寝てる。
昼飯を食いに屋上に行ったら、2限目から姿が見えなかった咲山がど真ん中で寝息をたてていた。
それを見つけた瞬間俺の後ろでドアがバカでかい音をたてて閉まりやがったから起こしたかと思ったけど杞憂だったようだ。

そろそろと近づいて寝顔を覗き込む。
こんだけ寝てんだ、折角だから悪戯でもしてやろうかなと思っ…たけど。

『………………』

何コイツ。寝顔綺麗じゃね?つーか髪サラッサラだし肌とかこんなに白かったか?睫毛とかやべえ何これ超ふっさふさじゃんそんで端っこがちょっとくるんってしててなんか偽物みたいじゃね?

『……って何考えてんだ俺』

危なかった今一瞬未知の領域に足を踏み入れるところだった。
我に帰ったところで咲山を起こしにかかる。

『咲山、飯食おうぜ』
『……うるせえしね……』
『………咲山サン起きて下さいよ』
『…ん゛ぁ……へんみか…んー…』

身体を起こした咲山はそのまま俺の肩に顔を埋めた。

『ちょっ…と、咲山サン、オイ』『……………』

あ、やべえ。いい匂いする。
そんなことが頭を過った瞬間心臓が跳ね上がった。何何?

『ふあーあ、寝た寝た』

暫くして咲山が離れていったが、俺は固まったままだ。

『?何してんのお前』
『…あ、いや……』
『変なヤツ』

咲山は俺が買ってきたパンを物色している。

『あのさあ』
『ん?』
『お前なんかつけてる?』

香水とか、と聞くと、全然、と返ってきた。

『あ、シャンプー変えた』
『…あ、そう…』

シャンプーってオイ。女子か!と心の中でツッコミを入れる。じゃああれはシャンプーの匂いか。ってあれ、なんかドキドキしてきた。なんで?

『なんで?』
『へっ?!』

思っていたことと同じことを口にされ、声が裏返ってしまった。

『いや、お前さっきいい匂いしたから』
『えー何それ気持ち悪い嗅いだのかよ』

そんな嫌そうな顔すんなよ。つーか罵られたのに心拍数上がるって何なの俺Mなの?いやそれより俺ってあれなの?咲山のことさあ、

『あー…でも辺見もいい匂いするよな。いい匂いってか落ち着く匂い?』
『…は?』
『俺、お前の匂い落ち着くから好きだよ』
『…あ、そう、ふーん、さんきゅう』



俺もうやだ咲山のこと好きみたい。









おわり
辺見くんがただのへたれに…




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