源田は、黙っていればかっこいいと思う。
ただちょっと頭に問題があるだけ。
勉強は出来るから、頭が悪い訳じゃない。なんていうか、抜けてる。そう、抜けてんの。

学校にいるときとサッカーしてる時は気が張ってるからいい。が、家にいるときの源田ときたらもう目も当てられないくらい立派なダメ人間だ。
常にぼーっとしっぱなしっていうか、家事的なこと一個もできねえし、まあ、オレが家に行ったときは大体世話してやってるわけで。
勿論好きでやってる訳じゃない。仕方なく、だ。仕方なく。


『……源田』

オレが名前を呼ぶと、ビクッとしてからオレの方を見る。

『す、すまん。ボーッとしてた』
『見りゃ分かる。それ、食わねえの?』

さっき源田のオカーサンが運んできたケーキを顎で示す。源田の前に置かれた皿には、オレの胃に収まったものとは違う苦そうなチョコレートのケーキが堂々と乗っていた。

『食べる』
『あっそ』

オレは苺を口に放り込み、源田を見た。もそもそとケーキを租借して、またボーッとしはじめた。うぜえ。
大袈裟に溜め息をつくと、自分のフォークにケーキを刺して差し出した。

『げんだ、あーん』
『へっ?』
『へっ、じゃねえよ。あーん』

ぐっと手を伸ばすと、源田は何度か瞬きをしてからケーキを口に入れた。

『うまい?』
『うまい』
『そ。じゃもう一回。あーん』

もぐもぐ、ごくん。ケーキは漸く最後の一口になった。
まだフォークを刺してもいないのに、源田は口を開けて待っている。

なんだよそれ。意味わかんねえ。オレがあーんって言うの待ってんの?どういうことだよなんかむかつく源田のくせにああああああああああああああああああああかわい、


ぱくり


危うく口から出そうになった言葉を飲み込む為にオレはケーキを放り込んだ。








おわり
なんかダメダメな源田もかわいいよねっていう
あきおがおかしい




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