誰だって誰かの影響を受けて何かに、そしてその人のようになりたいと想うはずだ。
虎若・三木ヱ門もは照星さんだったり、・戸部先生を尊敬する金吾だったり、
あたしも尊敬する先輩の一人や二人いるのだ。



「おや?今日はこっちに顔を出してくれないのか?みつき?」
「・・・・三郎先輩じゃないですか・・・どうしたんですか?」
「どうしたって・・・いつもは学級委員長委員会の部屋にいるからな。
お菓子を新しく入れたと言ったのにな・・・」
廊下で手におさめられている一枚一枚の用紙に目を通していると
後ろから気配を消して近づいてきたのを彼女は驚きもせず振り向いた。
後ろにいたのは学級委員長委員会の委員長代理の一人である鉢屋三郎が
笑って立っている・・・彼女、赤坂 みつきはそれどころじゃないと言う、無表情ながらも
眉間に小さく皺が寄っていた。
「それ所じゃないんです。予算会議の予算書を提出していない委員会を見て回っているんです。」
「そうか、まあ私たちには関係のないことだな。」
「学園長の計上ですから文句は言えませんがね。」
「だな、だから今年はみつき用も計上しておいたから存分に遊びに来るといい。」
「お言葉感謝いたします。」
そういうとみつきはするりと三郎を背に向け、すたすたと歩いていく。
ふわりと風が吹いて、ぽつりと三郎は少しながら寂しい気持が心をすくわせた。
「あんなに懐いてくれていたのに、寂しいもんだな。」




場所代わり、やっと様々な委員会に顔をだしたみつきが小さくやっと安堵のため息を
零した。後残り1つの委員会の申請書を貰いに良くだけになっていた。
今度の予算会議はどうなることになるのか、というのは想像するのも怖い感じがしてならない。
みつきはそう思いながらも歩いているとはたりと、自然と足が止まった。
残りが、生物委員会なのだ・・・・
「(竹谷先輩・・・ちゃんと提出してくださいっていってあったのにな・・・)」


四年生でもある赤坂 みつきはくのたまにしては珍しく委員会活動に励んでいる一人である。
委員会は会計委員会とあの厳しい委員会であるが彼女曰く
「会計委員会に入ればどんな忍たまがどういう忍びになるのか見て見たくなったからです。」
ということで自分がどういう忍びになりたいのか、というのも含めてみているようだった。
現在進行形で、みつきは未だどういう忍びになりたいのか、考えているのである。
だが、こうなりたいという憧れを一つだけみつけたようだ。




***


「あれ?竹谷先輩は・・・」
「あ、赤坂先輩。竹谷先輩だったら逃げた虫達を探していますよ?」
そういってくれたのは一年は組の虎若と三治郎であった。
ほら、と見せてくれたのは前の予算会議でみせたあの虫である・・・
即その虫の被害にあった火薬委員会を思い出させられた
・・・想像しただけで鳥肌がたつってもんである。

それと同時に生物委員会が活動している場所に尋ねて見れば
まるで戦争が起こった後のような散らかり様に少しだけ立ちくらみを覚えた。

他にも1年生や委員長代理以外の生物委員会の忍たまがいて目をくばる。
「虎若・・・三治郎も・・・お前たちまた土だらけだな。」
「はい、他の飼育していた生物が逃げちゃって・・・」
1年生達は全員苦笑いしていて、伊賀崎に関しては神経をぴりぴりと
させていた。これは怖い。
持っていた布で顔についてしまっていた土を拭うとパンパンッと手を叩き
みつきは声をあげた。「あたしはとりあえず竹谷先輩を探す、あまり無茶するなよ。」
「「はい!」」
そう声をかけ、三年の伊賀崎 孫兵にも一応挨拶を交わすとみつきは竹谷が言ったと思われる
方向に足を踏み入れたのだ。





**


竹谷先輩があたしの尊敬する先輩に値する。
―――といっても、委員会が一緒ではないしあまり行動活動も一緒ではないから
一方的にただ尊敬しているだけなのだが・・・人柄と言うものなのだろうか。
あの太陽のような笑顔や強引ながらも行動力があるところがすごく魅力的な人である。
「(あたしも、その位強引さがあったほうがいいのか・・・な)」
昔から人見知りが激しいと自覚しているだけあって仲のいいくのたまも限られているし
会計委員会に入っている忍たまとも潮江文次郎や一年とかとしか
話はしない。

なぜあたしが竹谷先輩をしっているのか―――。
竹谷先輩を知ったのは、いつもの学園長の「思いつき」の実習からだった。
ペアになるのは上級生の、しかも忍たま限定とされていて
その時に彼と出会ったのだ。

「えっと・・・確か・・たけ・・・」
「あ、俺 竹谷。竹谷 八左ヱ門。」
みつきだよな?とにかりと笑った笑顔にぽかんとしてしまったがあたしは
結構ショックだったのだ、それが顔に出てしまって竹谷に「どうした?」と
言われてしまった。不覚だ。

事前に「思いつき」の実習は自分を可愛がってくれていた鉢屋三郎先輩が
「私と一緒に実習のペアを組もうな!」と前に言ってくれたのに
当の先輩と言えば他のくのたまと一緒だったからだ。
なぜか裏切られた感じが抜けなくむすくれた顔をしていた。
「・・・なんで三郎先輩じゃなかったんだろう。」
「え?」
「あたしは三郎先輩と申し上げたんです。」
「なんだ?俺とじゃ役不足か?」
「そう申し上げて降りませんが・・・」
「ならよろしくな。」
笑顔で言われて手を差し出された、これはなめられているのではないか
というのがあったが先輩だし、という理由で彼の手を握り返した。
・・・笑えたのは正直不安であったが彼はそんな事を気にしないで、実習に取り関われた。


あの時のあたしはまだまだくのいちには向かなかった。
一つ上の先輩・・・竹谷先輩の足手まといと言われてもいいような位罠に
掛かったり、怪我をしたりしたのに、あの人は笑顔であたしを助けてくれた。
たった一つしか違わないのに。

あぁ、あたしもそんな余裕な顔を出来て安心される人になりたい。
涙をボロボロと流しながらもこの人の存在感を思い知ることになった。


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