※21歳くらいの話で一回終わってる





疎遠といえば、疎遠だった。
俺達の関係は高2の夏に終わって、そのまま普通に卒業して、俺は大学へ、咲山は専門学校へ進学した。
節目節目には連絡をとってはいたものの、其れはあくまで形式的なやりとりであったから、まさかこうしてまた顔を合わせるとは思ってもみなかった。
別に何がある訳でもないのになんだかそわそわしながら部屋を片付けていると、インターホンが鳴った。

「お久しぶりー」
「おー、まあ、上がって上がって」
「じゃ遠慮なく、おじゃまー」

暫く泊めてくれ。
そんな電話がかかってきたのは数日前だった。なんでも専門学校へ進んだ咲山は卒業が迫っているらしく、就職活動を始めるらしい(こっちに戻ってくるなら佐久間も源田もいるのに、わざわざ俺のところに転がり込む理由が聞きたかったけど、さすがに聞けなかった)。

「意外に…」
「なんだよ」
「いや、綺麗にしてんなと思って」

そりゃそうだ丸2日かけて片付けたんだから。咲山が来るのを楽しみにしてたみたいで恥ずかしいから言わないけど。

「とりあえず飯でいい?」
「おう、よろしく」

飯食いながらお互いの話を少しして、それから風呂に入って、予め買っておいたチューハイを2つ出した。
軽快な音をたてて開栓した缶の中身を2、3口飲んでから、咲山はふうと息を吐いた。

「何年ぶりだっけか」
「3、4年」
「…3、4年かァ…」
「変わったよな、色々」
「お前は変わんねーけどな」

髪が短くなったくらいか、と笑っっている本人はあの頃のマスクはもうしていない(それだけでもかなり変わった印象を受ける)。
記憶の中とはいくらか違う整った顔に濡れた前髪が貼り付いていて、隙間から覗く目に少しドキっとした。

「あーーーー…酔った…」
「ペース早いんだよお前…」

小一時間の間に空き缶が2本、3本と増え、冷蔵庫の中身が減った。
俺は元々酒に強くはないので、まだ2本目を開けたばかりだ。その間にも咲山は遠慮なく次から次へと缶を開ける。が、さすがに酔ってきたらしい。ここに来てペースが遅くなってきた。
2本目を空にする頃には俺も酔ってきていたが、空き缶製造機と化した咲山を見ながら、コイツ酒代かかりそうだななんて考えるくらいの余裕はまだあった。

「…うー…辺見ィ」
「なに…」

顔をあげた瞬間、間抜けな音と共に柔らかいものが唇にぶつかった。

「………何、してんだ、さきやま」
「キス」
「よ、酔いすぎだろ」
「実をいうと半シラフ」

スッと咲山の顔が近付いてくる。
二度目はやるまいと腕でブロックしながら顔を背けると上から声が降ってきた。


「俺がなんでお前のところに泊まりに来たか分かるか?」
「…は?」
「地元で働きたいってのもまァ嘘じゃねえけど、」
「…?さきや」


腕を下ろした瞬間に床に押し付けられた。拍子にぶつけた後頭部が痛い。視界がぐわんぐわんと波打っている。肩を押さえつける手が、妙に懐かしい気がした。
懐かしくて痛かった。

「なァ、」





「ヨリ戻そうぜ」





疎遠といえば、疎遠だった。
離れていたって、時が経ったって、外見だけ大人になった俺達の中身はあの時から何も変わっちゃいなかった。











おわり
大人にしたかったけど出来ませんでした。




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