*少し無表情のヒロイン:髪の毛が妖怪のせいで
切られてしまったときの各々のリアクション
(悟浄→八戒&悟空→三蔵・・・後日談に→ヘイゼル)



三蔵一行として認知されてからは西へ向かえば妖怪からの
喧嘩上等卑劣なことも多かったりしてみつきは日々体力向上しているのではないか
と錯覚するようだった。
といっても逃げる行為もみつきの中では少なからずありその際は
静かに岩陰に隠れるというのもしばしばであった。

・・・と言う風に岩陰に隠れていても妖怪に見つかることがあるようで
後ろから視線を感じたみつきは岩陰から出た瞬間耳の尖った男、妖怪が
ナイフをもって攻撃してきた。
頬にナイフがかすり、研がれたばっかりなのかスーッと頬に
流れる血の跡。
腕で血を拭いながらも容赦なく妖怪はみつきに攻撃を加え
後ろから羽交い締めにされた。
無論女が拘束されるのだからその力の差は歴然であり
羽交い締めから綺麗に一つにまとめられた髪の毛を男は手で
強く握ってきた。
その行動にいち早く気がついたのは八戒であったが時はすでに遅く
他の連中を片付けていた手が止まった。

「ギャハハ!!!この女の命が惜しければさっさと経文を渡すんだな!!」
「・・・とても古い脅しのテンプレートですね」
その言葉を聞いた八戒は小さなため息を漏らしながら
哀れむような顔でその男を見る。
それに賛同するように他にも戦っている悟浄や悟空なども
そーだそーだを小さく声が聞こえ、みつきにも耳に残りそれは
その妖怪にも当然意見が耳に残っていたようだ。

少しだけ気が緩んだ、次の瞬間
みつきの腰に忍ばせておいた小刀はみつきの手に渡り
握られていた髪の束をめがけて空を切る。
髪の毛の束を強く握っていた男はよろけ、みつきはその刀を使用し
男の懐に身体を強く押しつけた。
男は意識が遠のき、みつきの顔は無表情ながらも小さなため息を
はきながらも現在進行形で戦闘中の彼らの元に足を運んだ。


これが本日午前中の出来事である。


***(悟浄)

「すごいバッサリ切っちゃってまァ」
「・・・命と髪の毛どっちが大事ってことになるかと」
「素直に助けて欲しいっていやァ普通に助けるっつの!」

悟浄と同じ部屋になったみつきの顔は特に罪悪感という事はなく
淡々としゃべるモノだから悟浄も呆れかえっていた。
部屋に取り付けられていたお茶をみつきは2つ分出しつつ
お茶を悟浄に渡す。
悟浄の顔は引き気味の笑顔でありながらもみつきは本当に表情を変えないのは
仏頂面という言葉とはちょっと違うのだが・・・
綺麗な艶のある長い髪の毛は綺麗でもあったと悟浄はよく褒めていて
たまに街に繰り出したときにはヘアトリートメントを時々プレゼントしている事実。
まあ、時間が暇な時は手先が器用な八戒がよくヘアアレンジを
施しているのをみるのも楽しかったのだが、それも数ヶ月以上ないのだと
思うと少し肩を落とすような感じだ。

「あとで八戒が髪の毛整えてくれるみたいだから、部屋でるね」
「りょーかいりょーかい」
自身で戦闘中に切ったせいで短刀のギザギザも相まって
かなり変な切り方をしているようでみつきも少し気になるらしい。
・・・流石にそこまで無頓着ではないようで悟浄は少し
申し訳ないと思っているのか、みつきの眉が少しだけハの字になっているのも
みて小さなため息をこぼしてしまった。


**(八戒&悟空)

「さて、みつきのリクエストはありますか?」
「だいぶ切っちゃったもんな、みつき」
隣の部屋に邪魔してみれば今日の相部屋の二人がいた。
八戒と悟空である。八戒はみつきの顔を見て早々腕を組み
イスに座らせたみつきの髪の毛をみる。
そして悟空もマジマジとみつきの顔を見ていてとてもじゃないが落ち着かない。

八戒の手には髪の毛を切るためのハサミと竹で作られていた櫛が置かれていて
櫛に髪を通しても絡まらないみつきの髪の毛に少しだけ悟空は感動の
声が聞こえた。
しかし、いつもよりも20cm以上切ったみつきの髪の毛の通りは
いつもよりもかなり早い。
櫛をとく作業が終わるのがまたすこし八戒は切ないようだ。
「みつきの髪の毛でいろんな髪型をしてみようと思ってたんですが、残念です」
「八戒そんな事してどーすんの?」
「今じゃ作業動画UPして収益を得るという方法もあるんですよ悟空」
・・・ここにyout●beなんてあるのか、と現代っこのみつきは思ったが
軽やかにスルーを決め込んだ。

「後ろがかなりガタガタしてるから整えてくれるかな」
「わかりました。悟空、鋏を使うのでちょっと下がってもらえます?」
「わかった!」

そっと悟空は一歩引くとかなり慣れた手つきで八戒はみつきの髪の毛をいじり出す。
ガタガタの段になってしまっているみつきの後ろ髪を丁寧にカットしていき
鏡をみつきに持たせながら作業が進む。

以前もみつきが妖怪に傷をもらってきたときも前髪が変な感じに
切られてしまい、本人で直そうとしたがいかんせん手先が不器用の
せいもあいまって八戒はひやひやしたことを思い出す。

「(今回はかなりショートになってしまいますね)」
「みつき、八戒!ちょっと俺外出てくる!」
「「いってらっしゃい」」

二人の声が重なり、悟空はまるで兎の如く走って行ってしまった。


数十分後には大分後ろ髪は綺麗に整っており
みつきもほお、と顔には出していないが感心しているのが見て取れる。
八戒も流石に綺麗に整えられたことに満足しているようだった。
「八戒の手は魔法みたいだね」
「恐れ入ります」
「ありがとう・・・助かっちゃった」
口角が少し上がるみつきの顔みて本当に表情が豊かになったと
改めて実感したときだ。
扉が勢いよく音が鳴り、そこには息が上がった悟空がいて
その悟空の手に持っているのをみて八戒は笑みを深めた。

「みつき!これ!!」
「・・・帽子?」
手に持っているのはどこからか買ってきたのか灰色の色をした
キャスケットだった。
みつきの頭に被せると鏡をみた。
・・・キャスケットのおかげかみつきの後ろ髪が気になることはないのだろうと
悟空なりに考えているようでみつきの瞳が少しだけ驚いた。
服装にも似合っていてまた印象が変わる。
「助けられなくてまじでゴメン!」
「・・・いや、悟空もみんなも戦ってたし」

別にそこまで悲観してないんだけど、と思っていたが
その言葉を飲み込み、みつきの思っている以上に悟空は
バツの悪そうな顔をしている。・・・まるで心配している子供のよう。
「ありがとう、大切にするね」
「!」
ほのぼのとした空気が流れ、みつきもキャスケットを気に入ったようだった。
「さて、とりあえず綺麗に整えられたので夕飯の買いだしでもしましょうか」
八戒の声にみつきも悟空も賛成したのだった。


***(三蔵)

「ちょっとは見れるような髪型になったじゃねェか」
「八戒の努力の賜だね」

夜の買い出しに行こうとしたが八戒と悟空から三蔵の所で
待ってて欲しいと言われてしまいありがたくその好意を受け取った。
今回の三蔵の部屋は一人であり、扉を開ければ新聞を読んでいる
三蔵の姿があった。
イスに腰掛け、新聞を見ていた視線は扉の音に反応してか
ちらりと菫色の瞳がこちらを向いた。
来た相手がわかるとまた目線は新聞に移ってしまったが・・・。
その様子にみつきは特に不快に思わなかった。
何も言わないという事は入って良いという意味も理解し
扉を閉めてテーブルを挟んだもう一つのイスに腰を落とした。
マルボロの匂いが立ちこめ、新聞紙の擦れる音が耳に残る。

外はまだ人で活気付いているのか子供の声も混じって聞こえており
窓を見ていると彼がいってきた言葉は先程の髪の毛のことだたった。


「悟空と八戒は?」
「二人とも食材を買いに行ったよ」
悟浄は同じく部屋にでもいると、と付け足すとアイツの事は
聞いてねえと鼻で笑ったような言い方にみつきは肩を落とした。

「髪・・・少しは目に入らなくなるな」
「戦闘の時は確かに入ってたからね」
目に、みつきの手は自身の髪も毛に伸び、いつもは長く艶やかな黒髪が
生えていたが今遠目から見れば外見的に男にも見えなくもない。


だが、ちょっとは寂しいのかもしれねえな。
と小さく三蔵が言った言葉がみつきの耳に届いたのか、幻聴なのではないか
と目を見開き三蔵を見てしまった。
互いの菫色の瞳が交わったが三蔵の顔は変わることはないし
目をいつも以上に驚きに満ちていたが彼のその変わりない素振りに
言葉にはせず、みつきは一度目を閉じ・・・また目を開けると彼は新聞を読み終えたのか
こちらにマグカップを差し出してきた。
「茶、入れろ」
「・・・はいはい」
そのマグカップを受け取りみつきは一度部屋へと出て行くと
余計な事は言うもんじゃねェな・・・と頭をがしがしと掻く三蔵が
いなかったとかいなかったとか。





**後日談(ヘイゼル)

「あれ、ヘイゼルさん」
「!みつきはん!?どないしたんその髪型」
久々にあったと思ったら蒼い瞳に綺麗な顔立ち、西洋の服が似合う
銀髪の男はみつきの顔を見た瞬間肩を抱きブンブンと彼女を揺らした。


その突然のアクションに驚きながらも彼はもっと驚いているに違いない。
彼の後ろにいるガトはそんな彼を止めることもしなくただずっと彼女と
彼の行動をみているだけである。



彼、ヘイゼル・グロースはいつも元気だなぁとみつきは
頭で考えながらもヘイゼルが揺らすのをやめるまで無口であった。


「モンスターのせいですか・・・」
「いや、もう数週間前の話ですし、そこまで気にして」
「ないなんて言わせんよ。女性は髪が命って言うはるやろ?」
ガトには一度宿に戻ってもらい、少し話をしたいというヘイゼルの言葉に
賛同したみつきは村の中にあるパブに足を運んだ。
人は多く騒がしいながらも人に紛れるのには丁度良い。
偶然にも窓側の席に通されて話しはその髪の毛の話になってしまった。

「痛かったとちゃいます?」
「まあ、三蔵達と一緒にいれば必然的に妖怪には出くわしますし」
「あんなに男がいてもみつきはんを守れないなんてしょ〜もないわ」
「・・・あはは」
面白いこと言うなあ、なんて思ったが白い手袋の上からみつきの手を
痛かったやろ・・・と触ってきた。
彼のその行動にむず痒いとか思うが現代の男達のような
「性的な意味」ではないと感じるため嫌悪感はない。
「うちと一緒に帰る方法探した方がいいんとちゃいます?」
「そう言っていただけるのは山々なんですが、あれはあれで
楽しく旅してるので」
丁重にお断りします、と頭を深々と下げると彼は
困ったような笑顔を向けてきた。
「・・・さよか、ならしょうがないな」
しょぼんとする司教に表情を少しだけハの字にするみつきをみて
少しだけ満足したのだろうか、彼の顔はまたにぱりと代わり
パチンとヘイゼルは指を鳴らした。

「でも・・・ええもんみれました」
「?」
「みつきはんは短いのも似合うのわかって、うち眼福やわ」
モンスターに教えられたのはちょーっと嫉妬するけどな。と
ヘイゼルは一言添えて注文していたドリンクが来ると口を付け
みつきも目の前にある葡萄ジュースに手を付けた。
ヘイゼルの言葉は魔法の言葉をよく出すと思った・・・彼が私を褒める度に
甘い砂糖菓子に自身を付けられる感覚に、幻覚に襲われるようだ。





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