「区切りをつけるなら」

今、ここにしよう。
約4年間続いた関係は呆気なく、且つあっさりと終わりを告げた。
高2の夏。漸く現実を見始めた2人のマセガキは、簡単にその非現実めいた感情を切り捨てることを決めた。

終わりにしようと言われた側の俺も、特に問い詰めたりヒステリーを起こしたりなんてすることもなく、まあお互い将来がありますしねー、先輩受験だしなんてさらりと了解したのだった。
斯くして俺達2人は只の先輩後輩に戻った訳で(前の関係が何だったのかと聞かれたら答えに困る)。まあ戻ったところで何も変わらないのだが。変わったといえば、隠れてしていたこと(例えばキスだったり)をしなくなったことくらい。
普通に授業受けて、たまにサボって、部活やって、たまにサボって。
いつもと何も変わらないけど、例えば昼休みだったり、例えば部活帰りの寄り道だったり、そういうのに一人足りない気が、まあ、ちょっとはするわけで。

人と関わるに当たって一線を引いて透明な閉鎖領域を作り上げているらしい(あの人が言ってた)俺は、その線を踏み越えて来ようとする人間が鬱陶しくて最も嫌いだった。
だからわざわざつっかかって、掻き回して、ハイサヨウナラ。そうやって生きてきた。それなのにあの人は。
壁越しにぎゃんぎゃん喚き散らしていたかと思ったら窺いもなしに土足で上がり込んできた。インベーダーだエネミーだと俺が警告鳴らしたってあの人には届いてなくて、しかも最悪な事に、この閉鎖領域は内側から融かされるのに弱くて、一本線を引いたこちら側にあっという間に一人分の居場所が作られてしまった。
その上ちゃっかり俺の横に並ぶもんだから、俺はすっかりぐしゃぐしゃに丸くなってしまった。

そうやって散々に丸められた俺は、厭に自分の扱い方に慣れていて。一言「寂しい」なんて嘘を吐けば相手をしてくれる女の子なんてその辺に余るほどいた。
どういうつもりで言ってんのか、あの人は「そういうのはそろそろよして、どっかに収まれ」とかぬかして自分はやたら清楚でかわいい彼女とオツキアイを始めて4ヶ月を迎えようとしていた。受験生のくせに。

どっかに収まれなんてお説教垂れるくらいなら、なんて考えて、やめた。
必死こいて勉強して、同じ学校受けて、通って。何やってんだろうなあ俺は。これから何がしたいんだろう。HRの時担任が配った進路についてのアンケートにでっかく「大人」と書いて提出したら真面目に考えろと返された。どうせ今から真面目に考えたってそんなの叶うないんだから今はこれでいいじゃん、と思う。
特に夢とかもないし、もういっその事白紙で出してやろうか、下らない反抗心を抱きながら用紙をぐしゃりと丸めてカバンに突っ込んだ。
進路の決まらない(卒業後の事も、人生のことも、なんてかっこつけてみる)俺を置いて、あの人は卒業していった。あのやたら清楚でかわいい彼女と同じ、そこそこいい大学に通うんだってさ。おめでと。

いなくなったと分かってようやく俺は馬鹿だったんだと自覚するけど、ぐしゃぐしゃに丸め込まれた俺は今更元には戻れなくて、それどころか空耳まで聞こえる始末で。
勿論振り返ったって誰もいない、なんだよいないんだったら俺の名前呼ばないでくれます?なんて独り言を言った。ああ、そういえば名前で呼んだことなかったなあ。らんまる。らんまる。らんまる。途端に悲しくなって、誰もいない河川敷で泣いた。ここで一緒にサッカーしてたのに。悲しくて悔しくて、ちくしょう、ふざけんな、ばかやろう、叫びながら投げたカバンから、ぐしゃぐしゃに小さく丸まった紙が転がって、風に吹かれて何処かに消えた。








おわり
エネミーって単語が使いたかっただけでした。




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