだよ。・・・お、ありがとう。」

だされた湯のみににこりと対応していると先ほどの男の子が
瞳をおおきくしながら、期待のまなざしを向けている。
その瞳をみて優太郎は引かれる様に、彼をみた。

「優太郎!」
「―――どうしたよ、ん?」
「あ・・・あのさ・・・」
もじもじという少年の言葉が言ってもいいのか、迷っているのが
わかっていた。だが、優太郎は何も言わずにただ黙って笑うだけ。

「・・・・っはは、待ったさせて悪かったな。」
しょうがないな・・・という観念したのか優太郎は両手をあげて後ろに隠していた
あるものを目の前にだした。
ほら、約束のもんだ。と笑って少年の紅葉のような手に乗せたのは
笹の葉でくるまれていた4つほど入っているおはぎ。

そのおはぎを見ると少年は嬉しそうな顔をして母親のほうへと
バタバタとさせて嬉しさを表現していた。
「ありがとう優太郎!すっげぇ食いたかったんだ。」
「だろうな。男と男の約束だもんな。」
「あぁ!―――母ちゃん食っていい!?」

「はいはい。」






――――

「(優太郎さんがもってるおはぎって・・・)」
屋根裏にいたヤエはふと朝方に出会った優太郎を思い出していた。

それは、優太郎と今日あった茶店前の出来事。



『ほぉ!では優太郎どのは何をしていたでござるか?』
『朝飯くって、・・・とりあえずぼけっと散歩したりとか・・・かな。
で、小腹がすいたからこっちにきたんだよ。』



小腹が本当にすいていたから茶店にいったのか、それともこの少年のために
茶店で買ったのか・・・・ヤエが朝から優太郎が茶店にいた理由が
ゆっくりと紐解かれようとしていた。

「(優太郎さんの家族だとしたら・・・明らかに不自然だわ・・・)」
はぐれ町滞在するようになったのが確か3年前。
その前から妻子がいる可能性もあったが、だったらなぜ別居しているのだろうか。
優太郎の家はゴエモンの家から少し離れた場所である・・・ここからだと正反対に位置するからだ。

ちょっと落ち着かなきゃ・・・・
ふといきをついた瞬間、ぎしりと屋根裏の板がぎい、と鈍い音を鳴らした。
その音に過剰に反応して振り向いたヤエが見たのは、サスケがこちらへと近づこうとした時に
鳴らし板に運悪くサスケが鳴らしてしまったことだった。

その音に下にいる女性と優太郎も気がついて上をみあげた。


「・・・優太郎さん・・・・・」
心配しそうな顔で立ち上がった女性と目を凝らして疑視している優太郎。
優太郎にしては鞘に収まっている剣を抜こうと構えている状態だった。




やはり、サスケをおいていったほうが良かったのだろうか。
だが、サスケに注意を施すべきだったところだ・・・なぜこのときに限って
心配をしていなかったのか・・・後悔が脳に溜まっていくのを感じるようだ。



しんとした、緊張がほとばしる空気の中、ははは!と突然笑ったのは
立ち上がって上を見上げていた優太郎本人だった。


「なんだ、大きなネズミでも通りかかったんじゃないのか?」
「・・・・優太郎・・・さん?」
「なんだよ優太郎、泥棒かもしれないじゃないか。」

鞘に手をかけていた優太郎だったが緊張した顔が抜けていて子供が
不満そうな表情で優太郎をみつめた。
「きっと、夕方に近づいてきたから台所にある食い物をみに行動したんじゃないのか?
泥棒だとしてもまだ何もとられてないだろ?」
たった音がしただけじゃないか。といいながらも優太郎は笑って天井に手をかけた。



しかい、そこには何もいなく、いるのが小さな白いネズミ。


「ほら、ネズミが・・・2匹。」

2010.3.8


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