002 =====

 雑談を交わしながら弁当をつつく。いつもと代わり映えのない普通の弁当だけど。事前に知っていたら少しくらい豪華にしたのに。


「あのさ」
「ん?」
「弁当一緒に食べられなくても、友達だよな?」


 それは俺が見たことのない、新が隠していた一面だった。
 普段から笑顔を絶やさない彼は、爽やかで気が利くと人気を集めている。それゆえに俺は、新の笑顔以外の表情をあまり見たことがなかったのだ。

 いつもと違った表情に不思議な気持ちになりはしたが、嬉しさはそれ以上だった。


「たまには一緒に弁当食べような」
「りんご」
「食堂でも構わない。だから、一緒に食べよう」


 軽めな調子で「新なら親衛隊をまとめられるだろ?」と聞けば、笑った顔で返事をされた。それは爽やかないつもの彼ではなく、本来の彼が垣間見えたような気がした。

 その日以来新とお昼をともにすることはなくなり、代わりに委員長と食べたり美術室で先生とご一緒することが多くなった。でも、まったくなくなったわけではない。新は俺の言ったことを実現させたから。


「今日は俺の奢りな」
「え、いいの?」
「いいの」


 それは、少し前の俺たちの日常。

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(c)家出日和

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