**受験中の彼女からバレンタインをもらって
意外にも純情な交際を続けている悟浄。



荒磯高校に自慢の彼女がいる。
艶やかなショートカットの黒髪にアメジスト色の綺麗な瞳をもつ女:みつきは
どこに嫁をだしても文句の付け所がない感じであり
その彼女の指には12月のクリスマスに渡した安い指輪をしていた。


「高い指輪じゃなくていいのかよ」と一緒に高い有名なブランド店に
いってみたら彼女はきょとんとした顔で「私はこういうのがいいな〜」と
見せてくれたのは2つで1万円もしない素朴な指輪である。

聖夜は男女の営みだってあるはずが、恐ろしいことに
まだ致していない。

彼女は決心をしてくれていたみたいだが
受験の真っ只中にこうして会えるだけでも十分であり
卒業してからでもいいかな、なんて思うのを同期の鷭里に
言ってみれば「女は無条件で抱きそうなお前が」と言われ頭を殴ってやった。

最初キスしたときはそのまだ慣れない感じがよくて、慣れてきて
そろそろと思い身体を引き寄せて深いものにしたときの
茹で蛸という例が似合うぐらいのみつきの真っ赤な顔は、純粋にヤバいと思う。




その当時の事を思い出し鼻の下を伸ばしている姿を写真に撮られ
みつきチャンに送ってやる!と鷭里はいうものだから
今度酒を飲むときに消去してやろうと悟浄は目論んでいた。

そして絶対女は紹介して
やらねえ、までがワンセットである。




場所は代わり夜もどっぷりと更けた午後9時。
今日はバレンタインデー前日、バレンタインデー当日は
会えないからとみつきが指定してくれた場所は古い喫茶店で
その喫茶店には遅いからなのか悟浄とみつきのカップルくらいしかいなかった。
席に着くやいなやホットコーヒーを注文しデスクにみつきは一通の封筒が置いてある。
その封筒をみて悟浄も分かるのだが、その封筒を出したみつきの顔は
笑みの一つであり、ピンとくる。


「無事に・・・合格しました悟浄さん!」
「おおお!よかったじゃんか!!」
声がどうしても大きくなってしまうほどに悟浄もうれしかったようで
その悟浄の顔を見て嬉しさが増したのか目頭にみつきがうれしい涙がたまっている。

「そして、」
じゃんっとリュックから出してきたのは手作りの箱であり
ご丁寧に綺麗にラッピングされている。
これはどうみても、そう・・・手作りである。
「お前、急がしかったって・・・」
「へへへ、合格したら急に創作意欲わいてしまって・・・
開けてみてください」



せっかく綺麗にリボンで巻かれている箱を崩すのは勿体ないと感じるものの
本人がいうものだから箱を開けてみれば
箱の中には数種類のクッキーやらがはいっていてまるで市販で売られている
ようなものだ。
丁寧に何が何がどんな味なのかをメモしておいてくれている。
その手書きの文字も彼女らしい柔らかい書体である。

料理が好きなのは知っているがお菓子まで作れるのは
予想の範疇外だったよう・・・。
高校の時にはいろんな女とつきあってきたもののこんなに「愛」が深く
それでいて綺麗だと思うのは初めてなのかもしれない。

「悟浄さんには大変遅くなりましたが私もやっと大学生で
大人です!一人前の大人基、彼女になってみせますね!!」



その笑顔と愛に満ちあふれた女を育てた母親はまるで
神か仏か何なのか・・・泣かせた暁には彼女のファンクラブが
黙っちゃいないだろうし、みつきの友達でもある高校の「桂木」という
女や同じクラスの時任という男から何か言われそうだ。

「みつき・・・お前が荒磯大学に来なくてオレすごーーーーくほっとしてるわ」
大学は荒磯ではなく違う学校であるが大学自体は駅一つくらいの距離で
近くなっている。荒磯大学でもいいのかな、と単純に考えていた
みつきだったのを制止しておいてよかった、と心底あの当時の自分を
褒めて称えたいと静かにおもう悟浄なのでありました。

「その、ホワイトデーは、その、悟浄さんのお家でご飯食べましょうね」
もちろんお泊まりで!と太陽のように笑うみつきは少し赤くなっていて
余計責任重大に思う悟浄なのでありました。



しかし、かっこいいところも見せなくちゃと思い悟浄は笑みを浮かべて
テーブルに手を置いていたみつきに自身の手を乗せて
こそりと彼女に耳の近くでしゃべるとかああ、と昔見た茹で蛸のように
丸々とした目でこちらを見ていた。
その顔を見て悟浄は上機嫌である。

「こんなに煽ってきたんだから、容赦しねェよ?」
手はいつの間にか互いの指が絡ませ絶対に逃がさないという意味で
みつきの指の腹を撫でながら話していると美味しそうなブラックコーヒーが
やってきた。
大人になる彼女を逃がしてやるモノか、と。



2022.1.29


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