森奥、忍術学園・・・極月の日になってからは忍たま・くのたまも
バタバタとしはじめる・・・。
忍術学園にも冬は学校に残るものもいれば実家に帰るものもいた。
当然ながら宿題は山のように出るのは当たり前と言えばまあしょうがないとしよう。
五年の忍たま長屋では半分は帰省組と居残り組とでしっかりと
別れていた。
帰省組みは居残り組みにお土産を、と念に念を押して挨拶を交わしていた。
―――もう数日したらお正月、と小さくため息をつくのは五年ろ組の不破雷蔵である。
雷蔵の顔を借りている三郎は隣で雷蔵のため息なんか聞いてしまったら
なぜ?と聞きたくなるのはしょうがないことだ。


「どうしたんだ雷蔵。」
「いや、僕はどうしようかなって・・・」
「?帰省するのか?どうして。」
「どうしてって・・・」



雷蔵だって両親と会いたいのもあるが思い出すのは
忍術学園のくのたまでもある赤坂みつきがいるからだ。
彼女とは一年前から付き合っていて今年は自分が残るか、それとも
帰省するかで悩んでいた。

彼女・・・みつきは委員会はなんとあの「体育委員会」であり
夜中までいけどんマラソンに連日で付き合っていたそうだ・・・
だからかみつきとはあまり話す時間もなかったので究極の選択肢で
雷蔵は迷っているのであった。
プラス、自分が優柔不断なセイでもあるのだが・・・
「(去年は実家に帰ったって行ってたしな・・・今年もかな・・・・)」

その事を三郎に伝えて見ると、それはそれはぽかん、という単語が
似合うくらいの顔をしていて雷蔵は「三郎?」と声をかけた時
三郎が大きく・盛大なため息をこぼしたのだ。
「え!?さっ三郎?」
「いや、深刻というほど・・・深刻じゃ・・・。
あ、いや。雷蔵にとってはかなりの深刻な問題だ。」
さらりと本音が三郎から出たのはスルーするとして、三郎が
考えているとからりと障子が開いた。
そこにはい組の生徒でもある久々知兵助だ。
兵助は確か帰省する組だったはず、そんな事を考えいる二人だったが
兵助の言葉を聞いてそんな考えなんてふっとんでしまった。


「あぁ赤坂さんは帰省しないって。学園に冬休みはいるらいしいよ?」
「!ちょっと待て。なんで兵助が知ってるんだ?」
驚いているのは雷蔵よりも先に鉢屋三郎のほうだった。
まさかみつきを狙っている一人!?とも思っていたが当の本人はなんで
三郎や雷蔵がそこまで驚くのだろうとしか考えていなく
あっさりと其のわけを教えていたのだった。
その全ての理由を聞く前に雷蔵はどこかへと去っていってしまったが・・・。
三郎はその話を聞いて驚きを隠せなかった。







雷蔵は保健室に滑り込みをするかのように入ってきた。
保健室の新野先生はいなく、いるのは保健委員長の善法寺伊作で
伊作は「あ!」と声を上げると伊作の後ろから出てきた黒髪の
顔が土でまみれている少女が驚いた顔をみせた。

「あ、雷蔵・・・」
「みつきちゃん・・・だっ大丈夫?!」
混乱している雷蔵はあたふたとしていてみつきは苦笑いをこぼしていた。
腕の所が滑ってしまったためか擦り傷が出来てしまったらしく伊作が
綺麗に包帯を撒いてくれている。直接キズを見てはいないのだが
包帯の範囲からして大きく擦りむいてしまったのがわかる・・・。

彼女を探して居る最中、わらわらと門の前でざわめきが聞こえた為
雷蔵はいって見るとそこでは保健委員があたふたとしていて少しだけ
緊張感が漂っていた。
何が起きたんだろう、そう思いながらも歩くと雷蔵の姿をみた同級生が
早く保健室にいけよ!と声を上げた。
「赤坂が怪我したんだ!」
その声を聞いた瞬間、まるで足元が崩れる感覚に陥りそうになったが
それよりも先に足が勝手に目的地まで走り出していたのだ。

保健室には体育委員長でもある七松 小平太がみつきの髪の毛をくしゃくしゃと
撫でていて少しだけ目が赤くなっていた。

「不破!悪い。私がみつきに無茶なことをいったから。」
「すいません七松委員長。もっとしっかりしていれば。」
同時に七松の声とみつきの声が重なる。
七松とみつきは顔を見合わせると七松は笑い「とりあえず先生に報告しにい行ってくる」
といい、保健室を後にしたのである。


「雷蔵・・・怒ってる?」
「・・・怒ってないけど・・・悔しいかな。」
保健室には善法寺も先生に報告にいったらしく、今居るのはみつきと雷蔵だけだった。
雷蔵が目の前にいあった布でみつきの頬についている土を拭うとみつきが
そんな事を言うものだから雷蔵は当たり前、という様な口ぶりであり
みつきはぽかんとしてしまった。
「嫉妬?」
「・・・かな、ごめんね。」
みつきが怪我をしたとき、委員長である七松小平太が一番先に抱きかかえ
保健室へといったときいた。それはもう必死な顔をして・・・
雷蔵とみつきが恋仲と知らない者からは付き合っているのではないか?
とまで小さな噂になっていたのだ。

そんな事で、嫉妬なんて駄目だよね・・・そういうと彼女みつきはそうでもないよ。
と布で頬を拭ってくれた雷蔵の手を握りそう呟いた。





「みつきちゃーん!手紙届いてるよ。」
「!あ!ありがとう小松田さん。」
いい雰囲気の中、扉が開いたと思ったら事務員の小松田さんが現れ
雷蔵とみつきは手をさっと下げるた。
小松田さんは?マークでこちらを見ていたがみつきをみてニコニコとまた笑顔を見せた。
その手紙をみてみつきも笑っていて雷蔵にちらりとそれを見せる。
「これは?」
「私の母から。体調崩して+怪我して寝込んでそちらの方まで
行けそうにないからっていう手紙を団蔵くんの馬借で届けてもらったの。」
その手紙の返事ね。とにこりと笑う彼女は、流石、くのいちのたまごだと思った
雷蔵でした。
でも引っかかったのか「なんでそんなに早いの?」とみつきに問うと
みつきはにこりと笑った笑顔をずっと貼り付けたままで
何も言おうとしない。
「(事前にそうしておかないと雷蔵と居られないもの)」
嘘を付く事にみつきは慣れたご様子。

母からの承諾の文にみつきは安堵の表情を浮かべた。
その意味を良くわからない雷蔵ではあったものの、とりあえず今年は
みつきと一緒にこの学園で正月を迎えるとわかると悩みも少しは
なくなってきていたのだった。







残った忍術学園の者たちはやはりと言いいながら灰色の空を見上げてそう呟いた。
雪だ。その前からもっと降るんじゃないかと思っていたが今年は雪が出遅れたようで
食堂のおばちゃんも新しい年に向け朝からすごい忙しそうである。
一年生も残っているものもいて子供らしく雪合戦をしているのかきゃっきゃと
学園内に声があがる。
みつきもおばちゃんの手伝いをしようと考えていたがいかせん、まだ怪我が
治っていなく静かに自室で休んでいて暇つぶしに本を読んでいた時だ。
「みつきちゃん?」
「!」
くのたまの部屋に侵入してくるなんて、色んな意味で命知らずの人。
だが運よく同室の子は故郷に一時帰っている為、そんなにお忍びせずとも
いいのだが・・・上の天井をみあげるとかたりと音がし、下へと落ちてきた。
「雷蔵!どうしたの・・・」
「うん、一緒に大晦日いようと思って。」
今日が大晦日、夜になれば新年である。

結局みつきは部屋の片付けも、体育委員会の
報告日誌をかいていたらすっかりともう今年が終る時になっていたようだ。
あと数時間で新年なんて、今年も早く感じるなーなんて感じていると
雷蔵が笑ってこちらを見ていた。
手を差し出されたから差し出して見ると彼がぐいっとひっぱってくるから
それに驚いて倒れてしまった。
しかし畳に顔をぶつける事もなく、雷蔵に抱きしめられる形になっていて
雷蔵の暖かい身体に包みこまれているのがみつきは遅くながらも判り
顔が真っ赤になるのを見られなくて少々ほっとしていた。
「らいぞ・・・」
「みつきちゃん。今年もありがとう。」
「・・・わっ私こそ・・・」

抱き閉められている暖かさに身を寄せながらもみつきは
顔を雷蔵を見たいと思い顔を上げた。
「私、雷蔵が好きよ!」
にかりとまるで太陽みたいな笑顔をみて雷蔵はぽかんとしていたが
真っ赤になって下を向いてしまった・・・
あれ?とみつきが不思議がっていたが雷蔵も顔を上げて
みつきと同じように笑った。
「うん、僕も・・・それと・・・今年もありがとう。」



今年もよろしくね。








新年の瞬間までみつきも雷蔵も二人で色々語っていたが
思い出したのか雷蔵はみつきの手を引いて食堂へと足を運んだ。
食堂では在校生達がおばちゃんの御飯にありついていて豪勢な正月を
皆で楽しみ朝まで楽しんだとか・・・・

「(今年も、一緒に)」
「(君と二人で)」




新たに始まる年をお祝いをしよう。







2010.11.23/四季 様に提出。

あとがき。

素敵なお題だったので書いていて本当に楽しかったです。
牧村様有難う御座います!企画に参加させていただいて
ありがとうございました。


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