001 =====

 たまに思い出すことがある。春原さんたちと過ごしたあの1年のことを。そして懐かしくなる。

 またあんな風に、なんて思ってしまう。


「あ、りんご!」
「鶫」
「久しぶり、大学違うとなかなか会わないもんだな」


 もういつものではなくなったスーパーの前で、偶然鶫と出会った。

 俺は今年から自宅に戻った。父さんが帰ってきたことで春原家にお邪魔する理由はなくなったからだ。寂しさはあったけれど永遠の別れではない。そう思っていたのだが、現実はそう甘くなかった。
 絳河学園は私立。一般家庭の俺にはそのまま進学することは不可能だった。つまり、必然的に大学は別々となる。

 この大学の違いは大きな壁となった。近くにはいるハズなのにまったく会えない。
 でも、同時に助かったような気がした。彼とああやって過ごしていたら、いつか堪えきれずに想いを告げてしまうだろうから。


「今日とか、暇だったりしない?」
「えっと、暇だけど…」
「じゃあさ、うちに来なよ。最近、りんごの味が恋しくてさ」


 そう、思ってたのに。


「じゃあ、行こうかな。待って、父さんにメールするから」


 俺は、先輩に会いたくて仕方なかった。

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(c)家出日和

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