*オンボロ寮の監督生に興味がかなりあるフロイド。
突拍子のない日常夢




今日は朝から不幸続きである。
なぜだ、とオンボロ寮の監督生のみつきは頭を抱えていた。
教科書はいつも使っている教科書ではなくボロボロで
ボロボロなのはまだしも中身はイカスミなのか黒いインクでビシャビシャである。

そして答えを知っているはずなのに
口の中は詰まり「未回答」ということで結果は終わってしまっている。
そんなみつきに対して先生は「もっと復習をすることだな」

と厳格の顔と渋い声でモーゼル・トレインからもお叱りを受けた。
隣にいた同じクラスのエースもデュースもそんなみつきをみて少し驚いており
相棒でもあるグリムはスヤスヤと鼻提灯を膨れさせながら
そんなみつきのことなどてんで知らない…。






「おいみつき。一体どうした…!?なんだよこのボロボロでベタベタな教科書」
授業が終わり昼休みに突入するのかほかの生徒達は各々に
移動している最中、みつきのことを心配していたのは先ほどのエースとデュースである。
エースは机においてある教科書の汚れ具合に驚き
デュースに関しては体調が悪いのではないかと前の席に移動して額に手を添えてくれている。
相棒のグリムは心配はしつつも終了の鐘がなった瞬間
「俺様先に!購買部にいってくんだゾ!」と
お金を持って行ってしまっているためいつもの声が一人分足りない。
熱がないのはわかっているが、なぜこうも不幸なのか…
そう思っていた時だ教室のドア前に立ちはだかる不穏な感覚に
一瞬で察知したのかみつきは気にしてくれる二人から離れ教室の反対側の窓から飛び出そうとした。
…しかし、その反応に気づいたのも一番早くに訪問した男:フロイド・リーチである。



***



「小エビちゃん、なんで逃げんの?」
「先輩が追っかけてくるからです!」
「オレ追っかけてないよ?話しようと態々1年生のいるクラスに
来てたんだけどなー…」
半分怒っているように見える先輩をよそにみつきは敵として現在認識しているフロイドに
どうやってあきらめてもらうかで頭がいっぱいになっていた。

全イソギンチャクを解放しすべてが終わったみつきに興味が勝っている。
魔法の使えない人間ながらもアズールの策略を見事に打ち破った。
フロイドの中では気になっていた存在に一気にランクアップされてしまっており
授業も気が付けば黒髪の1年生を思っていて勉強どころではない…
片隅にいた異質な存在は日を追うごとにプクプクと泡のように膨らんでいく。

それに対してフロイドはどうしても気になったのだ。
その存在が「何か」ということ。



黒髪でボブカットの追いかけている気になる存在を
歩幅が広いフロイドからすれば獲物を追うのはいとも簡単。
面倒くさい鬼ごっこに多少飽きが出てきているのは自分自身で一番わかることだ。
多少苛ついているのもあるのかあと1歩で腕を伸ばせば標的に手が届いた。







みつきは酸素を取り込もうと呼吸がかなりあがっていた。
顔が真っ赤になり地べたが顔からかなり近い。
顔だけをうつむき下を意識したとたんぶわりと汗が下に落ちる。

へたりと軽く座りたいが、後ろから追いかけてきたターコイズ色の短髪男がいる。
しかも、制服の裾をぐいっと持っているせいで倒れることもできないし
同時に逃げることもできない。
残念だが逃げる行為に終止符を打つことにし、呼吸が少しだけ整ったのが
わかるとくるりと後ろを向いた。
後ろを向いてみればにやりと笑うフロイドの顔。
「やっとこっち向いたじゃんー」
「…諦めましたよ。…フロイド先輩どうして」
「どうしてもこーしてもないんだよね」
だって気になるんだもん。
笑って言う彼にぞわわと背筋がひやりとなる…
これはタレ目のオッドアイが完全に捕食者みたいな顔つきであり
やばい、と本当でみつきは気が付いてしまった。

制服を握っていた手は逃げないとわかると離れ次に握られたのは
みつきの手首。

いつもある手袋がなくひんやりとした手の温度。
まるでニンゲンではないようなその冷たさは本当にこの人たちは
人間の姿を仮にしているウツボ、人魚なんだと。



改めて認識させた。



「というか、先輩ですよね」
「なにがぁ?」
「私の教科書をボロボロで汚れていたり何か魔法掛けましたよね!?」
「…なんでオレがしたと思ってるの?」
オレじゃないかもしれないのに?そういってぎゅっと握られた手を一度見ながらも
みつきは真剣な顔で彼を見つめた。
そんな彼の表情は笑っていたがまたも面倒くさいなーという顔になっていて
そのコロコロと変わる気分屋に珍しくみつきはカチンと来る。
今日は散々だ。

ちゃんと復習しておいたのにボロボロの教科書で文字は読めなくなっているし
答えも言えない自分が腹立たしい。
そしてオマケに元凶の先輩までやってきてふんだりけったりで面倒くさくなって
この表情に怒りのボルテージが勝手に頭の中では暗雲が立ち込めて雷までも
なり始めた。怒り最長点である。


「そういうのはいけません!めっ!です!」
あまりよくないと思いんがらも目の前の長身の高いフロイドに向かって
指をさして真顔で、そして中庭だというのにその声は中庭内に響き渡る。

たまたま興味本心でみていた他の寮の生徒は何人かはその光景とセリフ後に
何人かは持っていたものを落とし、半分くらいは顔が青くなるのを感じる。
いつものグリムとの会話で何度もやっているからかみつきからすれば
普通の話し方のはずだったが目の前長身の男は先ほどの捕食者の顔から
間抜け顔で口が大きく開いている。
しまった、もっとかっこよく、先輩に「お前大嫌い締めちゃうよ?」くらい言わせなければ
いった意味がない…そう思った時だ。

くくく、と笑い声が前の男から漏れまじまじとみつきはフロイドの顔を見てみれば
先ほどの間抜け顔から目を細めてからぎゃはは!!!と大笑いである。


「小エビちゃ…おもしろいこというねー。オレそういう突拍子のない回答
面白いから…ますます気に入っちゃったよ」
「…」


うそやん。


みつきの頭のなかにある暗雲と雷は立ち去ったが晴れ晴れする青空や
今日の空と同じピーカンな天気にならなかった。
たった一言、頭に浮かんだのは嘘やん、という言葉。
あるのはなぜか嬉しそうな顔をして手を握りながら自分を見下している彼は
何やらとてもうれしそうに、まるで花を振りまいているような
そんなほのぼのとした顔つきにみつきは困惑するだけ。

「そんな面白い小エビちゃんにはオレからのプレゼント」
そう言って左手から取り出したのは魔法を発動さっせる万年筆、マジカルペンを
取り出し何かを唱えると芝生に落ちていた汚い教科書が綺麗になり
汚れた不純物がまるでインクの様に剥がれ落ちた。
まるで汚水のような黒いインクはマジカルペンを持っているフロイドの元に
来るとそのインクはどこかに飛んで行った。

「はーい、変な魔法は取っておいたから安心していーよ?」
「…あ、はい」
「次また会いに来るから、よろしくね?」
もーオレは教室に戻るから早めにもどりなねーと
やっと解放されたみつきだったが、熱量のある(勝手に)戦いに一度終止符が
打てたのかとほっとした瞬間体の力が抜け青々とした芝生へと体を沈んでしまった。








みつきはこの後の授業に出ようと思っていたが予想以上に体力を消費したらしく
たまたま中庭を通りかかったハーツラビュル寮の寮長と副寮長に助けてもらい
保健室まで手を貸してもらっていた。
保健室を開けてみれば薬品のにおい、そして白いカーテンで仕切られた
ベッドが3つ。
保健室の先生はいないため勝手に入ると眉間にしわを寄せていたのは
寮長のリドルである。
赤い髪を一度掻きあげるとみつきの目の前に来た。
丸椅子に座らせると開いている先生の背もたれの椅子を拝借し
みつきの顔を見ながら口を開ける。

「事情は分かった…まさかフロイドに絡まれているなんて
予想しなかったよ」
「…すいませんリドル先輩」
「いいや。そして悪かったねトレイ」
みつきの隣で立っている男にリドルは声をかけた。
トレイと呼ばれた男は、ん?とリドルの声に反応し首を横に振る。

「まあ、厄介な男に気に入られたなみつき」
「…え、あれ気に入られたんですか?」
「…たぶんね。」

ご愁傷様、諦めるしかないといわれた言葉を聞いてみつきは第二の真っ暗な世界・
意識がトんでいってしまったのである。


後々に、この変な魔法の犯人はフロイドではないと知り
本当の犯人にはツナ缶1週間禁止令が出されたという。

2020.05.17


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