****



「竹谷先輩、・・・・やっといらっしゃった。」
「おお!みつきじゃないか!」
「・・・あの、見つかりましたか?」
忍術学園の生物委員会が活動している場所から数キロ離れた場所に彼はいた。
一年生以上に制服は土まみれだし、だけれども笑顔で言葉を返されてしまった。やはりすごい。
汗はだくだくとかいているけれどもこの笑顔っぷりには驚かされる。
「まだ、孫兵の大事にしてるやつだから早く見つけてやりたいんだけどな。」
「・・・それよりも、会計委員会にだす予算計上の申請書がまだ提出されていないそうなんですけれども。」
「・・・あ。」
「一月前におっしゃったじゃないですか。
前に予算がばっさりと削られたから早めに申請してくださいっていったのに。」
「はは、悪い。それよりも先に探さないと。」
・・・順番が違う、とはっきりと言いたくなるがこの人のやり方に指図なんて出来ない。
小さくため息が零れてしまったが当の竹谷は気がつかなく
みつきは先ほどと違う布を差し出した。
「とりあえずあたしが見つけるようにしますので、
申請書をかいていただけませんか?」
「・・・でも。」
「あたしも会計委員会として責任があります。大丈夫です、算盤十キロでへちゃらに
走るんですから。」
とさらりと当然ですといってのけるとみつきは竹谷に申請書と筆を差し出し
さっと見えない速さで
彼が探しているものを見つけようと体を使った。




彼が探しているのはこれだろうか・・・。
みつきの目の前にいるブルブルと警戒しているそぶりをしている毒蛇がいた。
孫兵のジュンコとは違う種類ではあるが、この毒蛇をみたことがあったるのを覚えている。
散歩している時に生物委員会で「すごい!」だのといって
興味本位で見に行ったことがあるからだ・・・
流石、伊賀崎 孫兵・・・毒虫系には本当に相性が合うのだろう。
その毒虫がこちらを警戒しているのは判りきったことだ。
キズを付けずに、敵ではないとどうやって教えて上げればいいのだろうか。
変な行動を取ってしまえば容赦なく牙を向ける・・・まだ手なずけられていない
野生の蛇と同じだからだ。

「(あたしは毒虫は苦手だが、これも修行の一環一環・・・)」
そう決意しながらもすすっと、静かにその毒蛇に近づいた。
ごくりと喉が渇き、正直ここから逃げ出したいと思う、自分だって女の子だ。
蟲なんて大嫌いである・・・その心を押し殺さなければ、と目をまた見開いた。
シャーッ・・・牙を出して威嚇していて少しびくついた時だった。

「――ほら、こっちこい。」
蛇の後ろにいた人物は後ろから蛇をすくいとった。
するりと胸にその蛇を入れたものだから蛇もその行動には気がつかなかったのだろう。
先ほどの威嚇もなくなったのに、みつきもぽかんとしてその姿を確認した。
・・・竹谷先輩であった。
にこりと笑って、また汗をかきながらもあたしを見たのだ。
「ほら、やっぱり俺がいたほうが良かっただろう?」


あぁ、また遠ざかった。
あの人の笑顔でぽかぽかになるはずの胸が一気に締め付けられた感じがした。
永遠に私は貴方を対等になることはないのか、という諦めが心に小さく胸に
突き刺さったままだった・・・からだろうか。

「さあ帰ろう。ちゃんと申請書も書いたからな。」
手を差し出された手はあたしと違って大きく、苦無で傷つけられた
跡が残っていたり、全然違うものだった。
その手を握ったら、永遠に―――
ぱちん。
乾いた音が彼の手を振動させ、尚且つ痛みを伴わせた。
その手にはみつきの手は握られていない。叩かれた。

「竹谷先輩なんて、知りません。」
「!おい!みつき!!」
あたしの尊敬する、追いかけている人は実は近いと思いながらも
遠い人だと思い知らされた。


prev next
bookmark back


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -