*三蔵一行が優しいです。


「というわにぇ…」
「(で…って言いたかったんでしょうね…)」
「いやぁ…というわにぇですねぇ、はっかいさん」
「はい、次の町での買い物リストですね」

どっぷりとした夜更け、宿の共有のテーブルには
八戒とみつきがテーブルを占拠していた。
宿の主人たちや他のお客も自分の部屋で就寝中だというのにこの二人だけは違かった。

夕飯を食べた後各々の自由行動をし、珍しく個室の部屋を
ゲットできたのだが何の神様の気まぐれなのだろうか、残酷である。
部屋に戻ってきたらみつきがとまる予定だった部屋が荒らされており
みつきの替えの下着や洋服がすっかりと盗まれていた。

大切なものはみつきが肌身離さずもっていたためそれ以外が全滅である。
悟空は「犯人探しに行ってくる!」だの悟浄に関しては「部屋一緒にするか?」など
三蔵に関しては無口で何も言わなかったが不機嫌になったのは見てわかった。
皆思う事はみつきの心配であるがみつき本人は「まあ、それだけで済んだのなら良かったです」
と相変わらずの仏頂面でのその解答である。
まあ一女性としてみんな心配しているのはわかる、誰かと一緒の部屋も正直みつきは
断っていたが八戒から声をかけた。
「僕そんなに疲れていないのでみつきが使っていいですよ」
「…いや、そんなわけには」
「…なら、そうですね…」
提案を持ち掛けてきたのは笑顔の八戒である。

皆さんが寝静まったところに僕の部屋にいってジープと寝ててください。
その代わりに夜僕の話し相手になってもらってもいいですか?
勿論、部屋でなくて宿の共有テーブルで構いません。
共有スペースには大人一人が寝れるソファーがありそれを借りるそうだ。



****

・・・というよくわからない提案をされてしまった。
みつきは本当にそれでいいのだろうかと思っていたが八戒の言葉をまだうまく
かわせる自信がないため素直にいう事に従うしかなかった。

話を始めたのは23時ごろ、最初は今の旅に不安ではないかや
現代に帰れなくて不安がないかなど、ちょっとしたケアの話まで
してくれ話が尽きることがなかった…。
話をするのにもまとまった時間を取ることがなかなかできなく
あっても妖怪たちとの戦いで体力の消耗もあったからである。
そういう時間をやっととれるかと思ったのに今回はどこから湧いてきた
コソ泥にみつきの精神的(本人はあきらめているようだが)にやられている中
少し申し訳なくも感じている。

・・・だがしかし深夜1時を過ぎたころからみつきの瞳は少しだけ重たく感じるようで
テーブルを介して八戒としゃべっているものの、何を話しているのかよくわからなく
なってきたらしい。同じ質問がたまに入ってきたのだ。

みつきの視線にはテーブルにはお茶二つ、そして小さな紙きれに八戒は
何かを書いてくれている姿…これが大人なのだろうか、眠たくないのだろうか…。
「そ、そでぇす…ね…」
「(そろそろ寝たいからとかわがままを言わないですかね…)」
明かりも電球だけでシンッと静まり返っている。
うつらうつらと首が揺れている…八戒の顔を頑張ってみる努力が見られていて
八戒は少しだけ胸を痛めた。

しかしその反面。

可愛いな、と思いながらもその眠さと戦い、自ら眠いから寝ると
言わないこの真面目さに少しだけ癒されている八戒なのでありました。


結局みつきの真面目っぷりがすごいことが分かったため
八戒から折れ話を終わらせたのでありました。


2022.01.17




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