003 =====
「こんな感じでいいの?」
「…鶫、さすがです」
見事に塗られたクリーム、それはむらなく綺麗な仕上がりだった。
あとは、上にクリームをしぼっていく。これは鴇矢くんに任せよう。
「どんな、感じで?…お手本ほしい…」
「じゃあ、1つだけやるね」
クリームの盛り付けが終われば、あとはイチゴとチョコプレートだけ。鶲のためにイチゴはとっておくとすると、もうやることはない。
鶲が来るまで休もう。そう思った時だった。
「たっだいまーッ」
「…はや」
早くデコレーションがしたくて走ってきたらしい。その子どもみたいな動機に小さく笑ってしまった。
イチゴとプレートは春原さんたちに任せよう。俺にはまだ夕飯を作る大仕事が待っている。
今回は間違われることなく買われた材料を受け取り、俺は冷蔵庫へと向かった。
が、それこそが間違いだった。
「……、その物体はなんだ?」
「ケーキだったもの、です」
デコレーションだけであれだけ素敵なケーキがこうなるとは驚きだ。
でも。
「味は美味しいですから」
祝う気持ちに変わりはないよな。
ふざけて書かれたプレートの文字“みつるくん”を見て、俺は少なからず楽しさを感じた。
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家出日和