002 =====
後ろを気にしつつ走り、なんとか撒くことが出来たようだ。しかしそれは双子ともはぐれてしまったということ。この弁当を届けなければ、俺は帰れない。
どうしよう。
「あれ、りんごじゃねーか」
「先輩…」
世界は狭いなぁ、こんなに知り合いに立て続けに会うなんて。
そう思ってすぐにいいことを思い付いた。先輩は生徒会、双子が手伝いにきたのも生徒会。つまり先輩に頼めば届けてもらえる。
俺は急いで先輩にここにいる理由を話した。
「なるほど。あいつら馬鹿だろ」
「あの、届けてもらえますか…?」
「別にいいけど……ん?トキ?」
先輩の目線を追うと、確かに鴇矢くんが見えた。そしてその後ろにつける会長の姿も。
「チッ…」
そこからの先輩の行動は早かった。近くにある掃除ロッカーに俺を押し込めると「静かにしてろよ?」と言い残して扉を閉めたのだ。覗くことも出来ない俺は、ただ会話を聞くしかなかった。
「!…深鶴兄」
「トキ、大丈夫か?」
「深鶴、お前の身内か…?」
「そ、俺の弟。手違いで高等部に行ったって聞いてたから探してたんだ」
「……あっそ、すぐ仕事に戻れよ?」
不機嫌そうな会長の声と共に遠ざかる靴の音。どうやらうまく追い返せたらしい。
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家出日和