*3章の取引ネタがある前の話。
*まだアズールとの情報がない状態でのヒロインとの出会い。


黒髪の黒いアーモンド形の瞳、少し幼い中性的な顔つき。
魔法が使えない人間がやってきたというのは
このナイトレイブンカレッジに一人だけ在籍していた。
物珍しそうに見る輩が多い中、ハーツラビュル寮の生徒達は
その人間:みつきに対してはかなり馴染んできているのだろう。
魔獣のグリムという相棒も今はいない。
そんな一人を、彼は待っていたのだった。



****

麗らかな昼下がり・・・ルンルン気分でみつきは
手に食べ物を抱えて廊下を抜け日当たりのいい中庭にやっと到着した。
購買部にあった珍しいパンやデザート。
お金は少ないが同じクラスのエーデュースに借り彼らは彼らで
後で行くからと言われてしまった…
そのためにみつきは一人で先に木製ベンチに腰を掛け
足をブラブラをさせながら友人たちを待つことにした。
・・・のだが

「失礼、隣よろしいですか?」
彼女を誰を待っていたのかはわかっているが幸運にも
その待ち人が来ないことを声をかけた彼は知っていた。

銀色の髪に薄青の目、顔が整っているメガネをかけた男をみて
彼女:みつきの記憶には少しだけ残っていた。
黒のスーツに寮のシンボールマークが見える…

入学式のときのどこかの寮長であるということ…
みつきはぽかんと彼をみるとクスリッと口角があがった彼をみて
はっとイスに背をあずけていたのをやめ慌てながらも椅子から立ち上がる。

「ああああ!いや、先輩が使うならどうぞ…えっと・・・」
頭がオーバーヒットしてみつきは頭を軽くおでこに手を添えて
必死こいて小さい脳で彼の名前を検索をしようとした時だ。
「僕も待ち人をまっているんです、キミはみつきさんでしたよね?
オンボロ寮の監督生さん」
「あ、そうです。」
「立ち話もなんですから座りませんか?」

さらに笑った男の顔に対して何も警戒心もなくこの男が言われた通り
みつきは顔を真っ赤にして彼に誘導されながらもベンチに改めて座り
その隣に彼も座る。
みつきが持っているものをみて唇に手をおいて男はほぉと少し感心するような声が出た。
あまりにも気になるのかみつきも自分の手に置いてあるものから視線を
外して右隣にいる彼をみた。
「お昼ごはんです」
「購買部のすぐなくなる限定パンですね・・・僕はあまり食べませんが
有名ですから知ってますよ。よく購入できましたね」

魔法も使えないみつきには使えないのになぜ?という彼の疑問だったようで
その答えが欲しいのかとみつきも思ったのかまた彼に声をかける。
「エーデュー…じゃなかった、友人がどうしてもたべたいというので
事前に購買部の人に内緒で残しておいてもらったんです」
「(へえ…サムさんに…)」
Mr.Sのミステリーショップとも仲がいいとは、と
考えているとみつきはそうだ、と
みつきは購買部で購入したものを取り出し彼に差し出した。


「購買部で有名なお菓子だそうです。先輩にあげます」
「僕に、ですか?」
「はい!」
みつきのにこっと嘘偽りない純粋な贈り物というのがわかる。
あまりにも珍しいものを見た、という彼の顔はいっしゅんみつきと同じ感じに
呆気にとられる表情だったが差し出されたものに手を取った。

それはどんな色が入っているかわからないミステリーショップのジャムパン。
食べるまでどんな味かわからない…しかも一口食べ二口目には違う味。

「ありがとうございます。…そうしましたら僕からはこちらを」
「…?これは?」
「僕の寮で使える≪モストロ・ラウンジ≫のカフェのワンドリンク無料券です。
新入生達には渡してありますがみつきさんやグリムさんには渡してませんでしたからね」
彼にプレゼントしてその代わりに渡されたのは紫がかった半透明なチケット。
ゴールド色で≪モストロ・ラウンジ≫と記載されている。
モストロ・ラウンジという言葉すらもみつきはわかっていないが
これに行くには次の試験までのお預けかもなぁ〜と頭で考えていた。


初めて知る名前にみつきは不思議に思っているとおや、とまた彼が言葉をこぼした。
その声に反応した瞬間ぐいっと彼の手が伸び頬に添えられる。
手袋をしているためかその頬に添えられた手袋の生地がすれる…とても
なめらかだったからそれにちょっとみつきは驚きを隠せない。
綺麗な顔立ちの男の顔はふっと笑ってそれでいて頬を軽く拭う。
なぜ拭われたのかはわからず?マークが飛んでいたその時だ。

「僕の名前はアズール・アーシェングロット。名前をぜひ憶えてくださいね」
「…あ、はい」
口元の微笑みが印象的だ、そう思いながらもみつきはこの状況下に耐えられない…
ここの学生たちは顔立ちが綺麗で女である自分がとても恥ずかしくもたまになる。

「ああ、アズール先輩!失礼しました」
「…ええ、またお会いしましょう」


また愛想笑いのみつきを振りまきながらも彼女が後ろ姿が見えなくなると
なるほど、とアズールは笑いおいてある自身の帽子をもち
被ってからベンチから離れた。
タイミングよく中庭にやってきたのは同じ顔の男が二人。
その二人のうちの一人は何やらアズールに興味がいっているのでなく
彼女が座っていたベンチに目がやる。
「ターゲットはいらっしゃいましたか?アズール」
「ええ…助かりましたよジェイド」
物腰の柔らかいしゃべり方をする男にアズールは礼をした。
ジェイドと呼ばれる男は笑っていると
ねえ、とアズールの後ろから声が聞こえた。

「アズール珍しいもの持ってるじゃん」
「…ああ、人からもらったものですが食べますか?」
「いらないならもらおうかな。ありがとー」
「いいえ」
彼女:オンボロ寮の監督生のみつきからもらった限定のジャムパンを長身の高い男に
渡した。ターコイズ色の短髪の男はにやりと笑ってぱくりと一口、二口で
食べ終わってしまった。
その食べっぷりは早く味の感想も聞いてみたいと思ったがどうやら
それを聞く前に彼が一人でテンションが上がりつつの一人言。

「へえ〜最初はタコ焼き味、その次は甘いショートケーキの味だぁ…」

しょっぱいのから甘いものまで、味は自由自在なようだ。



*****


「エーデュースもグリムも遅かったじゃない」
結局中庭で待っていた数十分は無駄になりみつきは教室のほうまで行ってみれば
目的とした人物たちがいるではないか。
パタパタと走ってきて一番最初に声をかけてきたのはデュースである。

「すまないみつき、ちょっと用事があってな」
「?」
謝ってくれるのはいいが肝心の意味がわかっていない。
全力で謝るとなりに苦虫をつぶしたような表情の赤髪の男もいる。
「わっるいみつき!ちょっと気になるところがあって」
「みつき!俺様はちゃんと二人にいったんだゾ!?」
「…まあいいや」

謝ってくれるならそれでいい、そう思って彼らにお願いされていた
購買部の食材を渡し、時間は短い昼休みに突入するのであった。



この時の彼とまた会うことになるのは大きな事件が引き金になるあの時である。


意外にも彼女はすでにもう餌をまかれていたのであったのだった。


2020.0517


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