002 =====
「はい、りんご」
「あ、これ。いつ買ってきたんですか、ケーキなんて」
「これ、見た目はケーキの箱だけど中身は違うんだよ」
そう言われて箱に視線を戻す。鶲が開けるとそこにはマドレーヌが2つ、大きな箱にちょこんと入っていた。
「この前の家庭科でマドレーヌ作っただろ?だから、これなら作れると思ってさー」
「普段は作ってもらってばかりなので、そのお礼みたいなものです。味は、悪くないハズだから」
俺は左右にいる鶫と鶲とを交互に見上げた。そういや今日って母の日だっけ、3人がそれを意識してるかはともかく……お母さんってこんな気持ちなのかな、なんだかすごく嬉しい。
お礼を言おうと口を開くと、今度は鴇矢くんがこっちへ来た。なんだか甘い香りがする。
「りんご、これ」
「?」
「キャラメルミルクティーだよ、インスタントだけど」
きっと兄たちにばかりいいところを見せたくなかったのだろう。
にしても、インスタントと言ってもすごくおいしそうだ。甘い香りがすでにおいしい。
「ありがとな」
思わず素で返しちゃったけど、今だけは見逃してほしい。だって嬉しかったんだよ、自分の言葉でお礼を言いたいじゃないか。
ホットケーキは冷めてしまっていて、バターが溶けなかった。まぁ、蜂蜜とかジャムでおいしく頂いたけど。もちろん、マドレーヌもキャラメルミルクティーもおいしかった。見本にあるような見た目じゃなくても、すごくおいしかった。
たまにはこんな日があってもいいかもしれない、なんて思った。
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家出日和