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「失礼しまーす…」


 全ての授業が終わったいわゆる放課後。俺は美術室のドアを開いた。
 いつもは昼にしか訪れないそこになぜ来たのか。理由は簡単、今日の昼に単語帳を忘れていっただけのこと。明日単語の小テストがあるため勉強しないわけにはいかないのだ。

 しかし、いつも座っている席の周りに単語帳は見当たらない。他の机もザッと見たがやはり見当たらない。
 確かにここに置いていったハズなんだが……。


「お探しものはこれかな?」
「あ、それ!…って、先生ー」
「悪い悪い。でも善意だったんだよ、午後は授業あったからな」


 怒るに怒れなくなりながらも榊原先生から単語帳を受け取る。確かに授業中に単語帳が置いてあったら邪魔だよな、残念な扱いを受けるかもしれないし。
 それを考えたら感謝の気持ちの方が上回ったので、一先ずお礼だけ告げた。


「じゃあ、俺はこれで…」
「ちょっとお湯沸いてんだけど、何か飲んでいかない?」
「え、あの?ちょ…」


 俺の答えを聞く前に準備室に引っ込む先生を見て、俺に拒否権がないことを悟った。

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(c)家出日和

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テーマ「人外ファンタジー」
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