・ヒロインは前と同じヒロインで「特殊」入ります。


しくじった。
みつきははっと顔が真っ青になった。
今日が「危険日」というのをすっかりと忘れていた。




彼女のいう危険日は性的なものではなくみつきの大きな悩みでもある。
「一二三くん!!しっかりして〜〜」
「うん大丈夫しっかりしてるよ。」
スーツ着てないのにホストモードみたいな口調で返された。
いやいやいや、目をギラギラと輝かせていう言葉と表情と
行動がミスマッチングというのをしらないのか!!!
脳内でみつきが必死こいているうちに体がぐっと近づけられている。
そして顔が、顔面偏差値の高い顔が自分の前にくるものだから
いつものみつきのペースが崩れてしまっていた。

場所は一二三と独歩が一緒にシェアハウスしている家になる。







定時で珍しく帰ることに成功したみつきの携帯にメッセージがかかってきたのは
今日仕事がオフで一緒に家のみしないという誘いだった。

今からスーパーによる?という確認連絡をしようとしたら
【みつきっちは手ぶらでいいよ〜よっろしくオネシャス!!】
という今にでも陽気な彼の声が聞こえてきそうなメッセージに
顔の筋肉がほだされるようだ。
なんやかんや独歩と一二三、時間があるときは寂雷先生が来て
何回か飲みに行ったりしている。


まあデザートでも買っていくか…、と給料が入って
ホクホクのみつきはフルーツたっぷりのデザートを買いに夜の新宿を
歩く…ふわり、少し冷気のある夜の風に乗って歩き出した彼女の
残り香が通り過ぎる…その匂いに気が付いたのか
見知らぬ男が彼女のあるものを感じ振り向いた。

「(なんだ、あれ)」
惹かれる匂いに名前が付けられず先ほどのにおいの元を必死に
探す。疲れた目がぱっと開き瞳孔が開くのを感じる。
しかし、匂いの元は去り立ち止まった男の意識・そして
しんと集中していたのが切れたのか人混みの雑音が耳にしっかりと
戻ってきた。
すると大丈夫ですか?と自分を心配する男の声にやっと気が付くことができる。
彼、黒髪でオッドアイの男は同じオッドアイの少し幼い少年に眉間にしわが
寄ったまま話始める。
「すまねえな三郎。」
「一兄。今日は金曜日ですし人混みも多いですから…」
「…うし、しっかりしないとな。さっさと帰るか」
「はい!」
次郎も待ってるからな!と一兄と呼ばれた男はにかっと笑顔で
三郎に話すと先ほどの次郎という単語がどうしても気に食わなかったのか
頬を膨れさせていた。



彼、萬屋ヤマダの経営者と兄弟と出会うのはまた違うお話で。







話は戻り、夜道の中美味しいケーキを片手に持ち
Tシャツ短パンというかなりラフな恰好に着替えてから
みつきはルームシェアしている彼らの家の前まで到着した。


インターホンを鳴らしてみれば身長が高い男がドアを開けてくれて
よっ!と片手をあげて挨拶をしてみせた。
「お!遅かったじゃんみつきっち!」
「ごめんね。その代わりにケーキ買ってきたよ」
「お!やったー…?あれ…?」
一二三の笑顔につられて笑って見せるみつきだったが一二三が
クエスチョンマークを頭に浮かべながらくんくんと鼻を一二三は
嗅いでみる。


「ん〜…なんかぁ、スパイス強い昼飯とか場所とか通った?」
「え?…今日ご飯はサンドウィッチだし、カレー屋とか
香辛料の強い匂いの場所は通ってないと思うんだけど」
そんな変なにおいする!?と一応匂いエチケットには
気を付けているみつきはがんっとショックなことを言われたと思ったが
気のせいか、と一二三は頭を軽く横に振って
「んじゃまっ!入って入って!」と一二三は
先ほどの変な匂いが頭の片隅に残りながらも●を迎え入れた。

部屋に入ればいい匂いが漂っている。
手の凝った料理なんて実家に帰るぐらいしか知らないみつきから
してみれば一二三の料理は3つ星ホテルのディナーくらいには
見えてくる。テーブルにはサラダと時間をかけて作ったであろう
美味しいお肉。それに真っ赤な赤色のトマトスープ…
仕上げにどんっと置かれている青いボトルに目をぎょっとさせた。

「え、ナニコレ一二三君…」
「いや〜、常連のお客さんからのプレゼント♪」
そのボトルは一本何万も、いや、普通の一般人ならこれを買うのを
やめるような金額のものだ。
にへらっと笑って出すものじゃないんだけど…と
思っているとコンロの日をとめた一二三がやってきた。
・・・・あれ?

彼が近づいてきたと思ったら腕をつかまれて
壁際に追い込まれてしまった。顔が、顔が笑っていない。




そして冒頭の状況下に陥ってしまったのである。
大きな理由をはっきりと思い出した。

一二三が言っていた香辛料の話…それはみつきの溢れるフェロモンである。
最初からそういうので困っているというわけではない。
奇妙な体になってしまったみつきからすれば今まさに「非常事態宣言」だった。
「(忘れてた…薬すらも忘れてた…)」
うあああ、やってしまった。
先生から苦笑いで「赤坂さんはうっかりする癖あるから
予定日も体調次第で変わるからちゃんと常備しておいてね」
って言われたばっかりである。
仕事のことはしっかりできるのにプライベートのうっかり具合に
脳内反省をしているところだった。

そう思った瞬間だ。
彼の手が暖かい…腕をつかまれ、壁際に追い込まれた。
そして体もほぼ動かせない状況に
陥ってしまっていたが真剣な彼の顔は、みつきを見ているのに
まるで何か違うものを見ている視線にすらも見えた。

…みつきは改めて思う。
彼、伊弉冉一二三は新宿でも人気のホストである。
その美貌は例えるならば宝石といわれているのを何回か女性雑誌などで
見たことがある。
そんな例えられ方はあながち間違っていないのかもしれない。
彼の瞳がとても綺麗であるが少し澱んでも見える。
暖かかった手は少し冷えた風にも感じる…みつきは「まさか」と彼の顔を見た。


「(そうか、一二三君、極度の女性恐怖症だから…)」
例え仲良くても根本的なところがフェロモンで作用されているとしても
引き留めているのかもしれない。
友だちであってもそこは覆せないのか、とみつきの心に罪悪感とほんの少しの
安堵をするが彼の瞳からぽろりと涙が落ちた瞬間、逆に
みつきの心がぎゅっと締め付けられてしまう。
幼い子供を置いて行ってしまった母親みたいな…その感情が
本当なのかはわからないが今すぐ例えられるのならばきっとそれに似ている。


抱きしめるわけにもいかずどうしてあげればいいのだろう。

「ごめん、ごめんね一二三くん。」
今日来たのが間違いだったのかもしれない。
ぽつりとつぶやいたみつきの言葉に一二三は返すこともなかった…
そう思った瞬間、彼の身体が自分に重なる。
冷えてしまった手に暖かさがじんわりと戻るのを感じた。
身体を自分にこすりつけられ先ほどのきつく腕をつかまれていたのが
弱まり、はあ、とため息がこぼれた。

「みつきっち…俺、俺っち、みつきのこと」
「…」
「あ、いや、その…」
いつもの陽転気な声や顔ではなくて困惑している顔に
みつきもいつもの一二三ではないギャップにやられてしまった。
彼もそんな顔をするのか…、こりゃ心臓に悪い。
顔をほんのり赤くなってどもっている彼に言葉の続きを言わせてあげた
かったがはっとみつきは腕につけていた
デジタル腕時計をばっとみる…。時間は22時。
さあっと顔から血の気が飛ぶのを感じた。


「ひっ一二三君!!!」
「へ!?え!?」
「貴方の相方がそろそろ!帰ってくる!!!」
だからとりあえずソファーで休んでて!
壁に背もたれ・前には抱き着いていた一二三がいた状態から立ち上がり、
呼吸が上がっている状態の一二三をとりあえず白い綺麗なソファーに座らせた。

それと同時に真っ先にみつきの足が向かったのは冷蔵庫である。
なん中の冷凍庫にはアイスやらの固形物がはいっており
中を少し弄ると保冷剤を発見。
保冷剤を一二三の手に渡すと彼を指で指名。
「あと私帰って薬飲んで来るね!!」


独歩君に一応落ち着いたら連絡よこして!
そういってみつきは出て行ってしまった。

彼女が戻ってきたのは数十分後。
その数分後に同居人の男も戻ってきて通常のご飯会を
やったが2人はあまりしゃべれなかったという。


買ってきたケーキを食べ損ねたことに気が付くまであと23時間後。
そして一二三が太客からもらった高いお酒は先ほどの非常事態を
忘れるために二人が先行して飲み干してしまったとかどうとか。


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